2012
06.28

2012年6月2日(土)、「ふるさとがえり」という映画の試写会が松江市内で開催され、お誘いを受けて観賞してきました。

タイトルのとおり、“ふるさと”がテーマの映画。あらすじは、仲良し4人組のリーダー格の主人公が、豊かな自然の中で楽しく成長していく中で、映画監督なりたいという夢を抱きます。そして進学を期に上京し、その後就職して映画づくりの仕事に従事しますが、20年後、訳あってふるさとに帰ってきます。20年ぶりに会う友人、学校の先生、近所の方々。懐かしさを感じる一方で衰退する地域の様子を感じます。地元の消防団に無理やり入れられ、その活動の中でも地域の現実を垣間見ます。幼少期の回顧、そして大人になってふるさとに戻った主人公を対比させながら、田舎の抱える問題や人々の葛藤などを描きつつ物語が進みます。

ざっくりとした感想としては、(大都市との対比と言う意味で)地域で生活する者として、また、地域で企業経営を行うものとして、受け止めるべきメッセージが多々あったな、というものです。いわゆる娯楽映画とは一線を画する、しかも、様々な見方のできる、見る方によって感じ方の大きく異なる映画、とも言えます。“ふるさと”とは、人それぞれに様々な意味を持ちますが、この映画は、“ふるさととなる地域でこれからも生活していくと決めている方”に、特に見て頂きたい映画だと思います。その動機づけの一助として、私が興味を持った観点をいくつか整理してみます。

映画ふるさとがえりパンフレット

1.“古き良き時代”かのように描かれる田舎生活の持つ意味~田舎を舞台に人と人とのつながりを訴える~

映画中で描かれる主人公たちの子供時代。およそ20年前(1990年)という設定ですが、もっと昔をほうふつさせる描かれ方です。1990年と言えば、私はちょうど20歳前。携帯電話やインターネットのちょっと手前ぐらいですが、暮らしぶりとすれば現在とさほど違うものではありません。その一方、この映画に描かれる子供時代は、毎日山や川で遊び、地元の駄菓子屋に入り浸ってジュースやお菓子を楽しみ、さらに秘密基地としてツリーハウスまで出てきます。うちの実家もかなり田舎ですが、子供もTVゲームが当たり前になってましたし、小学生の遊びでも、“川や山など危ないところで遊んではダメ”的な風潮が出てきていた時期だと思います。コンビニもありましたし、お菓子を買うのはスーパーとかでしょう。なので、映画の描写には少し違和感がありました。

しかし、これも意味があってのことと捉えられます。私自身、少なからず自然の中で遊び育った経験がありますので、映画の中の子供たちの遊びっぷりには共感します。また、大学まで島根で過ごし、都会(といっても広島市ですが)に出て就職し、16年後にふるさとに帰ってきたという経験もありますので、自分自身に重ね合わせてみることもできました。つまり、地方部から一度外に出たことのある方の多くの方の琴線に触れる思い出を最大化した、というイメージ(表現が難しいですが)でしょうか。

当初、私は、この映画で描かれる主人公たちの少年時代の描写は、現在とのギャップを際立たせるためにかなり誇張して描かれているのだろうと感じていました。しかし、そのことはさほど重要なことでは無いようです。大事なことは、かつての田舎、かつての地域、かつての日本にあったであろう、人と人のつながりの大切さにあります。人と人とのふれあい、つながり方のありよう、田舎を舞台に、それを分かりやすく描いている。そのことで、この映画を自分自身と照らし合わせて、より当事者意識を持って“ふるさと”を考えるきっかけを与えてくれていると理解してます。

2.この人たちは日頃きちんと働いているのか?~職業としての仕事を描けない地方の現実?~

この映画では消防団での活動が一つの切り口となり、消防団員として地域に関わっていく人々の姿が描かれます。その奮闘ぶりは本編で見て頂くとして、一つ気になったのは、物語の中核をなす主人公の幼馴染たち3名の職業としての仕事ぶりがあまり描かれないことです。主人公は役所の臨時職員、その他の三人は、ローカル線の駅員、地元特産品の生産農家、もう一人の仕事はほとんど触れられなかった(説明はあったかもしれません)ので良く分かりませんでした。

