地域貢献活動

地域貢献活動 ボランティアによる森林整備活動から学ぶ~支援措置と専門家の協力が不可欠~

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島根県森林土木技術協会(協和地建コンサルタントも協会員として活動しています。)では、平成22年度から「しまね企業参加の森づくり」制度による森林ボランティアに取り組んでいます。私は、協会役員としてこの活動を担当し、既に4年目に入りました。最初はよく分からず始めた活動でしたが、丸3年もやってくると、こういったボランティアで実施する森林整備活動の面白さや課題も見えてくるようになりましした。

今後も、主担当者としてライフワーク的に取り組んでいきたいと考えていますが、丸3年を経て取組みを総括し、こういった活動が地域で展開される意義や今後のあり方などについて想うところをまとめてみます。

H24年度春の下刈り作業の様子

1.ボランティアによる森林整備活動の意義とは

現在実施している活動は、島根県森林土木技術協会(林野公共事業に携わる設計コンサルタントで構成される団体)が、民間の山林所有者の方と10年間の土地の無償貸借契約を結び、その間に竹林の伐採と新たな植林を行い、森林の再整備を行うというもので、平成22年に島根県によって創設された「しまね企業参加の森づくり」の制度に則って実施しているものです。島根県内では複数の事業者、団体がこの制度を利用して森林整備活動を実施されています。

当協会が対象としている山林は、松江市八雲町内の約1.0haの森林で、これまで3年間にわたって、計0.6ha、1,200本のヤマザクラを植林し、あわせてその下刈りを年2回ずつ実施してきました。植林や下刈り作業は、この協会に加盟する企業の従業員やその家族がボランティアで実施しています。こういった、地域の企業や住民などによるボランティアでの森林整備活動は、少しずつ注目されてきています。

我が国の森林を取り巻く課題は多岐にわたります。根本的には、林業が産業として成り立ちにくくなっていること。里山などの産業用の森林以外でも、少子高齢化と相まって荒廃が進んでいることなど、多々あります。この改善は一朝一夕には難しい訳ですが、少しでも森林に関する関心を高め、森林の有する多面的な機能を地域で活用しよう、という趣旨で行われているのが、我々が実施しているようなボランティアでの森林整備です。そういう意味ではシンボリックなものでしかないし、自己満足の領域を出ないものです。この活動がいくら進んでも、我が国の森林を取り巻く状況が抜本的に変わることはありません。

しかし、それでもやる意義はあります。そもそも、国土の大半を占める「森林」が一体どういうものなのか、“勝手に木が生えているだけではない”ということを馴染みの無い方に理解してもらうだけでも、やる意義はあります。そして、年数回の活動であれば、森林整備自体が身近なレクリエーションになり得ます。非日常である森林で過ごすひとときが、日々忙しく過ごす現代の生活におけるストレスの解消となり、明日の活力になる、ということもあるでしょう。

2.支援措置と専門家の協力が不可欠

3年間にわたり、ボランティアによる森林整備に携わって来て率直に感じるのは、「支援措置」と「専門家の協力」が不可欠だということです。

支援措置とは、金銭的な支援のことです。専門家とは、森林組合に代表される森林整備のプロのことです。この2つが無ければ、一般のボランティアによる森林整備など、全く形になりません。このことは、認識しておく必要があります。もちろん、“絶対に”とは言いません。自分の時間と私財を惜しまず、森林整備傾注する人たちがたくさんいれば、成り立つかもしれません。しかし、実際にはそうはいきません。普段は自分達の仕事を持つ中で、様々な活動の一つとして森林整備にも携わっている。そこで出来ることには限りがあります。だから、様々な形での支援と協力が必要な訳です。

支援措置については、現在二つの制度を活用しています。いずれも島根県が所管する制度ですが、「みーもの森づくり事業」と「緑の募金公募事業」です。両方とも、森林整備活動にかかる様々な費用を補助してもらうことができます。大変助かっています。一般の方への認知度はまだまだかもしれませんが、いずれの制度も最近活用される方が増えているようです。地域のボランティア団体など、地域における森林整備を目指す方々が中心に活用されています。森林を地域活動のステージとして捉え、地域内外の交流の場としたり、生涯学習の場としたりする試みと言え、県内でも多数実施されています。

