2013年8月4日(土)と5日(日)、松江市の夏祭り「水郷祭」に、まつえ南商工会青年部八雲支部で出店しました。昨年は一年ぶりに復活、それに引き続いての出店です。2日間をほぼフルに店頭に立ち、焼きそばと生ビール、ソフトドリンクなどを売りました。私は、2010年に初めて参加して以来通算3回目となりました。年に一度の夏の祭典。その中に、運営側の一角として参加させて頂くことで、さまざまな気づきや発見、そして日常を離れた楽しいひとときを過ごすことが出来ました。今年の反省と来年に向けた展望をまとめておきます。
1.「生ビール完売」は景気回復の兆しか?
今回我々が販売した商品のうち、唯一、生ビールだけが「完売」しました。仕入れた数量は昨年より少なかったのですが、昨年は余りが出たので仕入れを減らしています。その状況で、2日目の夜、しかも比較的早い時間帯で完売してしまいました。その一方で、お茶・ジュースなどのソフトドリンク、ノンアルコールビールなどはかなり売れ残りました。結果だけ見ると“アルコールが売れた”という状況です。
また、当店の2日間の売上は昨年並みでした。我々が店を構える松江市役所駐車場周辺の人出がどのくらいであったか、正確なデータはありませんが、昨年と比べて著しく増減している印象はありません。また、暑さの体感で言えば、昨年の方が暑かったと思います。
その状況で、なぜ生ビールが完売したのか。この理由を、あえて、“景気回復への期待感”と考えてみたいと思います。たかが祭りの出店の生ビールの売り上げだけで景気動向を語れる訳もありませんが、祭りに訪れた多くの参加者の方々が、少なからず気分を高揚させ、お酒も飲んで祭りを楽しもうという気持ちになっていたとすれば、それはこの地域において喜ばしいことではないかと考えます。
地方部における景気回復に関しては、実体経済の回復はまだまだという指摘が多い状況です。ですが、水郷祭と時を同じくした8月5日、山陰両県で操業する企業の2013年度の設備投資動向が6年ぶりの増加になった、との新聞報道もありました。山陰地域の経済動向も、期待感から具体的行動へと移ってきつつあるのかもしれません。そのタイミングで開催された水郷祭。この賑わいが、実態経済の回復、地域活力の回復へとつながっていくことを楽しみにしたいと思います。そう思った方が、自分自身にとっても、きっといいことがあると思っています。
2.機会損失~分かっていても避けられないのは方向づけの欠如から
水郷祭は2日間にわたって開催され、両日とも20時から花火が上がります。この花火開始前までの2時間ほどが、焼きそばに代表される食事モノを販売する勝負時となります。20時を過ぎて花火が上がりはじめると客足が一気に途絶えます。大量に売り切るためには、ピークの時間に向けて供給体制を整えておかなければなりません。このことは、1~2回出店してみると分かります。だから各店とも、その時間帯に商品切れを起こさないよう、準備をしていきます。我々もそうしていました。
しかし、今回、2日目の勝負時に商品切れを起こしてしまいました。原因の一つは、焼きそばにトッピングとして載せている目玉焼きを焼く時間が間に合わず、焼きそばは準備できていても、完成品として提供することが出来なかったことです。結果、商品切れを起こした我々のブースの客足は途絶え、わざわざ訪れて頂いた何人ものお客さんを逃しました。「あと2分でできます!」と伝えても、待たれるお客さんは居ません。お客さんは「今、欲しい」のです。そして、絶対にうちの店の焼きそばでなければならない訳でもない。
これは、なにも出店の商売に限ったことではありません。多くの場合、お客さんは直ぐ欲しい、直ぐ対応して欲しいから、店に来ている。その要望に対応できなければ競争に勝てないのは当たり前。もしそうでないなら、“この商品でなければならない”という絶対的な付加価値を持つこと。あれが食べたい、或いは、あの人がつくったものが欲しい。そして、我々のお店はそのどちらでもなかった。だから、ほどほどには売れたけど、ものすごい充実感はありません。大げさな話では無く、たかが祭りの出店とたかを括らず、自分達はどういう方向を目指すのか、どうなりたいのか、イメージしながら取り組むことが大事だということを改めて感じたところです。
3.地域の活力と交流を実感する場としての祭り
水郷祭は、松江最大、そしてしまね最大のお祭りですが、中国地方でも有名な祭りになりつつあるそうです。私は松江市役所前の商工団体ブース周辺にしかいませんので、全体像をしっかりつかんでいる訳ではありません。しかし、2日目の人出は本当に“松江にこれだけ人が居るのか”と思うぐらいのボリューム感で、ひとときとはいえ、松江もまだまだ捨てたもんじゃない、という地域の賑わいと活況を感じることができました。
その印象を裏付ける話があります。今回、たまたま仕事で松江に滞在していた下関の取引先の方が私のブースを訪ねてくれました。彼も下関市で商工会議所青年部に所属して下関市の祭りに関わるそうですが、今回初めて水郷祭を見て、「水郷祭の方が断然賑わいがある」と話をされていました。なにより、参加している商工団体のメンバーの活気、熱意の高さに驚いたと話してくれました。外部の目から見てそれだけ評価されるこの祭り、中心となって活動されている方々の熱意と努力のたまものだと感じます。その祭りに、携わらせてもらう機会を頂いていることに感謝したいと思います。
そして、もう一つ感謝したいのは、たくさんの友人・知人の方々がブースを訪ねて来てくれることです。昨今はフェイスブックなどのSNS活用の広がりもあり、週末に水郷祭に参加していることを周知する手立てがあります。それを見てくれた方々が訪ねてきてくれる。それだけでなく、昨年度も出ていたから今年も居るのだろうと思って顔を見せてくれる。飲み物一つでも買ってくれるという、ちょっとした心遣い。“来たよ!”という一言の挨拶。そうやって訪ねてもらえることのありがたさを、今年は特に実感する機会となりました。松江に帰って来て5年目。だんだんと自分自身が地域に根差して来たのかなと感じる機会でもありました。
すでに水郷祭の名物にもなっている“氷屋(宍道支部)”には、昨年同様ものすごい行列ができていました。今年はさらに生産体制を強化し、よりスピーディーに商品を提供できる体制を整えて臨んでいました。まさに別格の販売量と人気。他の商工団体青年部の出店とは一線を画する存在感を放っています。その刺激もあってか、この数年間でその他団体のブースも華やかになり、また独自色ある新たな商品が毎年出てくるようになりました。我がブースが代わり映えしないのは反省点ですが、そういったお互いの切磋琢磨、一緒に祭りを盛り上げようという共通の目的意識、それがとてもいいサイクルで動いているのではないかと感じます。我々も是非、来年はもう一工夫を取り込んで祭りに望む。そして地域を盛り上げる。そんな存在になることを目指し、また来年挑みたいと考えています。