地域を愛する者たちが、地域を守るという共通の価値観で集まる場所として「消防団」を取り上げ、そこに軸足を置いて描いているので、いちいち登場人物の普段の仕事ぶりまで描けないというのは分かります。ですが、そういった“仕事の様子を描けない”のが、現在の地方の、田舎の現状だとも捉えられます。現実には地域の中小企業の中にすばらしい企業がたくさんあり、そこでいきいきと働く方々がたくさんいるにも関わらず、です。

“ふるさと”で生きることが映画のテーマなのに、そこで生きるための基本的な手段である仕事や職業については、描かれない。“あまりに普通で絵にならない”という面もあるでしょうが、中小企業者の経営者としては気になります。大げさかもしれませんが、“残念なこと”だと捉えることも必要ではないかと感じます。

本編中で描かれる消防団活動に精を出す人々。当然ながら、みんな消防団を本業にしている訳ではありません。それぞれに仕事を持ち、そこできちんと給料をもらえているからこそ、消防団活動にも精を出せる。そういう当たり前の姿が描かれるような、それが地方部の地域社会の当たり前の姿になれるような、そのための努力が、地方の中小企業の経営者に求められているのではないかというのが、経営者としての受け止めです。少し飛躍しすぎですかね。

3.日本中のふるさとへ「未来の物語を」~企画テーマが語る、地域づくりの本質~

この映画の企画資料を見ると、映画のテーマについて分かりやすく示されています。それは「日本中のふるさとへ未来の物語を届けること」。田舎を取り巻く現実、そしてその現実を前提に、やがて訪れるだろうと誰もが想像している常識への挑戦です。過疎化による限界集落の存在、コミュニティの崩壊といった現実を背景に、統計データから導き出される「○○年先には人口が半分になる」という将来像。多くの人が、田舎は少しずつ無くなっていくだろうと思っています。この映画が語ろうとしているのは、そういう過去のデータの延長で想像される未来を、当たり前に信じている我々への警鐘だと言ってもよさそうです。未来を語るということ、明るい将来を信じるということ、それが過去のデータからは想像できない、新しい未来を創出する原動力になる。そのように語っている訳です。

実は、このことは企業経営も同じです。過去のデータから推定すれば、多くの市場が将来も右肩下がり、今後は“人口が減り続ける”という前提に基づいていますから、国全体でみても、地域単位でみても市場は拡大しない。だから海外、アジアに目を向けろ、と言う話になります。現実的な選択としてそれもいいでしょう。しかし、地域の中で生きる中小企業、地域の共に歩むべき中小企業が、みずからの地域の将来を悲観して、地域から離れてしまっては、ますます地域が沈んでいくだけです。

だから明るい未来を信じることが必要だという訳です。そして、大事なのは“みんなで信じること”。地域づくりであれば、地域に暮らす人々みんなが信じる。企業であれば、そこに所属する人々みんなが明るい将来を信じること。それが、過去のデータの延長上からは見いだせない、新しい方向、いきいきと働く将来の自分達の姿を描くことにつながるのでしょう。

上映会後の交流会

本編上映の最後に、地域の方々からのメッセージが流れました。「あなたにとってふるさととは?」という設問に対して、さまざまな答えが流れ続けます。この設問、問いかけられて直ぐに明確に答えられる人がどれだけいるでしょうか。経営者に当てはめれば、何のために経営している?、会社の存在意義とは?という問いかけに当たるでしょう。最後に流れるたくさんの方のメッセージは、地域に暮らす人が、一人一人の価値観を見つめ直すよう訴えかけているようにも見えます。大事なことだけど、日々の生活の中では改めて考える機会がないこと、たくさんあります。それを考えることの大切さ、そのことが未来につながるということ、このブログをまとめてみて、それがこの映画から受け取ったメッセージの、私なりの答えではないかと考えています。

2012年7月15日(日)、松江市総合福祉センター4階ホール(松江市千鳥町70)にて上映会(観賞料1500円)が計画されています。お問合せ先は、カフェ太郎(松江市西法吉町36-28、0852-60-6305)まで。興味をお持ちの方は、この機会に是非一度ご覧下さい。

2012
06.21

2012年6月19日(金)、島根県中小企業家同友会 雲南地区会6月例会が開催されました。この日は、「社員と共に育つ。~限りなき麺づくりへの挑戦~」と題して、株式会社出雲たかはし 代表取締役 高橋大輔さんから報告を頂きました。同社は、島根県雲南市の製麺製造業を中心とした食品製造業の会社です。そば、うどん、ラーメン、そうめん、パスタなど200種以上の取り扱い品目を有し、高い技術と独自の製品ラインナップで、取引先も8割が県外にあるという特徴的な企業です。

