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2013ベンチャーキッズスクール~伝わるか伝わらないかは、伝えてみないと分からない~

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2013年9月1日、特定非営利活動法人 山陰MOREが運営する、「2013年度ベンチャーキッズスクール」の講師を務めさせて頂きました。山陰MOREは、ボランティア活動を通じて山陰各地で地域貢献の輪を広げたいとの想いで活動されているNPO法人です。この「ベンチャーキッズスクール」は、平成19年度から島根県と島根県信用保証協会が実施している助成事業で、“地域の将来を担う子供たちは地域で育てる”という視点に立ち、次代を担う児童生徒を対象に起業家精神を養うことを目的としています。山陰MOREは、平成24年度から松江地域における受託団体となり、小学校4~6年生を対象とし、スクールの運営に携わられています。計8回シリーズで開催されるスクールの中で1時間弱の時間を頂き、当社の仕事の紹介と、私が頂いたテーマ「何のために会社を経営するのか」、「社長の心得」について話をさせて頂きました。小学生の子供に伝えるには非常に難しいテーマでしたが、この準備と講義を通じて私自身が学ぶことが多数ありました。そのことを少しまとめておきます。

ベンチャーキッズスクールで説明する

1.伝わるか伝わらないかは、伝えてみないと分からない

今回私が頂いたテーマは、「何のために会社を経営するのか」、「社長の心得」という内容。社長になってわずか5年目の私が担当するにはおこがましいテーマですが、せっかくの機会ですので、取り組ませて頂きました。今回の受講者は、小学校4年生から6年生。おそらく、この年齢の子ども達にまじめに話をしたのは、私にとって初めての経験でした。その意味でも、大変貴重な機会を頂いたと感謝しています。

このスクールには、“起業家精神を養う”ことを目的とし、自分達が作った商品を販売するという実習が組みこまれています。まさに、自分達が模擬社長となって“商売”を経験してみる、というのがスクールの趣旨の一つです。であれば、その前提として、なぜ商売をするのか?、社長はどういう気持で臨まなければならないのか?、といった基本的な部分を学んでおくことは意味があります。ただ、「小学生にそれがどこまで理解できるのか」ということです。言ってもどうせ解らないんじゃないのか?、そういう思いが頭をよぎります。

講義を終えてみて、この疑問に対する私の答えは、「どうせ小学生だから分からないだろう、と決めつけるのではなく、“勇気を持って伝えてみる”ことが大切」ということです。講義の前に、山陰MOREの柳楽理事長は、「子どもたちは、一見分かってない風に見えても、結構本質をつかんでいたりするんですよ。振り返りシートを見てびっくりすることがあります。」と話されました。このスクールでは、各回の受講後に“振り返りシート”を作成し、参加者から感想や気づきを書いてもらっているそうです。私の話がどのように伝わったか、とても楽しみにしています。

その振り返りシートの話から分かるのは、「伝わるか伝わらないかは、伝えてみないと分からない。」ということ。これは経営でも一緒です。社長の方針や想いを社員に伝える。分かってくれなさそうな社員が居たとして、どうせ伝わらないと最初からあきらめるのではなく、勇気を持って伝えてみる。そこで伝わらなければ、また伝え方を考える。そのことを改めて気づかせて頂く、よい機会を頂いたと感謝しています。

2.はじめから目的のために仕事ができるのは起業家の特権

今回、「何のために経営するのか?」というテーマについて話をする際に、冒頭、「なぜ働くのか?なぜ働くと思う?」と、受講生に問いかけてみました。一人、勇気持って回答してくれました。答えは、「生活の為にお金がいるから」。もちろん正解の一つです。しかし、私が伝えるべきと考えたのは、「事情ではなく、目的のために働く」ということです。お金が必要だから、家族を養うため、など、なにか“事情”があって働く、という状態から、人を幸せにするため、世の中を良くするため、といった“目的”のために働く、という考え方を持って欲しいと思ったからです。そのことが、人生、そして仕事を豊かなものにしていく。だから、将来の社長を目指すみなさんも、「事情」があって経営するのではなく、「目的」を持って経営してもらいたい、と説明したかった訳です。

