温泉めぐり

社長の温泉めぐり62 三朝温泉(株湯) 鳥取県三朝町

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私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

62箇所目は、鳥取県三朝町の三朝温泉「株湯」です。訪問日は、2014年1月5日です。

三朝温泉は、開湯から850年を誇る鳥取県の名湯の一つです。「世界有数のラドン含有量」を誇り、古くから湯治場としても利用されていきています。現在、現在、大小24の宿泊施設が営業され、3箇所の公衆浴場があります。鳥取県内でも有数の温泉地で、訪問日は正月の連休最後の日ということもあり、多くの観光客の方が温泉街を散策されていました。今回初めて訪問し、三朝温泉の起源と言われる公衆浴場、「株湯」に行ってみました。

株湯の外観

三朝温泉の泉質ですが、ガイドブックなどでは3種類の泉質が紹介されています。「含放射能・ナトリウム-塩化物泉」「含放射能・ナトリウム-炭酸水素塩泉」「含放射能・単純泉」の3つです。これは、泉源によって含有成分が多少異なり、かつ、多少成分の濃い泉源に、塩化物泉や炭酸水素塩泉などの名称が付いているということでしょう。いずれも放射能泉であることが特徴です。

株湯の泉質は、成分分析表によると「単純弱放射能泉」です。2つの泉源(温度の高い泉源、低い泉源(飲泉用の泉源))を混合した泉源が使用されているようです。単純泉となっていますが、細かく見ると成分総計では0.929g/kgとなっており、あと少しで成分名称が付く(1g/kg以上が必要)レベルです。実際の成分としては、塩素イオンや炭酸水素イオンの含有量が多いので、湯冷めしにくい保温効果や殺菌効果、清涼感ある美肌効果なども期待できます。

一方、細かい話ですが、泉源名称としては、“弱”放射能泉となっています。ラドン含有量の表記をみると、例えば、島根県内で弱放射能泉となっている、鷺の湯温泉、比田温泉、むいかいち温泉、津和野温泉、匹見峡温泉、など(他にもありますが)などと比べて、特別高い訳ではありません。数値だけみると、“世界有数のラドン含有量”というふれこみほど高くない、というのが気になるところです。しかし、ラドンは湧出後直ぐに空気中に逸散します。このため、測定のタイミングや場所などによっても結果が変わってくる可能性があります。こちらの泉源は混合泉となっているため、混合までの過程でラドンが空気中に逸散し、実際のポテンシャルよりも低く測定されているのかもしれません。また、後述するように、放射能泉はその使い方が大事で、その点でこの株湯は非常に理にかなった造りになっています。

株湯は、小さめの浴槽のみのシンプルな公衆浴場です。風呂の大きさは3m四方といったところでしょうか。大人が3~4人入れば、すでに窮屈な印象です。そして、入浴の第一印象は、「熱い」ということ。窓口で「熱くなっていますよ」と教えてもらっていましたが、本当に熱かったです。後で聞くと、この日は44℃を少し超えるぐらいの温度になっていたようです。入っていると、熱すぎて、段々皮膚の感覚がおかしくなってきました。熱いのか、冷たいのか分からない感じ。冬場に雪や冷たい水で手が冷え切ってひりひりする時のような感覚です。温泉で温まる、というよりも、ホルミシス効果による湯治のために来るための場所なのかもしれません。

浴場内は、かなり密閉度が高く、入った瞬間、かなりの蒸気で満たされているのが感じられます。これは放射能泉を最大限に活用するために非常に重要です。ラドンとは、温泉中に含まれるラジウムが地上に出た際に分解されて生じる弱い放射線のことです。これを体に浴びたり、呼吸したりして体内に取り込むと、新陳代謝が活発になり、免疫力や自然治癒力が高まると言われています。その効果を「ホルミシス効果」と呼び、放射能泉の有する大きな特徴の一つです。前述のとおり、すぐに空気中に逸散してしまいますので、それを逃がさず体内に取り込めるような仕組みが必要となります。その効果を最大限に発揮させるため、コンパクトで密閉性の高い浴室に蒸気を満たすのが、一番理にかなっています。

また、源泉かけ流しで運用されているのですが、新しいお湯は浴槽下から湧き出るような仕組み(足元湧出)になっています。この後、もう一つの公衆浴場「ひだまりの湯」にも入浴したのですが、温泉の供給については、同様の形式が採用されていました。この方法だと、源泉から新しいお湯を投入する際に、できるだけ空気に触れないようにして新鮮な源泉が浴槽に満たされることになります。特に放射能泉では、ラドンの空気中への逸散を最小限に抑える意味で、有効な方法だと考えられます。地域の方が利用する公衆浴場ながら、健康維持のために最大限の配慮がされている温泉と言えます。

この株湯、石鹸やシャンプーの類は浴室内には備わっていません。受付で購入することはできます。洗い場も4箇所のみで、仕切りの無いタイプです。ロッカーは籠に衣類を入れる方式で10箇所。同じ数だけ有料の貴重品ボックスがありました。洗面台は2箇所で、ドライヤーは見当たりませんでした。大人300円という利用料金からしても、このあたりは割り切ってあっていいと思います。

隣接する足湯

株湯の駐車場脇には、足湯と飲泉場があります。訪問した日は、足湯が調整中なのか、水はありましたが温度がかなり低くなっていました。次の週からポンプのメンテナンスが実施されるようで、すぐ脇に工事用の機械が設置してありましたので、その関係かもしれません。また、飲泉場は、自由にお湯を汲むことができます。三朝温泉は、色々なところで飲泉が可能になっているところが特徴です。島根県内の温泉では、飲泉可となっている(保健所の許可が必要)温泉は少ないのですが、こちらは昔から飲泉されてきたという経緯もあるのかもしれません。三朝神社にある飲泉「神の湯」は、神社の手洗舎が温泉です。贅沢で本当にありがたみがあります。温泉街中心部にある足湯・飲泉場「薬師の湯」も誰でも利用できます。三朝の名物の一つである河原にある温泉「河原の湯」、残念ながら先般の台風で温度が低くなっていると言う表示がありましたが、温泉情緒を満喫できる貴重な観光資源です。また、宿泊しなくても、各旅館の色々なお風呂を利用できる「旅館湯めぐり」には、16の旅館が参加されています。

三朝のシンボル 河原の湯

現在、鳥取県内を東西につなぐ高速道路の整備が進み、松江市からも1時間半ほどで温泉街までたどり着きました。とても近くなりました。機会があれば、大小さまざまな個性ある温泉宿にも宿泊してみたいと思います。

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