2014年6月25日(水)、当社も加入している(一社)島根県測量設計業協会及び中国地質調査業協会島根県支部の共催で、県内の土木系コースを有する高等学校(松江工業、松江農林、出雲農林、益田翔陽)の進路担当者の先生方との意見交換会が開催されました。業界団体としての開催は初の試みで、測量・設計業務、地質調査業務における技術力の維持・確保に向けた後継人材育成、県内就職希望者の確保と雇用拡大に向けた取り組みの一環として企画、開催されたものです。参加者は、前述の各高担当者と、島根県測量設計業協会の役員、及び中国地質調査業協会島根県支部の役員です。私は、中国地質調査業協会島根県支部の役員として参加させて頂きました。大変有意義な会となりましたので、その様子をまとめておきます。
1.土木・建設に関わる仕事に対するイメージの払しょく
今回の意見交換会を通じて改めて感じたことは、土木、そして建設関連業に関するイメージを変えていくことの重要性です。
公共事業不要論等に代表される土木・建設関連業会に対する負のイメージが定着してからずいぶんと長い時間が経つように感じます。色々な考え方があると思いますので、公共事業の批判もあってしかるべきでしょうし、中には不適切な事業もあるかもしれません。しかし、ひとたび公共事業不要論のようなものが世論を席巻すると、1か0かという議論になりがちで、公共事業・建設業=悪・利権、的なイメージで語られる場面に出くわすのは残念なことです。
しかし、全国的にみれば、東日本大震災をはじめとした頻発する大規模災害を目の当たりにし、我が国の自然特性を踏まえた土木・建設事業の必要性を改めて考えなければならないでしょうし、島根県内では昨年の県西部豪雨災害などを通じ、土木技術や建設業の重要性や地域への貢献などが再認識され、受け止めに変化が出てきたようにも感じます。
今回改めて気づいたのは、土木・建設関連業に関する悪いイメージが定着する事に対し、残念な気持ちで過ごしてきたのは我々関連業界の者だけでなく、それに関わる技術を教える学校の教員のみなさんも同じだったということです。自分の教えている技術を活かす職場が世間から悪く言われては、教員の側も士気にかかわります。「そうじゃやないだろう」という思いは一緒でした。そういう気持を共有し、お互いの立場で改善して行かなければならないという共通認識を持つことができたのは、とてもよかったと考えています。
2.離職率の低い業界~定年まで勤められる仕事~
今回の意見交換会で明らかになったことの一つとして、県内において測量設計業・地質調査業に就職した高校生の離職率が低い、ということがあります。
現在、島根県内の高卒新卒者の3年間離職率が40%を超えており、非常に問題視されています。しかし、測量設計業・地質調査業に限って言えば、全く情勢は異なります。測量設計業協会の調査によると、過去5年間の会員企業における高卒者の採用数28名のうち、離職した者の数は0名でした。また、松江工業高校の調査によると、過去3年間の同校卒業生の離職率(平成26年5月1日時点)は6.2%だったという結果が出ています。我々の仕事に限りませんが、一人前になるまでに時間がかかる職種というものがあります。長年の経験、先輩からの技術指導・継承、そういったものが必要な仕事です。だからこそ、長く勤めてもらいたい訳ですが、データが示すように実際に長く勤める事が出来ているという実績は、業界としての大きなPRになると考えています。
近年、高等学校の卒業生の就職先の選定に際し、親の意向が大きく反映される、という実態があるそうです。本人と学校は前向きでも、最終的に親が反対して就職先が変更になる。そんな事例が少なからずあるそうです。親とすれば、子どもにいい条件の職場に就職してもらいたいというのは当然でしょう。その時に、前述の土木・建設業界に対する“イメージ”が影響を与える、ということも含みおかなければなりません。だからこそ、業界全体のイメージアップが必要ですし、それに加えて、「離職率が低い」というデータも定着を推進していくための重要な要素として今後とも努力していきたいと考えています。
3.地元高校出身者が活躍する姿をPRしていく
今回、主催者側の協会会員企業に所属する、計4名の各高卒業生からプレゼンテーションを行いました。測量設計業、そして地質調査業の仕事の内容や面白さ等について、短時間で説明を行いました。各高の先生方にとっては周知の内容であったと思いますが、改めてプレゼンテーションしてもらいました。次のステップとしては業界のPRのために各高に出向いて説明を行うことを想定しています。
各高の卒業生が、自信を持って自分達の仕事の必要性や意義を語る。今回、当社の社員は担当していませんでしたが、次の機会には、当社の社員たちにもこういった機会を頂き、ぜひ自分の仕事について話をしてもらいたいと感じました。
参加した先生方からも、社長や幹部社員の方の話も大事だが、年の近い先輩から会社のことについて率直な意見を聴けることも大事だ、という意見を伺いました。あわせて、仕事の現場を実際に見てみる中で、その会社の雰囲気を感じることで、入社意欲を高めていくことが大事だとの指摘を頂いています。そのためにも、業界全体として定期的な新卒採用を継続し、高校生からみた身近な先輩が各社に居て、常に話を聴けるような環境づくりが求められるのでしょう。
なにより、自分の仕事について、社内外の人に自信を持って紹介、説明できるということ。働いていることが誇りに思えるということ。そういう業界、そしてその中でも特徴を持って世の中に必要とされる会社を目指していく。そのことの必要性を改めて認識させて頂く機会となりました。
島根県測量設計業協会と中国地質調査業協会島根県支部、この2つの協会(入会企業はほぼ重複しています)の総雇用者数は約2,000名、うち1/4の約500名が県内の土木系コースを有する高等学校の出身者です。当社でも、松江工業高校をはじめとした県内高等学校卒業生が頑張ってくれています。さらに、当社では次年度、高卒の新卒採用を予定しています。そのような中で、前述のような話題の他、各高の状況や進路状況について確認できましたし、我々の業界が地元の人財を求めていることを強くPR出来たことの意義は大きかったと考えています。今後とも我々の業界が地元高校卒業生の雇用の受け皿の一つになり、共に地域を担っていくことができるよう、努力していきたいと考えています。