その会社を率いる高橋社長は、現在31歳。24歳で社長を引き継ぎ、現在7年目という若い経営者です。しかし、今回の報告を聴き、この若さでここまでの経営を実践されている経営者が島根県内に居るということに率直に驚きました。自分と比べて10歳若い経営者がここまでできる。年齢は関係ないかもしれませんが、それに比べて自分はどうなのかと、大いに気を引き締めさせて頂いた、大変有意義な報告となりました。貴重なお話の中で、私が特に感じたことを3点整理しておきます。

報告する高橋社長

1.自らの会社を知ることから始める~全商品の試食とクレーム対応の矢面~

高橋社長が、社長に就任して最初にしたことが、「全ての商品の試食」です。200種類上あった自社製品を全て試食したそうです。理由は単純で、まず自社の商品にどういうものがあるのか分からなかったから。まず自社を知る。当たり前のことのようで、中々できないことの一つではないかと思います。いきなり新商品の開発や見直し等に取り組むのではなく、自社(商品)の現状を良く知る、という基本。自分自身も常に心がけておきたい観点です。

そして、通販部門を開設したこと。当初社内では反発もあったそうですが、実際にやってみたところ、思いがけない商品が売れるという結果がでたそうです。通販というチャネルが出来ることで、自社商品に関して取引先とは異なるニーズや改善点等が見えてくる。現在、出雲たかはしホームページでは、様々な商品がインターネットで注文できるようになっており、これも“やってみなければわからない”という高橋社長のチャレンジ精神が生んだ、大きな成果の一つでしょう。

さらに特筆すべきは、クレーム窓口を設置し、自ら先頭に立って対応したということです。自らお客さまに怒られる、ということ。クレーム対応は大切な仕事ですが、楽しい仕事ではありません。しかし、それを率先して引き受け、自ら矢面に立つ。その姿勢が社内に響くのだろうし、そこで自らが悔しい思いを感じる。それが、若かった(今でも若いですが)高橋社長を経営者として大きく成長させたのだろうし、その時の「このままではだめだ」という気持ちが、新しい挑戦に対する強い動機づけにつながったのだろうと感じます。

自分が同じ年の頃に、同じように出来ただろうかと考えた時、高橋社長のすごさを感じずにはいられません。私自身も、もっともっと現場を知る、当社の技術・技能を知る。そこに立ちかえることが必要だと感じさせて頂きました。

2.こだわりがつくり上げる独自の社風~出雲たかはしスピリッツ~

出雲たかはしの経営は、様々なこだわりに基づいて実践されています。一例として、「忘年会・新年会の全員参加にこだわる」ということ。“締め”と“始まり”にこだわる、というお話でした。そして、5年に一度、祝賀行事を開催されます。そこでは社員が一緒になって出し物を準備する。その準備も部活のような雰囲気で楽しく進められているそうです。以前は強制的だった会社行事等も、現在は一人一人の自由意思、自主性を重んじるという風潮が強いのが実情です。そんな中、あえてそのようにするには強い意思が必要でしょう。

しかし、なぜそうしているのかと言えば、「現場、営業・総務、といった普段は関わることが少ない社員が交わる機会だからだ」と明快です。祝賀会でお祝いするということよりも、そのことを通じて、社内にコミュニケーションが生まれることを大事にしている。だから、全員参加にこだわる。非常に明快です。

そして、こだわりの源泉は、「出雲たかはしスピリッツ」と呼ばれる経営のよりどころです。その中の“社訓”には「社長は従業員であり、従業員は社長である」と記されています。社長は従業員の目線で、一緒に悩み、考え、仕事をする。従業員は経営者感覚を持って、一人一人の役割を果たしていく。まさに、出雲たかはしらしい、すばらしい社訓だと感じます。高橋社長は、「経営者は孤独だと言われる。自分もそう思っていた時があった。でも、実際には一緒に悩み考えてくれる社員がいるのに、一人で孤独だとたそがれていただけだった。」と話されました。この社長の気持ちが、出雲たかはしという会社をまとめ、一致団結した会社をつくり上げているのだろうと感じます。自分自身に少しでも取り入れ、行動で示したいと感じたところです。

