島根経営品質研究会

島根経営品質研究会 2012年度特別講演会 “凡事一流”は規範を拠所とした強烈な目的意識から

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2012年8月28日、島根経営品質研究会 特別講演会が開催されました。

テーマは、「凡事一流で実現する最幸の生き方、働き方」と題し、株式会社ビスタワークス研究所 代表取締役社長 大原光秦氏を講師に招いて開催しました。同社は、日本経営品質賞受賞企業でもある、ネッツトヨタ南国の人財開発を担当する企業です。大原さんは、島根経営品質研究会の特別講演会講師として、5年連続お向えしており、島根における経営品質向上活動に対して絶大なご支援を頂いています。

昨年度の講演でも大変示唆の多いお話をたくさん頂きましたが、今回はさらに内容を充実させ、大変多くの学びを頂くことができました。講演内容の一部ではありますが、主要なテーマとなったところを整理しておきます。

講演する大原光秦さん

1.一流と三流~地域、時代を超えて存在する“規範”に立ち戻る~

今回の講演テーマでもある“凡事一流”という言葉。当たり前のことを、一流にやる。では一流とは何なのか。講演では、一流と三流の比較という観点で、地域や国を超えれば認識の違いがあるのか、時代を超えれば違いがあるのか、といった検証を行われました。“一流”と聞いてどんなイメージを浮かべるのか。仕事に関して言えば、一生懸命働く、仲間と協力し合う、感謝する、他者を思いやる、苦労があってもやり遂げる、失敗を反省する、自分を磨く、実力があっても謙虚、夫婦仲が睦まじい、地域社会に貢献する、等々、誰も異論がないところでしょう。そして、こういった価値観や認識は、国や地域、時代を超えても共通します。さらに、能力の違いではなく、行動の選択の問題である、ということが分かります。

もう一つ、今回の講演を通じて出てきたキーワードが「規範」です。辞書で調べると、「行動や判断の基準となる模範。手本。」といった説明ですが、この規範こそ、“一流”という言葉からイメージされる行動そのものと言っていいでしょう。規則ではなく規範。現在、世の中には規則やルールが溢れています。仕事でもすぐに規則化、ルール化を進めようという時代です。しかし、規則で仕事をする時代から、規範に基づいた行動への転換が大事だと言うのが今回の大きなメッセージの一つです。転換と言うよりも、規則やルールに縛られ過ぎてきた日本全体の価値観を、かつては当たり前だった“規範”に基づい行動に引き戻そう、という趣旨だと理解しています。

だから、前述の一流となるための「行動の選択」は、“規範”によらなければならない。日本人が古くから大切にしてきた「規範」。善きこと、当たり前のこと、そこに今一度目を向ける。大原さんは、職場、家庭、地域生活、そこでの生活をきちんとするだけで大きく変わってくる、とおっしゃいます。家庭が荒れて仕事がうまく行って意味があるのか、職員が疲弊させて会社を伸ばして意味があるのか、国や地域は廃れて会社が発展して意味があるのか。そういう問題意識を改めて認識させて頂くことが出来ました。

2.自分で考えて、善きことを実践し、尊敬される人

講演の中で、「今まで重視されてきた人材」と「これから重視される人財」について話がありました。これは企業のアンケートに基づいたもので、時代背景によって変化がみられるということです。分かりやすくするため、前者を「波風立てずに、言われたことだけ、ちゃんとやる人」、後者は「自分で考えて、善きことを実践し、尊敬される人」と表現されました。能力の観点からみると、前者は、“反復的・作業遂行能力(静的能力)”、後者は、“創造的・対人影響力(動的能力)”となるそうです。

これから重視される人財像として示される、“自分で考えて、善きことを実践”。これは、行動の選択ですから、やりさえすればいい話です。しかし、実際には中々出来ない。なぜやらないのかと言えば、今の日本が、“規則と罰”で人を動かす仕組みに学校教育の時からどっぷりと浸かっており、今回のキーワード“規範”に基づいて行動するように育てられていないからだというのが話の本質だと理解しています。だから、後者は“採用では迎え入れることのできない人材”(もちろん全くゼロではない)で、育成するしかない。

