この度、「温泉ソムリエ」の認定を受けました。
雑誌などで“温泉資格”として紹介されることもあり、結構認知度がありますが、試験がある訳ではありませんので「温泉ソムリエを名乗っていい」という認定を頂けるという性格のものだと理解しています。
元々、新潟県の妙高高原(妙高市)赤倉温泉で生まれたそうで、現在「温泉ソムリエ協会」という組織が運営されています。東京などで半日間開催されるセミナーを受講するか、1泊2日で実際の温泉地にいく受講セミナーがあり、私は東京で開催されるセミナーを受講(2010年10月5日)し、認定を受けました。
温泉ソムリエは、その名のとおり、ワインの「ソムリエ」に「温泉」をくっつけた造語ですが、温泉の専門知識を持ち、正しい入浴法をアドバイスする「温泉入浴アドバイザー」という位置づけとなっています。そのために、温泉の効能(正確には「適応症」)の見方や正しい入浴の仕方、温泉成分分析表の見方などを勉強します。いままでなんとなく理解していたことを分かりやすく知ることができ、中々有意義な勉強をすることができました。
なによりも“温泉を楽しもう”というのが基本的な姿勢で好感が持てます。やっぱり温泉は楽しくなければいけません。講師は「温泉ソムリエ家元」の遠間和広さんという方で、新潟県の妙高高原赤倉温泉で遠間旅館という温泉宿を経営されています。
半日ではありましたが非常に濃い内容でした。特に時間を割いて話して頂いた事項について簡単にまとめておきます。
1.温泉の効能は、「泉質適応症」をみる
温泉と言えば“効能”があることが普通の風呂とは違うところです。ところで、この効能という言葉は正しくは「適応症」と表現しなければならないそうですが、一般に効能という表現も定着してしまっているので、効能という言葉が使われることが多いそうです。
さて、温泉の効能は、温泉の脱衣場等に掲示してある温泉成分分析表に記載があります。「浴用の適応症」という項目で、さらに「一般的適応症」と「泉質適応症」の2つに分かれています。このうち「泉質適応症」が、その温泉の泉質に由来して効果が期待される症状で、まず着目しておくことが必要な項目だという話でした。
一般的適応症とは、神経痛、筋肉痛、関節痛、・・・・といった症状のことですが、これは温熱効果によるもで、温泉でなくとも(家庭の風呂でも)効果が出るものだそうです。なお、温泉によっては、成分分析表で一般的適応症と泉質適応症を分けずに一緒に書いてある場合もありますので、ある程度予備知識がないと分かりにくい場合があります。その意味でも、こういった勉強をしておくことは意義があります。
ちなみに、温泉地でよく目にしたり耳にしたりする“美肌効果”は病気等の療養ではないので、適応症とは認められておらず、“自称”ということになるそうです。
2.泉質もさることながら入浴法が大事
現在、入浴が原因で死亡したと推定される人の数は、年間15,000人に上るそうです。交通事故の死者数は近年では年間5,000人を切るところまで減っていますので、その数の多さが分かります。しかも、冬場の高齢者がその8割を占めるそうです。
温泉はどうしてもその泉質・効能に目が行きがちですが、泉質もさることながら、入浴方法そのものを正しくしないと、十分な入浴効果も得られないし、そればかりか、下手をすれば生命を危険にさらすことにもなりかねないということです。当たり前だけど、非常に大事な観点だと思います。
そこで、温泉ソムリエでは、温泉の入浴法についても様々な知識と実践が提案されています。入浴前後に1杯ずつの水を飲む、入浴前に心臓の遠くから順に十分な掛け湯をする、「入浴5か条」が定めてられており、これは、温泉が家庭の風呂に比べて成分が濃い(だから体をお湯に慣らすことが大事)ことや、一般に大きな浴槽があって様々な入浴方法が可能なことなどを踏まえたもので、基本的ではあるけれども大変参考になるものです。今後、ぜひ実践してみたいと思っています。
3.温泉に、絶対的に悪いものも良いものもない
講師の遠間さんがセミナー最後におっしゃった言葉です。その時々の体調にあわせて最も適した温泉を活用すればいいという話です。最近では、温泉の“かけ流し”が非常に注目されており、“かけ流しでなければ温泉でない”といった風潮があるのが実際のところです。また、成分的に濃い温泉が良い温泉というイメージもあると思います。
しかし、遠間さんによれば「天下の名湯は湯あたりしやすい」のも確かだそうで、濃い温泉に急に長く入ると湯あたりしてしまい、かえって体調を崩すこともある。皮膚の弱い方の場合は湯ただれをおこす可能性もあるということです。
一方、成分的に所定の含有量を満たさない温泉を「単純温泉」と言いますが、実際成分的には“薄い”ので、効能が低いかのような印象もあります。しかし、成分が無いわけではないので、入浴すれば効果はでる。しかも、薄くてやさしいがゆえに最初から何回も入ることができて、なおかつ湯あたりもしにくいという使いやすさがある、という話です。
そう考えると、温泉はその特性をよく判断し、自分の体調や体質を踏まえて入浴することが重要で、そのための基本的な知識として、温泉ソムリエで勉強することは非常に要点をとらえていると感心します。
最後に、温泉の効能を本格的に得ようと思う場合、本来は2~3週間の連続湯治をしなければならないそうです。しかし、現代社会においてそんなに長期に温泉宿に泊まったりすることは中々難しいですし、日帰り温泉施設であっても大変です。それに代わる手段として、週に1回の入浴を3~6カ月続けることで連続湯治と同じような効果を得ることができるそうです。時間は少しかかりますが、このような「温泉習慣」を付けることを最後に提案され、セミナー終了となりました。
日帰り温泉施設が充実した島根県では決して不可能ではない習慣だと思いますので、私も何とかチャレンジしてみたいと思います。また、今後の温泉めぐりのブログでは温泉ソムリエの名に恥じないよう気を付けて、また楽しみながら書き記したいと考えています。