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3Sの現場見学を通じて新しい社風・風土を生みだす~社員全員で見て学ぶことの重要性~

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2013年5月2日、5月7日と、島根県松江市の(有)樋野電機工業さんの工場見学をさせて頂きました。目的は、同社の工場における「3S(整理・整頓・清掃)」の実践状況を見学させて頂き、当社の機材倉庫の改善の参考にさせて頂くためです。5月2日にまず私が一人で見学させて頂き、続いて5月7日は、当社の現場業務を担当する職員全員を同行し、改めて工場を見学させて頂きました。お忙しい中、急なお願いにも関わらず丁寧に対応して頂いた、同社の松坂社長に改めてお礼を申し上げます。

元々、島根同友会松江支部の4月例会での松坂社長の報告を伺ったことがきっかけでした。今回、実際に現場を見せて頂くことで、私自身、さらに社員も大いに気づきを得られたと考えています。当社における取り組みは緒に付いたばかりですが、今回の見学をきっかけに、取り組みが加速することを期待しています。今回の見学とその後の社内の動き等から、感じたことをまとめてみます。

工場見学の様子

1.「守ることを決めて、決めたことを守る」ということ

私が当社の倉庫の3Sに取り組みたいと考えたのは、単純ですが、現状の倉庫がキレイではないからです。具体的な問題点としては、第一に、様々なモノ(道具、資材、備品等)が乱雑になっているという整理整頓の乱れです。そして、もう一つは、長年にわたって蓄積された“チリ”や土ぼこりなどが目につくという、清掃が行き届いていないという側面です。道具等の整理については、年度初めにある程度きれいになるのですが、仕事が重なってくると段々と乱雑になる、ということの繰り返しです。

社員もそのことには問題意識を持っており、この数年間で少しずつ改善が図られてきました。しかし、置き場所が決まっていない、決めたところにモノが戻らない、といった運用上の課題はまだまだ残っていました。もちろん、限られたスペースの中で、毎年様々な仕事で色々な資材が発生したり、新たな道具を準備したりする状況に対応する訳ですから、難しい面はありますし、忙しい中でお客様対応や工期・納期を優先すれば、掃除や片づけが後回しになりがちなのは分かります。しかし、それを言いだすと結局いつまでもきれいになりません。この現状はどこかで打破しなければならない、と感じていた時、同友会の例会で松坂社長のお話を聴き、地元の、ごく近くにいいお手本があることを教えて頂きました。大変いい機会を頂いたと感謝しています。

そして、3Sを実践しようと勉強する中で、3Sとは、単に職場をきれいにすることではない、ということを知り、ますます取り組みの重要性を感じています。よく言われていることのようですが、3Sとは、「守ることを決めて、決めたことを守る」という社風づくりだということ。その徹底を通じて効率的な生産活動が可能な組織ができてくる。職場の乱れとは、つまり、当社にそういった社風・風土が欠けていることの現れです。そして問題は、そのことによって、生産活動が少なからず非効率になっている。このことを認識し、また、3Sの実践を通じて何を目指すのか、それを経営者がしっかりと認識し、実際に取り組みを進める社員にしっかりと説明した上で、スタートさせることが大事だと考えています。

2.全員で見学し、共有することの重要性~共通のベース~

今回、樋野電機工業さんの現場を見学させて頂いてよかったと思うのは、3Sの対象としている倉庫を主に使用している、当社「工務部のメンバー全員」で見学出来たことです。私は、当初、工務部を所管してもらっている常務と、あと数人行ける人が行けばいいと考えていました。しかし、常務から、見学に伺った当日の朝、「今日なら全員行けるから、今からお願いできないか樋野電機さんに頼んでみてもらえないか?」と提案されました。どうかとは思いましたが、松坂社長に急遽お願いし、対応して頂いた、という経緯があります。松坂社長には無理をお願いし、大変お手数をおかけ致しました。