3.「限界からの一歩が人生」

最後に、高橋社長に若くして社長の座を譲られた、会長(先代社長、高橋社長の父)の言葉を示されました。それが、「限界からの一歩が人生」。もう駄目だと思ってからどう頑張るか、そこで人生も、会社経営も決まってくる。高橋社長が社長就任後、同社は、製品への異物混入事故を引き起こしたことがあったそうです。その時も一度は“もう駄目だ”と思われたそうです。しかし、懸命な努力でその苦難を乗り越えられて、今がある。その時、先代社長の存在と、この言葉の持つ力が、高橋社長にもう一歩進む力を与えたのでしょう。

補足報告でも、「会長の影響は非常に強かった」と話されました。「仕事ばかりで遊んでもらった記憶もない。父親というよりは一人の先輩経営者。背中で教えられた。」という大きな存在。それにも関わらず、先代のよき精神を上手く引き継ぎ、わずかな間に自分らしさの出ている会社に変化させている。そう感じさせる報告内容でした。

私は、社長を引き継いだ時に、先代(私の場合も父が先代社長ですが)のやり方を否定し、新しいやり方を導入していきました。あらゆることを改めようとしました。実践したこと自体が間違っていたとは思いませんが、これまでの会社の風土・社風といったことまでも否定されたと受け止めた社員も居たかもしれません。よき所は残し、改めるべきは改める。それが上手くできているのかどうか、もっといいやり方あったのではなかったか、そのように改めて気づかせて頂ける報告だったと感謝しています。

例会の様子

今回の報告、このブログで取り上げたこと以外にも、社員教育、安全管理、新しい市場の開拓、新商品開発など、多岐にわたる実践結果について報告して頂きました。バランスよく多様な取り組みを実践されていることがよく伝わり、もっと具体的な取り組みを聴かせて頂きたいと考えています。そして、最後に「麺文化は世界中にあり、常に進化している。」と語られました。そしてその変化に対応していくのが、出雲たかはしの使命。これは国内のみならず、いずれ海外へも進出していくというメッセージに聴こえました。そう遠くない将来、それは実現されるだろうと感じます。より高みを目指す経営者として、頑張って頂きたいし、私自身の励みにさせて頂きたいと考えています。

2012
06.15

島根県が主催する平成24年度「人財塾」に参加しています。

昨年度から参加させて頂いていますが、この塾は2年まで連続参加できるとのことで、今年度も申込させて頂きました。第1回目が2012年6月7に開催され、法政大学大学院 坂本光司教授の講演に続き、株式会社日本レーザー 近藤宣之代表取締役社長の講演を聴かせて頂きました。演台は「社員のモチベーション向上による企業再建」と題し、経営危機からの企業再建、そしてテーマである社員のモチベーションについて話がありました。同社は、MEBOという手法で親会社から独立したことでも有名です。今回、社員のモチベーションのみならず、経営者自身のモチベーションということについても様々な示唆を頂きました。私の感じたことについて整理しておきます。

講演する㈱日本レーザー近藤社長

1.夢と志の経営、そして企業の存在価値

講演の前半、「人間としての喜び」についてお話がありました。人間の喜びとは、周りから必要とされる、周りのお役に立つ、周りから感謝される、周りから愛される、このうち最初の3つは、仕事をしないと得られない。だから、企業の存在価値は次の3つだ、と説明されます。

ア)人を雇用すること(働くことで得られる喜びの提供)
イ)働く仲間に自己成長と自己実現の機会を提供する
ウ)顧客・取引先すべての共存共栄を通じて社会のお役に立つ

このことを前提に、次のような「モチベーションの維持・高揚の要素」を示されました。

1)常に黒字を出す(赤字は雇用不安を生みモチベーションを下げる)
2)雇用安定・人事・待遇面等ハードの要因(頑張ったら報われる仕組み、等)
3)連帯感・一体感を高めるソフト面の要因(イベント、懇親の場、等)
4)社長・上司の笑顔が作る明るい空気

