温泉めぐり

社長の温泉めぐり43 美都温泉(湯元館) 島根県益田市美都町

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

今回42箇所目は、島根県益田市美都町の「美都温泉 湯元館」です。訪問日は、2012年3月27日です。美都温泉は、益田市美都町にある日帰り温泉施設ですが、道の駅サンエイト美都にも近接しており、周辺には民宿も立地する等、周辺エリア一体が美都町の観光拠点となっています。ちなみに、美都温泉は島根県内で唯一「温泉ソムリエがいる温泉施設」として、温泉ソムリエ協会公式サイトにも掲載があります。

美都温泉湯元館 施設外観

泉質は、アルカリ性単純温泉で、PHが8.8と高めなのが特徴です。源泉温度は33.5℃なので加温されており、かけ流しと循環式を併用した温泉となっています。一部循環式ではありますが、営業時間中の循環には塩素を用いない光触媒殺菌装置を採用しており、循環式の温泉施設にありがちな塩素臭は一切ありません。循環量とかけ流し量のバランスも適度に保たれており、アルカリ性温泉の特性である皮膚のヌメヌメ感が直ぐに現れます。その他、衛生面に関する説明が施設内のいたるところで丁寧に行われており、その誠実さに好感が持てます。

温泉の成分分析上は“アルカリ性単純温泉”となるため、分析書に記載される適応症に特別なものはありません。しかし、実際の成分としてはナトリウムイオンと炭酸水素イオンの含有量が比較的高く、また加水もされていないため、ナトリウム‐炭酸水素塩泉の特性がみられると考えられます。適応症としては、切り傷、火傷、慢性皮膚病などの改善が期待されますし、皮膚の脂肪や分泌物を乳化して洗い流す石鹸のような効果も期待できます。高いPHと相まって、美肌の湯としてのポテンシャルが高いと言えます。もちろん、単純温泉ならではの柔らかい湯あたりも特徴であり、誰にでも入りやすい温泉と言えます。

内湯は、天井も高く広々とした浴室内で、開放感もあります。風呂は、シンプルに岩風呂風の浴槽が一つだけですが、これがかなり広々としており、ゆっくりと浸かることができます。この浴槽の周囲にはジェットバスの吹き出し口が取り巻くように配置されているのも特徴的です。ただ、岩風呂風で座面に様々な大きさの石が配置されている関係で、ジェットバスの吹き出し口の高さがまちまちで、やや使いにくい(気泡が腰など上手くに当たらない)場所もあるように感じました。

内湯のほかには、露天風呂があります。露天風呂も岩風呂風で、内風呂よりは小さめですが、深めの湯船になっており肩までゆっくり浸かれます。また、露天風呂も内湯同様周囲にジェットバスが配置されており、これは珍しいと思います。また、風呂全体をカバーできる大型の六角形の傘型の屋根が付いており、天候を気にせずに露天風呂を楽しむことができるようになっています。

洗い場は9箇所、リンスインシャンプーとボディソープが備えてありました。仕切りは無いタイプですが、うち3箇所は仕切りの代わりに大型のしっかりした手すりが洗い場の間に設置されており、高齢者の方等でも使いやすいように配慮されています。また、2箇所のシャワーコーナー(仕切り付)があり、ここでは少し座の高い椅子が備えてありました。座りながらシャワーを使えるようになっており、これも高齢者の方向けの配慮でしょう。洗面は3箇所ありましたが、ドライヤーは2つのみ配置されていました。気になったのは、建築上の制約でしょうか、洗面台の正面には鏡が無くサッシ窓となっており、(苦肉の策として?)洗面台の横に鏡が取り付けられていました。男性用であればそこまで苦情も出ないかもしれませんが、女性用もこのようになっていると使い勝手が悪いと思います。

施設内フロント付近の様子

ロッカーは50個程度ありますが、変わっているのは、ロッカーのカギを抜くために、小さな紙のカードを差し込む必要があるということ。受付時に渡されるのですが、私は初めて体験するシステムでした。聞いてみると、元々、受付時にロッカーのカギを渡す仕組みだったようですが、これだと、使うロッカーの場所が特定されてしまいます。一方、利用者の方からは「高い場所、低い場所、隅の方、など自分の好きの場所のロッカーを使いたい」という要望があり、その対応としてロッカー設備の更新にあわせて採用したそうです。説明を受ければ“なるほど”と納得する面もありますが、このシステム自体を説明する手間もかかり、またカードも小さく高齢者の方等は扱いにくいのではないかという気もして、“良し悪し”という印象です。この施設の入浴料は大人400円です。島根県内の他の施設との比較で考えても、おてごろで良心的な価格設定といえると思います。

私が訪れたのは、平日の午前中でしたのでさすがに閑散としているかと思いきや、高齢者の方を中心にかなりの賑わいでした。受付で聞いてみると常連利用の団体のお客さんだったようです。和室で広々とした休憩コーナーも、高齢者の方々がくつろぐのに適しており、当日も風呂上がりにゆっくりされている方々がたくさんいらっしゃいました。ちなにみ、この温泉の泉源は、施設をすぐ出た脇にあります。現在は「お湯かけ地蔵」として泉源を石で囲ってモニュメントのようにしてあります。この手の入浴施設の場合、施設と泉源は結構離れていることが多いのですが、これだけ近くにあるのは珍しいと思います。

売り出し中の特産品「ゆずサイダー」

美都町は「ゆずの町」として知られ、ゆずを使った特産品がたくさんあります。この温泉施設やお食事処、道の駅を運営する会社が商品開発した『ゆずサイダー』は、全日空の機内販売でも採用された隠れた名産品です。この施設のほか、益田市内の特産品売り場などで買い求めることができます。温泉とセットでこういった新しい名産品をセットで売り出していくということも今後の温泉活用、地域活性化の一方策として有効だなと感じたところです。

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