島根県中小企業家同友会

島根同友会(雲南)6月例会 先代の精神を引き継ぎ、独自の感性で企業を磨き上げる若き経営者の実力

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2012年6月19日(金)、島根県中小企業家同友会 雲南地区会6月例会が開催されました。この日は、「社員と共に育つ。~限りなき麺づくりへの挑戦~」と題して、株式会社出雲たかはし 代表取締役 高橋大輔さんから報告を頂きました。同社は、島根県雲南市の製麺製造業を中心とした食品製造業の会社です。そば、うどん、ラーメン、そうめん、パスタなど200種以上の取り扱い品目を有し、高い技術と独自の製品ラインナップで、取引先も8割が県外にあるという特徴的な企業です。

その会社を率いる高橋社長は、現在31歳。24歳で社長を引き継ぎ、現在7年目という若い経営者です。しかし、今回の報告を聴き、この若さでここまでの経営を実践されている経営者が島根県内に居るということに率直に驚きました。自分と比べて10歳若い経営者がここまでできる。年齢は関係ないかもしれませんが、それに比べて自分はどうなのかと、大いに気を引き締めさせて頂いた、大変有意義な報告となりました。貴重なお話の中で、私が特に感じたことを3点整理しておきます。

報告する高橋社長

1.自らの会社を知ることから始める~全商品の試食とクレーム対応の矢面~

高橋社長が、社長に就任して最初にしたことが、「全ての商品の試食」です。200種類上あった自社製品を全て試食したそうです。理由は単純で、まず自社の商品にどういうものがあるのか分からなかったから。まず自社を知る。当たり前のことのようで、中々できないことの一つではないかと思います。いきなり新商品の開発や見直し等に取り組むのではなく、自社(商品)の現状を良く知る、という基本。自分自身も常に心がけておきたい観点です。

そして、通販部門を開設したこと。当初社内では反発もあったそうですが、実際にやってみたところ、思いがけない商品が売れるという結果がでたそうです。通販というチャネルが出来ることで、自社商品に関して取引先とは異なるニーズや改善点等が見えてくる。現在、出雲たかはしホームページでは、様々な商品がインターネットで注文できるようになっており、これも“やってみなければわからない”という高橋社長のチャレンジ精神が生んだ、大きな成果の一つでしょう。

さらに特筆すべきは、クレーム窓口を設置し、自ら先頭に立って対応したということです。自らお客さまに怒られる、ということ。クレーム対応は大切な仕事ですが、楽しい仕事ではありません。しかし、それを率先して引き受け、自ら矢面に立つ。その姿勢が社内に響くのだろうし、そこで自らが悔しい思いを感じる。それが、若かった(今でも若いですが)高橋社長を経営者として大きく成長させたのだろうし、その時の「このままではだめだ」という気持ちが、新しい挑戦に対する強い動機づけにつながったのだろうと感じます。

自分が同じ年の頃に、同じように出来ただろうかと考えた時、高橋社長のすごさを感じずにはいられません。私自身も、もっともっと現場を知る、当社の技術・技能を知る。そこに立ちかえることが必要だと感じさせて頂きました。

2.こだわりがつくり上げる独自の社風~出雲たかはしスピリッツ~

出雲たかはしの経営は、様々なこだわりに基づいて実践されています。一例として、「忘年会・新年会の全員参加にこだわる」ということ。“締め”と“始まり”にこだわる、というお話でした。そして、5年に一度、祝賀行事を開催されます。そこでは社員が一緒になって出し物を準備する。その準備も部活のような雰囲気で楽しく進められているそうです。以前は強制的だった会社行事等も、現在は一人一人の自由意思、自主性を重んじるという風潮が強いのが実情です。そんな中、あえてそのようにするには強い意思が必要でしょう。

しかし、なぜそうしているのかと言えば、「現場、営業・総務、といった普段は関わることが少ない社員が交わる機会だからだ」と明快です。祝賀会でお祝いするということよりも、そのことを通じて、社内にコミュニケーションが生まれることを大事にしている。だから、全員参加にこだわる。非常に明快です。

そして、こだわりの源泉は、「出雲たかはしスピリッツ」と呼ばれる経営のよりどころです。その中の“社訓”には「社長は従業員であり、従業員は社長である」と記されています。社長は従業員の目線で、一緒に悩み、考え、仕事をする。従業員は経営者感覚を持って、一人一人の役割を果たしていく。まさに、出雲たかはしらしい、すばらしい社訓だと感じます。高橋社長は、「経営者は孤独だと言われる。自分もそう思っていた時があった。でも、実際には一緒に悩み考えてくれる社員がいるのに、一人で孤独だとたそがれていただけだった。」と話されました。この社長の気持ちが、出雲たかはしという会社をまとめ、一致団結した会社をつくり上げているのだろうと感じます。自分自身に少しでも取り入れ、行動で示したいと感じたところです。

3.「限界からの一歩が人生」

最後に、高橋社長に若くして社長の座を譲られた、会長(先代社長、高橋社長の父)の言葉を示されました。それが、「限界からの一歩が人生」。もう駄目だと思ってからどう頑張るか、そこで人生も、会社経営も決まってくる。高橋社長が社長就任後、同社は、製品への異物混入事故を引き起こしたことがあったそうです。その時も一度は“もう駄目だ”と思われたそうです。しかし、懸命な努力でその苦難を乗り越えられて、今がある。その時、先代社長の存在と、この言葉の持つ力が、高橋社長にもう一歩進む力を与えたのでしょう。

補足報告でも、「会長の影響は非常に強かった」と話されました。「仕事ばかりで遊んでもらった記憶もない。父親というよりは一人の先輩経営者。背中で教えられた。」という大きな存在。それにも関わらず、先代のよき精神を上手く引き継ぎ、わずかな間に自分らしさの出ている会社に変化させている。そう感じさせる報告内容でした。

私は、社長を引き継いだ時に、先代(私の場合も父が先代社長ですが)のやり方を否定し、新しいやり方を導入していきました。あらゆることを改めようとしました。実践したこと自体が間違っていたとは思いませんが、これまでの会社の風土・社風といったことまでも否定されたと受け止めた社員も居たかもしれません。よき所は残し、改めるべきは改める。それが上手くできているのかどうか、もっといいやり方あったのではなかったか、そのように改めて気づかせて頂ける報告だったと感謝しています。

例会の様子

今回の報告、このブログで取り上げたこと以外にも、社員教育、安全管理、新しい市場の開拓、新商品開発など、多岐にわたる実践結果について報告して頂きました。バランスよく多様な取り組みを実践されていることがよく伝わり、もっと具体的な取り組みを聴かせて頂きたいと考えています。そして、最後に「麺文化は世界中にあり、常に進化している。」と語られました。そしてその変化に対応していくのが、出雲たかはしの使命。これは国内のみならず、いずれ海外へも進出していくというメッセージに聴こえました。そう遠くない将来、それは実現されるだろうと感じます。より高みを目指す経営者として、頑張って頂きたいし、私自身の励みにさせて頂きたいと考えています。

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