2012年10月31日、パラダイスコーポレーションで代表取締役社長を務める川中努さんからご案内を受け、川中さんが講師を務める『「心を知る技術」勉強会』に参加してきました。自分の“価値観”を知る「バリュー・ディターミネーション」のワークを体験し、この手法の可能性を感じさせてか頂くことができました。
バリュー・ディターミネーションとは、人間行動学と自己啓発の分野での世界的な権威である、ドクター・ジョン・F・ディマティーニが開発されたメソッド(方法、方式)で、人間関係の改善・解決策であり、40年近い調査・研究成果を用いて開発された科学的な手法(とても説明しきれないのでこのぐらいで)だそうです。今回の勉強会ではその“さわり”を紹介頂き、実際に参加者がワークすることでその一部を実感するという趣旨のものでした。その感想を少しだけ整理しておきます。
1.「価値観」~人は自分が価値を置いている分野で才能を発揮する~
バリュー・ディターミネーションのキーワードは「価値観」。この言葉、実は私はあまり好きではありません。下世話な話ですが、よく芸能人が離婚会見で「価値観の不一致です」などとその理由を話します。が、元々そんなぴったりの人なんかいる訳ないし、違うのを理解してそれをお互いに合わせていくのが結婚生活だろう、と思ってしまう訳です。なんか、分かったようで分からない“便利な言葉”として安易に使われている感じが嫌で、私はこの「価値観」という言葉を日常ほとんど使いません。しかし、今回の勉強会を通じて、実は「価値観」として端的に表現される事がらの奥にある意味合いを考えることこそ重要、というのが少しわかってきました。
前置きが長くなりましたが、今回の話の主旨の一つは、「人は自分が価値を置いている分野で才能を発揮できる」、というようなことです。さらには、川中さんは「本当の自分(の価値観)に気づくことで、自分の天才性が発揮できる」とも説明されました。有体に言えば「好きこそ物の上手なれ」ということでしょうが、自分の好きな事、やりたいことをもっと大事にし、それを軸足に生きた方がいい、というようなことだと(今のところ)理解しています。これに対しては“夢で飯が食えるか!”的な論もある訳ですが、夢に生きろということではなく、夢に描くほど好きだったことに、今必要に迫られてやっている仕事を上手く関連づけで自分の動機づけを得る、というような意味合いではないかと考えています。
もう一つの強調されていたポイントは、「物事には両面がある」ことの理解、でした。全ての事には良い面、悪い面の両面がある。お金がたくさん得られれば、そのお金で様々な事が出来るが、反面、傲慢になって友人を失ったりする可能性もある。たくさんの子供に恵まれるということも、当然に幸せなことである一方、親として子供に時間をかけることで、自分自身が本当にやりたかったことを行う時間や機会を逸しているかもしれない。何事も捉え方一つな訳ですが、これを人間関係にも当てはめて考えてみる、ということでしょうか。例えば、いつも怒られていて嫌いだった先生がいたが、振り返ってみればその時の厳しい指導が今の自分の人間形成に役立った、と解釈するようなことです。その他にも事例を交えて色々な説明をして頂きましたが、私自身の感覚としては大変分かりやすい、理屈の通った話として聴くことができました。
2.経営者として自分自身の本当にやりたいことを見出す~社業と関連付けて成果につなげる~
今回、自分自身の「価値観」を明確にするためのシートを用いて、自分が大事にしている価値観がどのような優先順位にあるのかを確認するワークを行いました。自分自身の価値観を問う「12の質問」に答えていきます。細かい手法の説明は省きますが、ワークの結果、私の優先順位の1位は「仕事」、3位に「子供」、といったものが入ってきました。これらは順当なところと言えそうですが、それ以外のもの(2位、4位、5位)は私の現在の興味や嗜好、自分自身の性格等を反映したものだと思えます。では、自分自身の価値観の優先順位が分かったとして、その後どうするのか。
その答えは、「自らの価値観を認識し、本当の生き方に気づく」ということのようです。人生が上手く行かない理由は、自分以外の誰かの価値観にあわせているから、自分が本当に望んでいることとは異なるものにしがみつているから。確かにそうかもしれません。自分の価値観(≒本当に大事にしたいこと)が分かれば、自分の本当に好きなことをする、又は、自分が今やっていることを自分の価値観にリンクする、といったことが可能になる、と言う訳です。