そのためにどうするのか。その答えは「事上摩錬」。難しい言葉ですが、“実際に行動や実践を通して、知識や精神を磨くこと。”という意味で、会社や組織で言えば、仕事を通じて自分を磨くことのできる職場づくりが大事だということです。そのためには、地域や時代を超えて存在する“規範”に基づき、人間が持っているきれいな心、美しい心に働きかけるように仕向けて行く。そして、それが出来るようになった人は、おのずと“尊敬される人”となるのでしょう。

ネッツトヨタ南国の事例として、駐車場に線を引かない(社員がお客様から車を預かって停車することが前提)、といった取り組みを紹介されました。ルールどおり繰り返すのではなく、敢えて不便な状況に設定し、常に最善を考えて行動するようにさせるための環境づくりです。例えば、お客さまが多い日は通常よりも詰めて停めるとか、時間がかかりそうなお客さまは奥に、直ぐに帰られるお客様は前に、など、各人が最善を判断して行動するように日々訓練されるということです。それが、事上摩錬の実践。一見簡単そうでとても高いレベルの取り組みです。わが社なりの事上摩錬の参考事例として真摯に受け止めたいと考えています。

3.目的・志の共有化~仲間との共鳴が、強烈な目的意識を生み出す~

昨年の講演会でも少し話があったのですが、例えば今回の講演会でいい話を聴いて、“明日から変わるぞ!実践するぞ!”と思っても、その気持ちは持って3日。なぜ、気持ちが続かないのか。その理由に、“日本人の特性”という観点から説明がありました。日本人には、“場”(自分の属する組織やグループ(家庭、職場、地域、友人づきあい、サークルづきあい等))の影響を受けやすく、今、その場でふるまうべき行動を取ってしまうという特性があるそうです。今時の言葉で言えば“空気を読む”ということでしょうか。3日で冷めるという現象は、例えば、自分が聴いて帰った話と、自分の職場の状況やメンバーの意識にあまりに距離があると、脳がそのことを理解してしまい、行動に移せなくなる、と説明できる訳です。

それを回避する方法として示されたのが、「強烈な目的意識」です。先日のオリンピックでメダルを取った選手たちが、異口同音に述べた感想を事例に説明されました。「すばらしい仲間たちに感謝したい」「応援して頂いたみなさんのおかげ」「最高のステージに立てたことに感謝」、といった共通するコメント。一流の選手たちは、なぜ口々に同じことを言うのか。彼らは自分のためではなく(少しは自分のためもあるでしょうが)、応援して頂いた方々、一緒に努力してきた仲間のために頑張っている。彼らを喜ばせたい、彼らと一緒に喜びたい、彼らに恩返ししたい、という強烈な目的意識で取り組んでいる。それが一流ということだと。

それは、仲間と支えてくれる人たちと“共鳴”している状態。お互いに分かち合っている状態。仕事で言えば、自分の会社・職場が何のために存在しているのかをお互いに理解し合い、その仲間たちと目的を達成したいと心から願っている状態。そのような状況では、一人一人の行動が“規範”となり、皆がさらに本氣で取り組み続ける。組織の状態としては、とてつもなく高いレベルですが、それを目指し、達成すれば、係わり合う全員にすばらしい人生が待っていることは間違いないと理解できます。

もう一つ、大原さんが最後に口にされたのは、「愛する努力をする」ということ。それは、いい所を探して讃え、感謝を実践する。悪いところを指摘してお互いをよくしていく。とても難しい事ですが、そのレベルになった組織は、本当に素晴らしい力を発揮するのでしょう。まずは、「人間とは他人との摩擦や挫折、失敗、修羅場経験を乗り越えて成長する。」という認識をお互いが深く理解し合い、切磋琢磨していける職場を作りたいとの思いを強くしました。

会場は180名の参加で超満員

島根経営品質研究会の特別講演会は、大原さんにお越し頂く事が恒例となっていますが、今年はなんと180名ものみなさんにご参加頂きました。私が講演を伺うのは4回目ですが、年を追うごとに理解が深まりますし、大原さんの講演そのものも進化しています。また、懇親会の席ではさらに突っ込んだ話をさせて頂くことも出来、大変有意義な一日となりました。大原さんに、そして参加頂いたみなさんに改めて感謝申し上げます。このブログが、講演会の理解の一助になれば幸いです。

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