“人間としての喜び”については、何回か同様の話を聴いたことがあります。しかし、今回、それが会社の経営理念・経営方針・経営計画などに、どう活かされ、反映されているのか、を今一度よく考える必要があると認識しました。というのも、モチベーション向上の4要素のうち、2)と3)は様々な企業の取組み施策を学ぶことで真似て実践することもできるし、当社でも様々な取り組みを進めています。しかし、その前提が、ア)~ウ)に示される“企業の存在価値”を高めるために行われているのか、もっと遡れば、人間としての喜びにつなげるために行われているのか、当社においては、そこが不十分ではないかという気がしたのです。

確かに、いい会社の取組みを真似するのが近道。それである程度は成果もでる。しかし、その先を見据えるならば、人間としての喜び、そして企業の存在価値、この根っこから伝わる施策であることを経営者が理解し、また社員が感じられたとき、本当のモチベーションの向上につながるのではないかと感じます。当社の経営指針について、今一度自問自答したいと考えています。

2.企業の存続条件と社長がやらねばならないこと

講演の中で、企業として存続できる3つの条件についてお話がありました。

1)お客さまを継続して創造できること
2)お客様と取引先を自社の応援団にできること
3)継続して人財の確保と育成ができること

このうち2)について、“自社の応援団”として、いまどきの言葉でいう「サポーター」をつくりだしていくことが重要だと指摘されました。いわゆる「BtoC」ではなく、「BtoS(supporter)」。このことは、前述の企業の存在価値「顧客・取引先すべての共存共栄を通じて社会のお役に立つ」にも通じる条件だと言えます。

そのために社長がやらなければならないことも3つ示されました。

ア)社員が頑張れば利益をあげられるビジネスモデルの構築
イ)社員のモチベーションが上がるような仕組みの構築
ウ)率先して人財を育成できること

そして、常に利益を出す強い会社の条件として掲げられたのは、「社員の成長が企業の成長」という理念の徹底、そして“ワクワクする会社”、ワクワクする社風が出来ていること。

この条件、読み直して改めて感じるのは、お客さまや取引先も含めた“人”とのつながりをどうしていくのか、社長の仕事はまさに“人(社員)”に関わる事そのもの、ということです。こういった結論に至るのは、やはり人間としての喜びからつながる企業の存在価値、ここに経営の軸足を置いているからで、至極当然な結論なのでしょう。そしてそのことが企業に好業績をもたらすことを証明されている。経営者としての自分自身の仕事が、この条件に照らし合わせてみてどうなのか、真摯に見つめ直したいと考えています。

3.異質な人財によるダイバーシティ

「ダイバーシティ」、“多様性”という意味合いですが、最近では人財の多様性を意味して使われることも多いそうです。日本レーザーの特徴の一つとして、「異質な人材の採用」ということがあります。性別、学歴、年齢、国籍等にこだわらない異質な人材の登用。具体的には、新卒入社5%、転職者85%、女性社員30%、その1/3が管理職、定年再雇用社員10%(70歳まで雇用)、勤続10年以上の中国籍社員2名、など、まさに多様性にあふれています。

近藤社長は、企業再建の中では人を選べる状況ではなかった、そういう多様性ある人財しか採用できなかった、ともおっしゃいます。だから「人がいなければ居る人でやればいい」と指摘されます。そして、異質な人財だからお互いに刺激し合い、社内が活性化する。そして、「会社が変わるのは、会社が舞台を用意し、そこで踊った同僚を見て、社員が変わり、会社が変わる。社員を激励し、社員が変わることで会社が変わる。」とおっしゃいます。会社の中心は社員、社員あっての会社です。その社員の活躍の場をつくるのが経営者の仕事。そう肝に銘じさせて頂けるお話でした。

なお、昨年度の人財塾(第2回)でライブレボリューションという会社の話を聴く機会がありました。この会社は新卒採用に絞り、会社の価値観の共有化を徹底していることが特徴で、やはり好業績をあげています。人財に関するアプローチは全く異なりますが、共通しているのは大前提として「人を大切にする」こと、そして雇用や人事など人財に関する方針が明確であり、徹底していること。当社で、今後の採用や人財育成、教育を考えていく際に参考にしていかなければならないと感じます。こういった事例比較ができるのも、2年にわたってこの人財塾に参加させて頂いたメリットの一つでしょう。

