温泉めぐり

社長の温泉めぐり37 三瓶温泉(鶴の湯(薬師湯)) 島根県大田市三瓶町

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

今回37箇所目は、島根県大田市の「三瓶温泉 鶴の湯(薬師湯)」です。訪問日は、2011年8月28日です。

三瓶温泉は、島根県大田市の三瓶山の山麓に位置し、毎分2500リットルという莫大な湧出量を誇る温泉地です。その泉源を活用した公衆浴場や宿泊施設などが点在しており、その総称が“三瓶温泉”ということになります。さて、今回訪問した鶴の湯は、三瓶温泉の温泉街ほぼ中央部に位置します。以前、経営難に陥り、一時は閉鎖の話もあったようですが、地元の公衆浴場の火を消してはならないと、地元の方々が出資者として参画したり、様々な経費削減に取り組まれたりして経営を立て直し、運営を続けられているという施設です。以前から一度行ってみたいと思っていましたが、今回訪れることが出来ました。

鶴の湯外観

泉質は、「ナトリウム‐塩化物泉」、かなり年代物で味のある分析表が掲示されていましたが、成分総計は2.162g/kg(計算値)でした。最近分析されたもの(現在、10年に一度分析結果の更新が義務付けられています)は別にあるのではないかと思いますが、確認できませんでした。塩化物泉は“温まりの湯”と呼ばれ、保温効果がよいことが知られています。この温泉は後述のとおり“ぬるめ”ですので、ゆっくり浸かって芯まで温まる、という使い方がよさそうです。そして、湯船のお湯はいわゆる“黄金の湯”などと呼ばれるタイプで、黄土色に濁っています。これは鉄分が結構含まれているためですが、同じ鉄分を含む温泉でも少なめだと「緑」、やや多いと「黄色」、さらに多いと「茶褐色」に変化すると言われています。

お風呂は内湯だけで、露天風呂などはありません。湯船は長方形で1.5m×4mぐらいでしょうか。底が深く、まわりに全て腰かけ用の段があります。かなり濁っているので、入るときには注意が必要です。浴室内の掲示によると、冬場を除いて源泉温度(約36℃との表記、分析表によると38.5℃)のまま使用しているとのこと。しかし、入浴感としては少なくとも36℃ではありませんでした。確かにぬるめでしたが、若干加温している感じです。しかし、私はあまり熱いお風呂は長時間入っていられないので、このぐらいの温度はとても快適で、いつもよりも長めに入湯することができました。

洗い場(らしきスペース)は5箇所ありましたが、シャワーは1つのみです。あとは、水道の蛇口があるだけ、鏡も2枚だけでした。せっけん、シャンプーの類は一切ありません。一方、目を引くのが洗い場に大量に掛け流されている源泉(他のお客さんがあり残念ながら写真撮れず)。一瞬何事かと思いますが、毎分2500リットルという豊富な湧出量を活かし、贅沢に掛け流されているようです。他のお客さんを見ていると、この大量のかけ流しの源泉を頭を流していらっしゃいました。頭を流すのは微妙な気もしましたが、このお湯に触れてみると、35℃前後ぐらいの感触。体を流すにはちょうどいい湯温です。結局、これが源泉温度で、やはり湯船の温度は少し加温してあるのでしょう。

脱衣場もわずかなスペースのみ。同時に着替えることができるのは2名まででしょうか。簡易な鍵付きロッカーが20ほどありましたが、扉が取れていたり、鍵が壊れていたりしました。ただし、玄関には貴重品ロッカーが別にありました。洗面台は2箇所ありますが、ドライヤーなどはもちろん無し。そういった浴場というつもりで利用する必要があります。

内部の様子(入口付近)

施設の利用料金は大人300円です。利用料金は券売機で徴収することになっていますが、訪れた時はたまたま故障中で、料金箱に自分で入れる形になっていました。そのことに関連しますが、この施設の特徴の一つに無人で運営管理されている点があります。常駐の管理人を廃止され、地元の方がボランティアで清掃など管理を手掛けられているそうです。地域全体で温泉施設を維持していくんだという姿勢が、こういった運営を可能にしているのでしょう。その他、施設内には和室の休憩室もありくつろぐ利用者の方がいらっしゃいましたし、建物の周囲にはたくさんの風鈴がつるされ、夏の風情を醸し出していました。

休憩室となっている和室(外には風鈴)

今回訪れたのは日曜日の昼過ぎでしたが、施設脇の駐車場には県外ナンバーの車も並び、まずまずのお客さんではなかったかと思います。ほどほどの湯温でゆっくり浸かるのにも適していますし、なにより、鄙びた温泉地の公衆浴場という雰囲気を十二分に味わえます。そして、無人で運営されている施設は、地元に役だち、地元に大切にされているという実感を与えてくれ、ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。体だけでなく、心も温まる温泉施設でした。

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