私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。
今回47箇所目は、島根県吉賀町の「むいかいち温泉 ゆ・ら・ら」です。訪問日は、2012年3月27日です。むいかいち温泉 ゆ・ら・らは、道の駅に併設されて整備された温泉施設で、入浴施設だけでなく、屋内温泉プール、屋外温泉プール(夏期のみ営業)、宿泊施設、レストラン、宴会場、特産品コーナー、などが備わる複合施設です。施設外観は、近代的な意匠が特徴的で内部も斬新な造り、なおかつプールを備えることもあり、かなり大きめの施設となっています。
泉質は、「単純弱放射能泉」です。源泉温度は37.0℃、加温されていますが、加水はされていません。弱放射能泉ですので、成分分析表には、痛風、動脈硬化、高血圧症、など、放射能泉独自の適応症の記載がありますが、循環式が採用されていることもあり、放射能泉としての適応症は残念ながら大きくは期待できないと考えられます。これは津和野温泉(なごみの里)と同様です。一方、単純泉ではありますが、実際の成分としては塩素イオンや、炭酸水素イオンの含有が比較的高く、塩素イオンによる温まりの効果、炭酸水素イオンによる美肌効果も期待できると考えられます。また、ホームページによると湧出量は1000㍑/分の自噴泉となっており、この豊富な湧出量を生かし、屋内プールや屋外プールなどが整備されたのでしょう。
浴室内は、黒基調の石張りに細めの木板を組み合わせた楕円形の天井というコントラストが効いた空間が目を引きます。天井高もあり、広々とした印象を与えます。風呂は長方形で大型の浴槽が窓際に位置し、その一角にジェットバスが備わっています。奥には薬湯もありました。目を引くのは、浴室内中央部に位置する、白っぽいタイル張りのドーム状の構造物。実はミストサウナで、黒基調の屋内に独立した状態で、まるでかまくらのように据え付けてあります。初めての方はちょっとした違和感を覚えるぐらいのインパクトです。また、泉質的に床が滑りやすくなるようで、浴室内外に注意書きがたくさんありました。実際に滑りやすく、注意が必要です。
露天風呂は、近代的な内湯のイメージとは異なり、岩風呂風のつくり、和風庭園の趣をもった空間に仕上がっています。風呂の大きさもかなり大きめで卵型(だ円形)の形状は意外に珍しく、また、かなり深めの風呂になっています。大型の風呂である一方、屋根は一切かかっておらず、ゆとりある敷地と相まって開放感あふれる露天風呂です。
洗い場は10箇所ありましたが、いずれも仕切りが無いタイプ。間隔は比較的広めにとってあります。シャンプー、リンスとボディソープが備えてありました。脱衣場は広々としており、ロッカーの数もかなり多めです。廊下及びロッカーの間隔はやや狭めの印象を受けますが、ロッカー数が多いことも影響しているかもしれません。洗面は4箇所、ドライヤーは6つ備わっていました。洗面の鏡が大きく、高級感があります。また洗面に備えつけられているアメニティが豊富なのことからも高級志向の温泉施設であることが伺えます。なお、施設の下駄箱は100円のリターン式で靴を預け、その下駄箱の鍵と交換でロッカーのカギを受け取る形式です。やや面倒な印象もありますが、確実な入場者管理がなされているとも言えます。
利用料金は大人600円。これで風呂と温泉プール(水着着用)と両方使うことができるため、両方を使用する方にとってはリーズナブルな価格設定です。温泉だけでみても、全体に高級志向で、内湯・外湯の贅沢な造りなど、妥当なところではないでしょうか。また、夏期は屋外プールの営業もされるそうで、友人、家族連れで楽しめるレクリエーションスポットという位置付けも有しているようです。夏場に適温の温泉プールが楽しめるというのは、豊富な湯量を誇るからこそで、温泉の楽しみを広げる贅沢な使い方だと思います。一点気になるのは、施設入口奥に足湯の設備が備わっているのですが、設備の故障か不具合か現在は使用されていないようでした。せっかくのエントランスの雰囲気が少し寂れた印象になってしまっていたのが残念でした。
私が訪れたのは、平日の夕方だったこともあり、かなりの利用者の方がいらっしゃいました。この施設は地域の温泉施設と言う色合いを持つ一方、宿泊機能や道の駅との併設、温泉プールなど、少し広域的な集客も視野に入れた複合施設であり、その意味で多くの利用者があったのかもしれません。
建物は異なりますが、「道の駅むいかいち温泉」が同じ敷地内に立地しています。名称からして“むいかいち温泉”となっていますので、位置づけとしては一体的なものとして扱われているのでしょう。道の駅の建物の方には、トイレや情報コーナーに加えて、農産物等販売施設が併設されており、こちらでみやげものや特産品を購入することができます。中国縦貫自動車道の六日市インターを降りて直ぐの立地であり、島根県内だけでなく、山口、広島方面からの利用者の方も多そうです。島根県東部からは中々利用する機会がありませんが、多様な機能を備えた立派な施設ですので、機会があれば立ち寄ってみて頂きたい施設です。