塾生によるグループ討議結果の発表

近藤社長の講演を通じて繰り返しお話があった言葉、それは「外部環境のせいにするな」ということ。そして、「すべての問題は自分の中にある」と言うこと。あらゆることは自分へのメッセージ。だから、社長に逆らう社員こそ大事にする。言葉では理解できても自分自身が腹に落とすのは難しい事です。しかし、近藤社長は実際にそうやって来たからこそ、企業再生を果たし、新たなステージへと発展させている。それが経営にかかる真実の一つがあることは間違いありません。それを信じて、自分自身も心底、そう思って日々の経営にあたれるよう、精進していきたいと考えています。

最後に、近藤社長が自分自身のモチベーションを維持してきた言葉、「今、ここ、自分」。“今、やらなきゃいつやる?”、“ここで頑張らねばいつ頑張る?”、“自分がやらなき誰がやる?”この言葉を私自身も心に刻み、気持ちを新たに自社の経営に向って行きます。

2012
06.08

2012年6月6日、平成24年度地中熱利用促進協会の総会が開催され、私も参加してきました。特定非営利活動法人 地中熱利用促進協会は、設立から8年という新しい団体ですが、平成24年6月1日現在の会員数は団体会員176社、個人会員56名、特別会員64名。特に団体会員はこの1年で53社が入社し、前年比143%という増加率で、この協会の活動に対する関心の高さを伺わせます。

当社も今年度上期中の完成に向け、本社屋への地中熱ヒートポンプ冷暖房システムの導入に着手しており、地中熱活用事業への本格的参入に向けたタイミングでの総会でした。地中熱を取り巻く情勢や今後の新しい方向性など、新しい姿を垣間見ることができました。総会、特別講演、懇親会、それぞれでの気づきを簡単にまとめておきます。

平成24年度地中熱利用促進協会総会

1.「節電」という観点で見直される再生可能エネルギー

改めて言うまでもありませんが、現在、「再生可能エネルギー」に注目が集まっています。特に、“節電”という観点からです。もう一つ“省エネ”という言葉があります。同じように使われることが多いですが、似て非なるものです。この点について、開会にあたり挨拶された協会理事長の笹田政克さんからお話がありました。

省エネとは、電気や熱エネルギーの年間での消費量全体を削減するもので、総コストそして、CO2の削減などの効果が現れます。一方、節電とは、ピーク時の電気使用量を削減するというものです。原子力発電所が停止して発電能力が下がっているので、夏場の昼間など電気を最も使う時間帯に電気が足りなくなる。これを回避しようというものです。ですので、夜間のエアコンを我慢するというのは、(電気代の節約にはなるが)節電上の意味はない、ということになります。

地中熱は、もちろん省エネであり、節電にも効果を発揮します。地中熱という温度差エネルギーは、夏場に一般の空冷式エアコンを使うよりも大幅に効率が高まるため、我慢して暑い思いをしなくてもピークカットに大きな効果を発揮します。このため、地中熱の売りの一つとして、特に都市部を中心に、節電、そして省エネ、ということを協会としても大きく謳っており、アピール材料にしています。当社でも、本社屋に導入する地中熱の冷暖房システムの効果をしっかりと計測し、節電そして省エネに対する効果をしっかりとアピールしていく必要があると考えています。

もう一点、再生可能エネルギーについて、現在、世の中は「固定価格買取制度」のことで持ちきりです。地中熱に代表される“熱利用”からはフォーカスが外れているようにも映ります。地中熱は「発電」ではないため、“運べない”(送電できない)という特性があります。しかし、それは生産した場所で消費する、地産地消のエネルギーと言うことでもあります。だから、その地域地域できちんとした仕事ができる企業が必要になる。これも地中熱という事業の特性で、まさに地域に根差した中小企業との親和性の高い事業領域であると、認識を新たにしたいところです。

2.イノベーションで未来を拓く~やってみなければわからないからやってみる~

今回の総会では特別講演として『創発的破壊:日本のパラダイムチェンジ』と題し、一橋大学イノベーション研究センター教授 米倉誠一郎氏から講演がありました。一見、地中熱とは関係なさそうなテーマでしたが、“地中熱”活用によって引き起こされるイノベーションについて、大きな時代の流れに着目しながら大変興味深い講演をして頂きました。

「イノベーション」とは、社会経済に新しい価値を生み出すこと。大きく、新しい製品、新しい生産方法、新しい市場、新しい材料、新しい組織、の5つに分けられる。地中熱による再生可能エネルギーの活用も、大きなイノベーションの可能性を有しているという訳で、今回の講演をお願いされたという経緯のようです。

