私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
59箇所目は、松江市玉湯町の玉造温泉の「玉造国際ホテル」です。訪問日は、2013年10月5日です。
玉造国際ホテルは、島根県を代表する温泉地「玉造温泉」に属する宿泊施設ですが、玉造温泉街からは2kmほど離れた宍道湖湖畔に立地しています。建物はやや古めの印象ですが、大きな特徴があります。それは、玉造温泉で唯一の“宍道湖一望施設”ということです。お風呂は宍道湖湖畔の眺望が楽しめる位置につくられています。この展望浴場は平成22年3月に新築されたとのこと。日帰り入浴も可能ということで、今回入浴してきました。
泉質は、玉造温泉に共通する、ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物泉で、無色透明で入りやすい温泉です。浴室に入ると硫黄臭がありますが、お湯そのものは、ほぼ無臭でした。適応症としては、塩化物泉の特性により、湯冷めしにくく殺菌効果が期待されるとともに、硫酸塩泉の特性により、傷や火傷等の治癒効果や肌の弾力回復や引き締め効果が期待できます。玉造温泉では、美肌効果についても温泉地一体となってPRされており、弱アルカリ性の程よいphが、肌の古い角質をおとしてすべすべの美肌を生みだしていきます。成分総計1.75g/kgという成分量は、湯あたりの心配も少ないため、一回の入浴で繰り返し入浴することもでき、そのことで、さらに適応症の効果を高めることが期待できます。
風呂場内は、岩風呂風の浴槽のみのシンプルな構成です。温度設定も程よく、比較的長い時間ゆっくりと過ごすことが出来ます。当日は、曇りで小雨が舞うあいにくの天候でしたが、晴天時に宍道湖の眺望を眺めながらゆっくりと浸かることができるとなれば、とても魅力的な立地環境です。なお、ホームページによると「まだ露天風呂はありませんが、…」との記述があり、将来的に露天風呂の増設を検討されている様子も伺えます。出来たあかつきには大変魅力的なスポットになると考えられ、地元の一温泉ファンとして、早期の完成を願うところです。
もう一つ魅力的なのは、日帰り入浴の利用料金が大人300円という格安の設定だということです。玉造温泉街にある公共の日帰り温泉施設「ゆーゆ」では、かつて松江市内在住者は300円で入浴できましたが、現在は400円に値上げされています。ゆーゆと比べればシンプルな設備構成ではありますが、玉造温泉のお湯で宍道湖が眺望可能という特徴を踏まえると、非常にお得感があります。訪問したのは土曜日の午後でしたが、一時は貸し切り状態になる等、利用者もさほど多くありません。フロントの方の話では、夕方になると増えてくるというでしたが、近年新設されたということもあり、まだまだ穴場的な位置づけなのかもしれません。
洗い場は6箇所あり、ボディソープ、リンス、コンディショナーが備わっています。洗い場に仕切りはありません。ロッカーは44箇所あり、すべて扉のないタイプで貴重品は入口脇の貴重品ボックスを使う事になります。この辺りは、基本的に宿泊者向けの施設ということで致し方ないところでしょう。一方、洗面台は3箇所でいずれもドライヤーが備えてあり、アメニティも充実しているのも観光ホテルらしく、日帰り入浴ではお得感があります。また、フェイスタオルは脱衣場に備えつけてあるものが利用可能で、本当に手ぶらで入浴が可能です。これも最近では珍しいサービスだと思います。
協和地建コンサルタントは、旧玉湯町時代から玉造温泉の泉源開発に深く関与させて頂いています。松江市(旧玉湯町)が開発した1号泉源(平成3年)、温泉水の安定供給を目指して開発された2号泉源(平成16年)、それぞれの調査・掘削を担わせて頂きました。現在も、この2つの泉源のメンテナンスなどを担当させて頂いています。この松江市所有の2つの温泉源は、玉造温泉街の旅館や公共入浴施設に供給されています。こちらの温泉は独自の泉源を利用されているようですが、同じ玉造のお湯を気軽に、また宍道湖の眺望とセットで楽しめる形で提供して頂いているのは、旅行者だけでなく、幅広い利用者にとって素晴らしいことではないかと感じます。
今回天候がやや悪かったのが残念でした。低い目線で宍道湖の眺望が可能な温泉という特殊性とリーズナブルな価格設定が魅力のこの施設。宍道湖の眺望が可能な温泉は、松江しんじ湖温泉にもありますが、湖面に近い、低い目線で見ることができるのはこちらだけでしょう。ぜひ天候のよいときに再訪してみたいと思います。