この「自分がやっていることを自分の価値観にリンクさせる」という作業、今回のワークでは実施していないのですが、大変重要な意味をもつという印象です。誰しも様々な経緯や環境、しがらみの中で生きてきており、自分がやりたいことが分かったからといって、直ぐにそれが出来る環境にない場合もあるでしょう。その時に、自分が今(仕方なく)しなければならないこと(仕事が一つの代表例でしょうか)が、自分にとって優先順位の高い価値観にどういう意味をもたらすのか、それを見出し、しっかりと関連づける。前述の“物事には両面がある”という考え方がここで意味を持ってくるのでしょう。自分にとって好まざると感じることも(悪い面)、実は自分のやりたいことにつながっている(良い面)、と理解する。そのことで、今しなければならない行為に大きな意味が感じることができる。その作業は次のステップになるのでしょうが、大変興味深く感じています。
現在、私は後継者として経営者をしていますが、中小企業の後継者(特に息子等の場合)というのは、多くの場合“行きがかり的”にその役目に就き、目的ではなく“事情”で経営に携わります。それでも引き受けたからには、社員とその家族のため、お客さまや取引先のため、事業を維持発展させなければなりません。その時に、「自分が仕事に取り組む意義を心から納得する」ということは大変重要な意味を持ちます。バリュー・ディターミネーションで、自分自身の価値観の優先順位、自分自身が本当に何をしたいのかを明らかにし、そのやりたいことと自分を取り巻く様々な環境を関連付け、気持ちを楽にして事業に邁進する。それができれば、そんなすばらしいことはありません。是非、自分自身で試してみたいと考えています。
3.社内における価値観あわせのツール~個々人の価値観を事業の目的と関連づける~
今回講師をして頂いた川中さんは、このツールを社員のみなさんとの面談で用いられており、社内の価値観を合わせるために活用されているそうです。バリュー・ディターミネーションのもう一つの効果として、自分や他人の価値観を知ることによって人間関係がスムーズになる、ということがあるそうです。自分の価値観を相手の価値観に準じた方法で伝える。例えば、趣味でチームを作っているサッカーに優先順を置いている社員がいるとすれば、仕事上の連携や協力をサッカーチーム内でのコミュニケーション等に例えて話をする、といった具合でしょう。
この活用方法は非常に有効性が高いように感じます。例えば、仕事第一でとにかく仕事に集中する人、仕事もするけど家庭も大事にしてそのバランスを取る人、色々なタイプの人がいるとします。それは、その人の置かれている家庭環境、年齢など人生のステージ、等によっても変わってきます。家庭を大事にしなければならない時期にある人に、仕事第一主義的観点で仕事の話をしても思うように意図が伝わらない、というケースは想像がつきます。
そうではなく、お互いが(その時点で)優先順位を高くしている価値観に即して話をする。これを上手く行うことができれば、間違いなくお互いの意思疎通がスムーズになるでしょう。結果、様々な価値観を持つ人間の集まりだけれども、それぞれの価値観が会社・組織の目的にそれぞれの人にあった形で結びつき、一体的な行動につながる、ということが実現できそうな気がします。“気がする”というのは、実際に試してみた訳でもないからそう書くのですが、大きな可能性を感じているところです。
「人間関係」それは、経営者として最も大事なことの一つであり、悩みが絶えることのない問題の一つです。社員一人一人の顔が見える中小企業であればなおさらです。それを改善、さらには問題となっていることを解決するための方法があると聴けば、興味を持たずにはいられません。ただ、大事なのはこういった方法があると学ぶことだけでなく、実際の自分自身の人間関係において実践していくことでしょう。経営者とすれば、その会社や組織の人間関係を改善あるいは解決し、事業の維持発展、社員やその家族の幸せの実現につなげてこそ、学んだ意味があります。いきなり会社で試すという選択肢もあるでしょうが、まずは、自分の家庭の中で用いてみる(奥さんとの人間関係を改善(笑))ことからスタートしてみようかと考えています。最後になりましたが、ご紹介頂いた川中さんに改めてお礼申し上げます。