島根県中小企業家同友会

島根同友会 経営指針成文化セミナー成果発表会 「自社の存在意義の明確化」と「社員との関係性」

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2013年2月24日(日)、島根同友会の経営指針成文化セミナー成果発表会が開催されました。

このセミナーは、島根同友会会員企業を対象に、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を体系的に策定するために実施するもので、参加者は、およそ5カ月間をかけて自社の経営指針をつくり上げます。成果発表会は、その集大成として各社の経営指針を発表するとともに、その経営指針に基づいた経営を実践していくためのキックオフの場でもあります。各社の経営者、又はそれに準ずる方々が自社の将来をかけて策定する経営指針。その策定の経緯から成果までを聴くことができるこの成果発表会は、同友会活動の中でも最も学びの深い時間の一つと考えています。今回の発表会を通じて感じたことを整理しておきます。

経営指針成文化セミナー発表会

1.「自社の存在意義の明確化」が経営指針のスタート

今回の成果発表会では、計6名の受講者から発表がありました。自動車販売・整備、建設業、水産加工品販売、システム開発、菓子製造、衣料品製造、と業種は多種多様。起業された方もいるし、後継者の方もいる。さまざまな経緯、立場、環境の中でそれぞれの経営指針を発表されました。

この中で多くの方が重要視されていたこと。それは「自社の存在意義の明確化」という項目です。なぜ、他社では無く自社でなければならないのか、ということ。経営指針の策定には様々なポイントがありますが、特に重要度の高い事項の一つだと私自身も感じています。ほぼ全ての中小企業には同業者が存在します。自らの回りにライバルとして存在しているケースも多々あるでしょう。そんな中でお客さまに自社を選んで頂くためには、他社で無なく自社でなければならない“何か”が必要となります。いわゆる「強み」と呼ばれる部分がそれにあたるでしょうし、その企業らしさ、企業風土、といったものもそうかもしれません。いずれにしても、経営者がそのことを明確化して認識し、経営理念、経営方針、そして具体的な経営計画に反映され、着実に実践されてこそ、中小企業の発展があると考えて間違いありません。

今回、受講生のみなさんがそれぞれに自社の存在意義の明確化に時間を割かれ、取り組まれました。このことは、経営指針成文化セミナーの趣旨・ねらいがより徹底されてきたということでもあるし、島根において“同友会らしい経営指針づくり”が進み、レベルアップが図られている、ということを示していると考えています。聴講する側からすれば、それぞれの経営者が自社の存在意義をどのように捉えていらっしゃるかを学ぶことが勉強になります。大変貴重な機会を頂いたし、次年度以降のセミナーにも大いに期待したいというというのが実感です。

2.中小企業経営の課題は「社員との関係性」にある

今回の成果発表会の発表を通じて感じたことの一つに、「社員との関係性」というキーワードがあります。

受講生の一人である㈱プラチナの内田社長は、「自社の課題を抽出したらほとんど社員のことだった」と述べられました。後述するソーイングクトの福田さんも同様、「いかに従業員と一緒にやっていくのか」という課題はほとんどの受講生から出ています。それほどに、中小企業経営者と従業員との関係性というのは重要性が高く、だからこそ、これが上手く行っている会社は事業も上手く行っている。そして、事業がうまく行けば従業員と経営者との関係も更によくなる、といういい循環が出来上がるのでしょう。当然ながら、これは、従業員の顔色を伺うとか、従業員の言うとおりにするとか、そういったレベルの話ではありません。“経営者と従業員”という関係には違いないが、一緒に会社・事業を盛りたてていくパートナーとしての関係にいかに到達するのか。そういう認識をまず経営者が持つことから始まるのだろうと感じます。

同じようなこととして、「経営指針の浸透」という課題もよく指摘されます。経営指針によって会社の方向性を定めても、それが社員に浸透しなければ会社がうまく回って行かない、という問題です。これについての私なりの答えは、社員に「会社が少しずつ変わっている姿を見せ続ける」ということだと理解しています。当社の場合で言えば、社内の清掃を徹底して職場をきれいにする、痛んでいた社屋を改修して使いやすくする、新しいシステムや設備を導入する、新しい職員を採用する、社外の見学者を受け入れる、新しい研修や勉強会に取り組む、等々、少しずつ会社が前向きな方向へ変わりつつあるということを示し続けてきました。そして、それはいずれも経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)に位置づけた取組み・施策として実施しています。そのことで、社長が本気で取り組もうとしている、文書や口頭では伝わらないことが、自らの職場の目に見える変化によって伝わって行く。それが経営指針を浸透させる、ということの一つの方法ではないかと考えています。

3.経営指針を策定しながら実践する~危機感と将来展望の融合~

今回、受講生のアドバイザーを務めさせて頂く機会を頂きました。私がアドバイスさせて頂いたのは、ソーイングクトの福田圭祐さんです。松江市宍道町で縫製業を営まれていますが、いわゆる下受けから製造メーカーへの脱却を目指し、新たな取り組みを交えながら今回の経営指針を策定されました。

福田さんが、経営指針を策定するにあたり、最も感じたのは「自分と社員との話が全然できていない」ということだったそうです。何とかしなければという想いは持っているが、その気持ちは社員には伝わっていない。そこで彼が取った方策は、「日々の日報を付ける」ということです。フォローアップのミーティングの中で出たアイデアでしたが、すばらしいのは、即座に実践に移されたこと。女性が多い職場であることも考慮し、一人一冊の日報ノートを作り、個別に一日の報告を受け、それに対するコメントや経営者としての考えを書きこんでいく。これを続けることで、最初は不平不満が多く書き連なっていた日報に、徐々に変化が表れ、少しずつ前向きな提案や意欲などができたということです。

これに合わせて、脱下請けに向けた取り組みとしてショップオリジナル衣料の企画製造、さらにはPB商品の企画製造販売、といった領域を手掛けられ、少しずつ実行に移されています。これも、社員が自らの仕事が直接的に喜ばれていることを感じるようにするという効果もあり、より意欲と前向きな気持ちを持てるような取組みとなっています。

今回の福田さんのアドバイザーを務めさせて頂き、改めて感じたのは、「社内をしっかりさせる」ということがまずもって大事だということです。新しい仕事への取り組みも、仕事の見直しも、社内の理解がまず必要です。当社においても改めて見つめ直すべき事項だと感じました。社員とじっくり話をするのは時間とパワーが要ります。しかし、それをおざなりにせず、そこからスタートされた福田さんの取組みには頭が下がります。きっとこの会社はよくなっていくのではないか。アドバイスしながら少しずつ形作られて来た経営指針と、それに伴う実践の様子を聴き、そのように感じます。今後のご検討をお祈りします。

発表するソーイングクト福田さん

私も、昨年度このセミナーに参加して自社の経営指針を策定し、およそ1年間実践を進めてきました。経営指針を策定し、それに基づいて実践を重ねれば、会社は少しずつ変わってくるというのは実感としてあります。実践することが前提です。今回受講の各社が、ぜひ今回の成果を活かし、会社を維持発展させることと期待しています。そして、私自身も負けじと会社を事業を伸ばしていけるよう、さらに努力を重ねたいと考えています。

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