島根県中小企業家同友会

島根同友会 第1回経営指針成文化セミナーフォローアップ検証会~過去を俯瞰し、未来を展望する~

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2014年2月22日(土)、島根同友会の第1回経営指針成文化セミナーフォローアップ検証会が開催されました。この企画は、島根同友会会員企業で経営指針の成文化を実施した企業を対象に、経営指針策定後の実践状況を振り返り、実践に際しての問題点、今後に向けた課題などを報告して頂くものです。経営指針策定の必要性、意義を明確にしていくこと等を期待して実施したもので、島根同友会としては初の試みです。今回、島根同友会において先駆けて経営指針を策定され、実践されてきた5名(5社)の経営者に報告を頂きました。勇気を持って自らの実践経過を報告して頂いた報告者のみなさまに経緯を表するとともに、今回の学びを次につなげていけるよう、報告の一部とその中での私なりの気づきを整理しておきます。

検証会の様子(参加者は報告に聴き入る)

1.自分の会社は経営指針のある会社、だから潰れない~会社の履歴を俯瞰する~

(有)ピー・エム・エーの瀬崎さん(松江支部長)は、赤字が続いて経営環境が厳しくなる時期を経て現在に至っているという報告をされました。本当に厳しい状況の中、「自分の会社は経営指針のある会社だ。だから潰れない。」と言い聞かせて取り組んだと話されます。厳しい中だからこそ、経営指針に立ち返り、経営を立て直した経験を話して頂きました。

当たり前のことですが、「経営指針があれば経営は順風満帆」という訳ではありません。外部環境の変化をはじめ、様々な困難が襲ってくるのは経営指針が有っても無くても同じことでしょう。しかし、その局面にどう立ち向かうのか、という点については、“ベースとなるものが有るか無いか”で大きな違いがあることは間違いありません。瀬崎さんも、最後は「代案があれば言ってくれ、無ければ自分の思い通りにさせてくれ」と社員を説得し、危機を乗り切るための施策を講じられたそうです。「ベースになるものが無ければ経営者もブレてくる」と振り返られます。

現在、経営状態は好転し、次のステップを目指していらっしゃいますが、厳しい時期の経験も踏まえた経営指針の効用として「会社の履歴が分かることがいい」と話されます。長く経営していればいい時期も悪い時期もある。一歩引いて会社の履歴を俯瞰的にみると、それが見えてくる。そうすれば、些細なことでは一喜一憂しなくなる、という訳です。

私は会社を引き継いで5年目ですが、確かに最初の頃はちょっとしたことで一喜一憂していました。今もゼロではありませんが、経営者としての経験がふえるに従って、落ち着きを持ちつつあるように感じます。それは、経験を積んで色々な事が見えてきたこともあると思います。会社の履歴を明らかにするのは、その様々な経験を“見える化”し、ぶれない方向性を信じて進むことの重要性が改めて見えてくる、ということだと理解しています。

2.経営指針がなかったら社員は不幸せになっていたと思う~経営指針で飯が食えるか~

(有)出雲樹脂の今岡さん(出雲支部長)は、「経営指針で飯が食えるか」という命題、すなわち、実際のところ経営指針が有っても無くても業績にはあまり関係がないのではないか、という疑問に対して、明快な回答をされました。それは、「経営指針がなくても、同じぐらいの業績にはなっていたかもしれない。でも、経営指針がないままで同じ業績だったら、社員は不幸せだったと思う。」という言葉です。経営指針の本質を突く説明として、今回の検証会で最も記憶に残っている言葉です。

中小企業の業績は、外部環境によって大きく左右されるという実態があります。これは否定しようがありません。例えば、大手企業の下請けを主体にする企業であれば、発注元の会社の業績や景気の動向に左右されます。だから、会社によっては、売上自体は、経営指針が有っても無くても大きく変わらない、というのも一面の真実でしょう。しかし、同じ売上を確保したとしても、そこで働く社員が幸せに働いているのか。これは大きな論点だし、幸せに働けない会社が将来に向けて発展できるのか、大いに疑問です。

なぜ、今岡さんがそのように話されたのか、それは同社がリーマンショックにおいては大きな影響を受けたことによります。大幅な受注減にもかかわらず、社員を大切にするという経営指針の方針に基づき、人員削減することなく乗り切りられたそうです。さらに仕事が少なくて時間があったので、その間に社員教育などに積極的に取り組まれた。その結果、景気回復後の仕事増にも、既存の要員で上手く対応できたということです。そして、その本当に厳しい局面を全員で共有することを通じ、“危機感の実践的共有”が図られたと振り返られます。そして、会社が自分達を大切にしてくれた、という社員の想いは、会社の次のステップにつながっていることは間違いありません。

3.個人の努力とチームとしてのまとまりで成果をあげていく~小さな会社だからこそ~

(有)山陰エスピープランニングの内田さん(島根同友会理事)は、「中小企業の社員は能力のある人ばかりではない、だから、チームとして取り組んでいくことが必要。」と話されました。中小企業は、個人の努力とチームとしてのまとまりで仕事にあたる、ということです。事実、中小企業の人財は限られます。飛びぬけて優秀な社員がたくさんいる訳ではない。それをフォローするのは理念であり、仕組みであり、組織力であったりするでしょう。それを上手く引き出すのが経営指針であるという訳です。

また、「小さい会社なりに努力していく」ための方策として、“説得力を高める”ことの大切さについて教えて頂きました。例えば、同社では給料については詳細なテーブルや昇給基準などを設定し、社員に開示されています。“小さな会社だから社長が雰囲気で決めているんじゃないか”といったことを社員に思わせない。様々な事に対して根拠を示すことが大切だと語られます。さらには、意識改革できない社員に対する説明用資料としても、経営指針が力を発揮しているということです。

小さい会社だからこそ、経営指針を明確に定め、進むべき方向を明らかにする。小さい会社だからこそ、10年、20年スパンで社員の人生設計に合わせてどうしていくかを考える。それを経営指針という形で社員に伝える。経営指針の策定は、会社の大小は関係ない、社員と経営者との関係をどう捉えるのか、という経営者の思想、考え方によるものなのだと感じたところです。

島根同友会 小田代表理事も報告

私は、平成23年度に経営指針成文化セミナーに参加して自社の経営指針を策定しました。経営指針に基づいた経営に取り組み始めてから2年が経過、4月からは3年目に入ります。3年を過ぎれば、当初3カ年計画で描いた姿がどれだけ実現出来て来ているかを検証するタイミングを迎えます。もちろん、同友会としての検証会があろうが無かろうが、経営者自らが計画の進捗や実践状況をチェックし、さらに改善していくという、いわゆるPDCAを回さなければなりません。しかし、経営者も一人の人間。一人でやっていれば、怠けたくなる気持ち、現実を直視したくない気持との戦いもあります。そんな時に、一つの報告の場として、定期的にこのような機会があれば、自らを律する機会となるし、また、自らの実践状況を報告することで、一緒に経営を学ぶ多くの経営者から様々な助言を受ける機会も得られます。経営指針策定後の節目、節目で自らと自らの会社をさらに高める機会を提供できるよう、継続的にこの検証会を開催していきたいと考えています。

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