しかし、この「全員で見学する」ということが、非常に重要なことだった訳です。それは、「同じ時間を共有した」ということです。同じ時に、同じものを見て、同じ話を聴く、ということは、後々、その時の話や見たものを参考に、自分達の取り組みを検討しようとするとき、共通のベースがあることを意味します。共通のベースがあるから、共通認識を持ちやすいし、考えが違ったとしても、なぜ違うのか、どこに着目したのか、といったことも良く分かります。結果的に、検討のための議論が活性化し、いい成果がまとまりやすくなるでしょう。なにより、見学先の取り組みを目標にしようとするとき、そのゴールが具体的なイメージとして描きやすい、ということが大きなメリットではないでしょうか。

そしてもう一つは、同じものを見ても感じ方は人それぞれだということ。見学終了後、質疑応答の時間をとって頂き、その最後に、お礼も兼ねて参加したメンバーそれぞれが最も興味を持った点・感心した点について発表しました。当たり前ですが、その着目点は人それぞれでした。当然、3Sの徹底した実践に関するものが多かったですが、それ以外でも安全管理面であったり、就業環境であったりします。そういう、様々な視点や感じ方があることを、お互いが認識し合えた、という点も大きな収穫では無かったかと考えています。また、小さな会社だからこそ、全員で見に行ける訳です。そういった中小企業ならではの特性も、上手く使って行くべきだと感じる機会になりました。

3.近くにいいお手本があるということ~切磋琢磨する仲間の重要性~

実際、この見学(午前中)を終えて社内に戻ってから、社内のあちこちで倉庫の改善について話をする姿がみられた(私が午後から不在にしていたので聞いた話です)そうです。これも、みんなで見学に行っているからこそでしょう。そして、先般、改善計画について部内で話し合いが行われ、具体的な取り組みに向けて動き出しました。社員のみなさんのスピード感ある対応に、感謝しています。まさに「百聞は一見にしかず」。実際に見て感じることの重要性を実感するところです。

このことについて、さらに突き詰めれば、“近くにいいお手本があった”ことがポイントだったと思います。車で10分ぐらいで行ける距離だったからこそ、全員で直ぐに行けた訳です。東京、大阪などであれば、そう簡単にはいきません。もちろん、県外の先進企業を視察する機会をつくることも大事なことですが、どうしても費用面や時間的制約は免れません。しかし、近くに同じような企業があれば、そのハードルは一気に下がります。

そう考えると、同じ目的に向って近くに切磋琢磨する仲間が近くにいる、ということが大変大事なことだということを、改めて感じます。事実、樋野電機工業さんも、3Sに取り組む地元数社でお互いの状況を見学し合ったりする活動をされているそうです。いい意味でお互いに競争し合うことで、お互いが伸びていく。そのことで、ひいては地域全体が良くなっていく。今回は、中小企業家同友会の例会をきっかけに見学の機会を得た訳ですが、そういった活動も同友会活動の趣旨に沿ったものであり、狙いとしているところなのでしょう。3Sだけでなく、様々な改善・改革に向けた取り組みを推進するにあたり、より幅広い示唆も頂けた見学となりました。

見学終了後、全員で質疑・意見交換(左:松坂社長)

今回、改めて感じたのは、社長だけが学ぶステップから、会社全体で学んでいくステップに少しずつ軸足を移していくことが必要だということです。もちろん、経営者が学びを止めてはなりませんし、むしろ、さらに深めていかなければなりません。しかし、社長だけが学んで頭でっかちになるのではなく、社員一人一人が自分の知らない世界を見て、聴いて、自分の仕事に活かしていく。そういう場面を準備していくことも経営者の大事な仕事の一つだと感じます。実際のところ、当社においても、すぐに劇的な改善がなされることを期待している訳ではありません。樋野電機工業さんでもおよそ15年をかけて、現在の状況に達しているとのことです。当社においても時間はかかるでしょう。しかし、先行して取り組まれている事例を実際に見せてもらうことで、その時間を短縮することはできる。それが今回の一番の気づきだと考えています。今後も、身近な会社の素晴らしい取組みを、社員と一緒に学ばせてもらう場をつくって行きたいと考えています。

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