なぜ、地中熱なのか。その答えは、大きな時代観と決断力、ということになるようです。戦後復興のプロセスをみると、戦後、大量生産・大量消費の時代が来ると確信し、そのための投資を決断した企業や事業家が成功した。それになぞらえば、これからは3.11以降の日本がどこに行くのかを読み切った者の勝ちだと言われます。米倉先生の答えは「脱原発・脱炭素社会のリーダー」。今までの半分のエネルギーで生き、そのエネルギーソリューションを世界に売っていく。だから地中熱を活用する。そのための技術を高め、市場を開拓し、材料を開発し、組織をつくるのだと。大きな夢、将来への展望を感じさせて頂ける話しでした。

そして、演題にもなっている「創発」という言葉。言葉の意味は、「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れること」。1つ1つは小さくてもまとめることで大きく爆発的に広がっていく。創発こそ、イノベーション。イノベーションは誰かがすることではなく、一人一人がすること。事実、地中熱に取り組んでいるのは中小企業で、大企業ではありません。それは地産地消のエネルギーで地域それぞれの特性に応じた対応が必要だからということもあります。だから、地方の一つ一つの中小企業が積極的に取り組むことで、1社の力は小さくても地中熱全体が爆発的に広がっていく。そういう将来の姿を見据えて、このようなお話をされたのだと理解しています。

最後に、今回記憶に残った言葉があります。「悲観主義は気分の領域、楽観主義は意思の領域」、そして、「やってみないとわからないからやってみる」のだと。とかく、リスク分析だ、ケーススタディだ、というご時世に、非常に痛快な言葉でした。もちろん我々中小企業がやることですから際限なく出来る訳ではありません。しかし、“まずやってみる”というその気持ち、意思、それが未来を切り開くのだと大きな勇気を頂いた講演でした。

3.設備施工を担う企業の役割と方向~設計から施工までのトータル提案~

総会の後は懇親会が開催され、全国で地中熱に先進的に取り組まれる様々な企業の方と情報交換させて頂く機会がありました。その中で気が付いたこと、現在の当社の取組みの方向性を改めて確認したことがあります。

前述のとおり、当社では今年度上期中の完成に向け、本社屋への地中熱ヒートポンプ冷暖房システムの導入に着手していますが、各社とも当社の自社でまず導入してから推進するという進め方については、島根県内での実績がほとんど無い状況では、非常によいアプローとのではないかという感想を伺いました。その一方、価格についてはきちんと交渉した上で安く導入できるようにするべき、ヒートポンプをはじめ設備側のメンテナンスにしっかり対応できる体制がある企業と連携しながら進めるべき、などのご意見も頂きました。いずれも考慮に入れて進めてはいますが、特に価格に関する部分は、単に交渉で安くするというアプローチだけでなく、システムそのものの簡素化や効率化、必要な熱量に見合ったシステム、設備の導入といった対応が大事ではないかと考えています。

その意味で、当社が目指すべき姿は、単なる地中熱交換井の掘削工事業者ではなく、設計段階から地中熱システムに関与し、お客さまに対してトータルで提案できる企業となっていくことが重要、との認識を新たにしました。本社屋システムの導入をきっかけに地中熱のPRを図るだけでなく、社内の教育・訓練体制を充実させることも並行して実施していきたいと考えています。お客さまが求めているのは設備やシステムではなく“問題解決”、お客さまはそのための「提案を待っている」、このことを常に頭に置きながら今後の取組みを展開していきます。

講演する一橋大学イノベーション研究センター米倉誠一郎教授

地中熱利用促進協会の総会、そして懇親会に参加して一番感じるのは、「勢いがある、今後に向けた展望がある」、ということ。当社もいくつかの業界団体に所属し、その総会に出席します。基本的に公共事業を主体とした団体ですので、総じて雰囲気が暗いのが実情です。しかし、ここにはそういった総会とは全く異なる雰囲気があります。ただ、展望があるということは競争も厳しいでしょうから浮かれてはなりません。しかし、協会をつくって活動をするのであれば、将来が展望できる、こういった局面だからこそ一致団結できるのだろう、そう感じます。地中熱分野が当社にとって重要な方向性の一つであることを改めて確信し、具体化に向け大きなエネルギーを頂いた総会でした。