2014年3月7日、まちエネ大学山陰スクールの第4回講座(成果発表会)が開催されました。まちエネ大学を通じて再エネを活用する事業を検討した6つのチームがそのプランを発表し、私がリーダーを務めさせて頂いたチームも発表する機会を頂きました。各チームとも荒削りなところはありますが、それぞれの想いをしっかり発表出来たのではないかと思います。あとは、どう具体化していくか。一歩一歩進めていくしかありませんが、このスクールの学びを実現につなげられるよう、取り組んで行きたいと考えています。まちエネ大学の総括を兼ねてまとめてみます。
1.まちエネ大学で学んだ仲間からのエールで次のステップへ
成果発表会では、私がリーダーを務めた「有福温泉地熱発電+カスケード利用支援プロジェクト」がトップバッターとして発表させて頂きました。有福温泉は1360年前から47℃の高温泉が地上に湧き出ている貴重な温泉地です。その地下深部には、もっと高温の熱源があることが分かって来ています。その熱源(熱水)を新たに開発して地熱発電(温泉発電)を行い、さらに発電後の熱水を多様な形で有効活用しよう、というのがプロジェクト概要です。平成24年度から具体的な検討を始めた有福温泉における地熱資源開発。それを、まちづくり・地域活性化としてどのような形にまとめあげるのか。この“まちエネ大学”に参加させて頂いたおかげで、ある程度の道筋が掴めたように感じています。
今回の発表を踏まえて、まちエネ大学山陰スクールで学んだみなさんから、プロジェクトに対する様々な意見を頂きました。限られた時間での発表でしたので、考えている内容のごく一部を説明したに過ぎませんが、力強いエールをたくさん頂き、力をもらいました。実際のところ、実現に向けては様々なハードルがありますが、参加者から頂いたメッセージカードには、「有福温泉をなんとかしたい!という熱意を感じた」というコメントを多数頂き、“私が話した事が伝わっている”と実感させてもらい嬉しく思っています。
次のステップは、まちエネ大学でつながったみなさんと、講座の外でもつながっていくことが必要だと考えています。実際に、チームメンバーとなって下さった方(他地域で再生可能エネルギーに取り組まれています)のグループに、有福温泉に視察に来て頂くという計画も検討しています。そして、他地域で市民主体の再生可能エネルギー活用に取り組む方々が、有福の地域住民の方々とつながっていくことで、さらに事業の具体化に向けた想いが高まっていくのではないかと感じています。
2.資源エネルギー庁事業の並行利用でビジネスモデルを構築
有福温泉を舞台にした地熱資源活用によるまちづくりに関して、このまちエネ大学でのプラン策定と並行して、平成25年度、同じく資源エネルギー庁が所管する「再生可能エネルギー発電事業を通じた地域活性化モデル開発支援調査事業」を活用した調査も実施しています。
この事業は、再生可能エネルギーを活用した地域活性化の実現に向けて、事業計画策定や資金調達など、固定価格買取制度を活用した自立的な事業の計画策定を支援することを目的に、調査を行う事業者へ調査費を補助して頂けるものです。再生可能エネルギーを軸に据えた地域活性化策は、地域における新しい取り組みとして夢があり、全国各地で具体化が進んでいます。その一方、実際に事業として成り立つのかどうかは、個々の事業を取り巻く環境によって異なります。夢や熱意はあっても、事業性がネックになるケースも多々あるようです。
まちエネ大学は、市民レベルから再生可能エネルギーの有効活用策を発掘し、事業化につなげて行こうとするものですが、実際に事業として動かしていくためには、ハードルが多種あります。事業リスクの分析、収支計画、資金調達、など、検討事項は多岐にわたります。私も経営者ですので、日常的な仕事を通じて一とおりのことに携わっているはずですが、全く経験のない事業を一から興すことは、また別物と感じます。そう言った時に、こういった事業の可能性調査を国から支援して頂けるのは、大変ありがたいことです。
2014年3月17日(月)、この事業の報告会を兼ねたセミナーが大阪で開催され、今年度全国で実施された本事業の39の調査についてパネル展示が行われました。有福温泉での調査成果もそこで展示し、来場者の方々に見て頂くことができました。情報発信の場としても貴重だったと考えています。今後とも、あらゆるチャンネルを活用し、島根県江津市の有福温泉でこのような事業に取り組んでいることを地道に発信していきたいと考えています。
3.有福温泉町での地元説明会~エネルギーをキーワードにまちづくりを~
まちエネ大学終了後の2014年3月25日(火)、有福温泉町まちづくり協議会の主催により、まちエネ大学の成果と、平成24年度の地熱資源開発調査の結果を地域住民のみなさんに説明する勉強会が開催されました。有福温泉町の地域住民のみなさん約20名の参加があり、まちエネ大学を通じて策定したビジネスプランとそれが地域にもたらす活性化、そして、地熱資源開発調査を経て得られた有福温泉町の地熱ポテンシャルについて説明させて頂きました。
説明終了後の質疑、意見交換の場では、様々な指摘や質問を頂きました。地熱資源を活用したまちづくりに関心を持っている方が参加して頂いていることもありますが、前向きな質問や意見が多かったことが印象的でした。一方で、既存温泉への影響についてはいくつかの指摘がありました。事業化により既存の温泉に影響を与えないのか、与えないという前提でスタートしたとしても、もし影響が出たらどうするのか、といった懸念です。地域の方からすれば当然の想いでしょう。その懸念にどのように対処していくのか、技術的な検証だけでなく、引き続き丁寧な説明を継続していくことが必要だと認識しています。
いずれにしても、今回、「エネルギー」がキーワードとなったことにより、これまでの「温泉」を基軸にした地域の活性化から一歩離れた視点でみることが出来たのが大きかったのではないかと感じます。再生可能エネルギーには夢があります。地域を変えてくれるのではないかという期待。それを感じる勉強会となりました。山陰スクールのプレイベントで「エネルギーが人と人とをつなげるコミュニケーションツールになる」という参加者の方の意見がありましたが、まさに、そのことを実感する思いがしています。
まちエネ大学は、「再生可能エネルギーを活用した、地域での新しいビジネス創出のための人材育成事業」と定義されています。そして、プレイベントの際に、「楽しく学ぶ、つながりを大事にする」、といった視点も強調されていました。今回の山陰スクールには、山陰地域の出身の方だけでなく、広島、兵庫など、様々な地域の方も参加されており、この取り組みがなければ知り合うことのなかった方々とつながりを持つことが出来ました。まちエネ大学は、来年度も何らかの形で開催されていくようです。このつながりを引き続き広げることで、さらなる未来に向かっていきたいと考えています。