しかし、その資料をつくりながら、その感覚は、サラリーマンから後継社長になった私の感覚でしかないのではないか、という思いがよぎるようになりました。今回は、あくまで“起業家”を育成しようとするスクールです。同友会などで知り合った私の回りの起業家(創業者)の方々の多くは、最初から目的があって起業しています。事情があって起業する方の中には居るかもしれませんが、そもそも、起業というものは「やりたいことがあるから起業する」のであって、そういう人たちは、そもそも“事情”にはあまり捉われていません。そこで気が付くのは、だからこそ本事業の目的にも示されている「起業家精神を養う」ことが、とても大事なのではないかということです。

「起業家精神を養う」というのは、実際に起業する人を育てることだけでなく、夢を持つこと、新しいことに挑戦する、そして、目的を持って生きる、という次世代の子どもたちを育てるということ。そういう生き方の先に、選択肢の一つとして起業がある。そして起業の魅力は、「最初から目的のために仕事ができる」という環境を得られること。それは起業家の特権。このスクール全体を通じて、そのことを伝え、理解してもらえることが出来れば、さらに意義のある取り組みとなるのではないかと振り返っています。

3.結論は、『みなさんが「立派に成長する」ということ』

起業した企業がその後どうなっているかを調べたあるデータによると、起業後1年以内に3割が廃業、起業後3年以内に7割が廃業、起業後10年以内に9割が廃業、という結果が得られた、という話を聞いたことがあります。出典が定かではありませんが、中小企業庁など公的な機関の調査だったと思います。

今回スクールに参加した子どもたち全員が将来起業したとしても、10年後生き残るのは10人中1名。彼らが成長した頃は更に厳しい時代となり、10年で20人中1名ぐらいの確率になっているかもしれません。それだけ現実は厳しいということ。このデータについて講義の中で紹介したのですが、それは当然ながら事業経営が厳しいものだと知ってほしかったからですが、もう一つ、だからこそ、準備をして欲しいと伝えたかったからです。今回の対象者は小学生。本当に起業するにしても、その時期が到来するまでにはたくさん時間があります。その間に、必要なことを身に付けて行って欲しい。そうすれば、きっと明るい将来が待っている。起業家として起業しなくても、尊敬される、立派な一人の大人として生きていくことが出来ると考えています。

では、そのために何を伝えるか。私は、「善きことを想い、善きことを実行する」という話をさせて頂きました。困っている人を助ける、親・兄弟を大事にする。一生懸命勉強する、など当たり前のことをきちんとするということ。聴いてみればあたり前だけど、中々できないこと。大人でも出来ていないこと。でも、ひいてはそれが自分のためになる。因果応報を信じ、感謝の気持ちを持つ。間違った考え方に基づいて経営のテクニックを学んでも、結果的に彼らの人生が素晴らしいものになるとは思えないし、仮に彼らが社長なったとして、その周りに集まる社員の幸せにもつながらない。

だから、今回の私の話の結論は、『みなさんが「立派に成長する」ということ』、としました。みなさんが立派な社長になれば、会社も立派になる。立派な社長の元には、立派な社員が集まり、成長する。立派な社員のもとで、立派な後輩が育つ。立派な後輩がまた、社長と会社を育ててくれる。これは、私自身への問いかけでもあります。この講義を通じて、私自身の気づきもたくさん頂きました。子どもたちに説明した内容に恥じないよう、今後とも努力していきたいと考えています。

受講生と記念撮影

山陰MOREは、「山陰初、パラレルキャリアを推進する団体」を標榜して活動されています。この“パラレルキャリア”という言葉。私もそれまで知らなかったのですが、仕事とプライベート、そして第3のコミュニティ(ボランティア活動等)に参加することで、視野や人脈を広げたり様々な経験を積み、それをまた本業に活かしたり、新たな生きがいを見つけたりすることをいうようです。また、本業で身に付けたスキルを社会貢献活動等の場で発揮し、活動の充実を図るという視点もあるようです。この“スキルの活用”という観点、実は以前から自然に行われてきたように感じます。自治会やPTAなどの活動の場で、事務能力に優れた方、現場に強い方、それぞれが得意分野を活かして活動を進める、といった事がよくあります。しかし、パラレルキャリアが提唱するのは、もう少し踏み込んで、第3のコミュニティに“自分の居場所”を見つけ、人生の充実を図るということ。仕事以外にこれと言って熱中することが無い私としては、別世界の感もありますし、そういった生き方が出来る人がどのように考えているのか、興味もあります。せっかく頂いたご縁に感謝し、自分自身の仕事以外の人生をどう生きるか、考えてみるきっかけにさせて頂きたいと考えています。

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