専門家の協力については、当協会は事業実施以降、松江・八束森林組合の支援を受けて活動を実施しています。例えば、森林に植林をする際、いきなり植林が出来るようにきれいに整備された山林などありません。まず、植林ができるようにするための「地ごしらえ」という作業が必要になります。これが大変な作業です。当協会の対象地は、侵入竹林(元々雑木林だったところに竹が侵入してきて竹林になった)で、竹の伐採からスタートしました。何百本という竹です。一本切るのも大変だし、切ればいいというものではありません。切った竹の枝を払い、植林の邪魔にならないよう整えて斜面に置かなければなりません。この作業は、一般の方だけでは困難です。安全に、限られた時間で所用の目的を達成しようとすれば、森林組合など専門家の力は絶対に必要です。そのためにも支援措置として金銭的な補助が必須な訳です。

誤解を恐れず言えば、我々のやっている森林整備のボランティアとは、税金を使ってお膳立て(地ごしらえなどの環境整備)をしてもらった上で、植林作業などの見た目のいいところだけを担い、あたかも森林整備に貢献しているかのようにPRしている、というものです。しかしそれだけの支援を受けても、森林整備に取り組み、多くの方に体験して頂くことには意義があります。実際問題として、森林整備活動はものすごい重労働です。植林でも下刈りでも、休憩をはさんで2時間も作業すれば、普通の人はバテバテです。森林に手を付け、維持するのはそれだけ大変だということ。それが分かるだけでも違います。「森林の保全」や「森林の活用」という問題をどう捉えればいいのか、一人一人が判断材料を持つことができます。そして、多少であっても当該エリアの森林整備は進捗していきます。そういった実績を踏まえ、その活動に支援することが妥当なのかどうか、交付する行政側で判断頂ければいいと考えています。

3.成果が見えることで士気が高まり、幅広い参加者を得られる

森林整備活動に携わって丸3年。森林整備活動の面白さの一つに「結果が見えやすい」事があります。着手前には、うっそうとした竹林だったものが、地ごしらえにより伐採され、そこに少しずつ新しい木が植わっていく。それが徐々に増え、そして成長していく姿を目の当たりにできる。こういった「目に見える変化」というのは活動に携わる者にとって、特に、主担当として活動を推進している私にとっては大きな励みになります。

そして、複数年にわたって携わっていれば、その森林が「自分たちの森」だという認識も少しずつでてくるのではないかと思います。私は段々とそう感じていますが、一般の参加者の方はそこまでには達していないでしょう。しかし。この3年間の活動においても、毎回のように参加して頂いている会員各社の社員さんがいらっしゃいます。その方々とお話をするとき、「今後はどうするのか?」「こういうものがいるんじゃないのか?」など、ご意見を伺うことがあります。関心を持って頂いているからこそ、ご意見も頂ける。とてもありがたいことだと感じています。こういったご意見を踏まえ、平成23年度には、やはり支援措置を用いて山中に作業道及び階段工を整備しました。

また、昨年からは島根大学生物生産資源学部の学生さんもボランティアとして参加して頂いています。昔で言う農学部林学課にあたる学科の学生さんです。大学での学びの実践の一部として、実際の森林整備活動を体験して頂いています。このように様々な形で参加の輪が広がるというのも活動自体が成長していることを感じることができ、励みになります。日頃、森林の植生や生態系について学び、その保全や維持について研究する学生も、いざ現場に入れば、植生も生態系もどこかに吹っ飛び、植樹以外の植物をとにかく伐採して歩きます。それが現場の現実。それを知った上でこそ、大学の講義も実学に近づいていくでしょう。

H24年度秋の植林作業の様子

最後に、やはり経営者的視点でまとめておきたいと考えています。この森林整備活動、会社経営とも共通するところが多々あります。「森林」に着目すれば、ある時期良くない状態だった森林(会社)を、少しずつ改善していい方向に持って行く。外部の力や支援を受けてやり方を見直していく。新しい植樹を行い(職員を採用して)、育成していく。数年単位でみれば、その変化は明らかに分かります。その変化が分かれば、自分自身の励みにつながる、そう置き換えてもさほど違和感はないと考えています。そして、この活動全体をマネジメントするということ。毎回100名近い参加者を得て活動を行います。情報伝達、安全管理、コミュニケーション、役割分担、さまざまな配慮が無ければスムーズな活動はできません。そういった、いい経験をさせて頂いていることに感謝し、この活動自体のさらなる発展に向けて引き続き取り組んでいきたいと考えています。

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