2013
09.25

先日、株式会社リクルートキャリアがサービス提供する適性検査「SPI3」を受けてみました。採用試験等で実施される検査サービスとして最も活用されているリクルートのSPI。そういったテストがあることは知っていましたが、当社ではこれまで採用そのものがめったになかったので、私もあまり興味を持っていませんでした。しかし、2012年3月に経営指針を策定し、毎年1人以上の新卒採用を継続しようと決めてからは、それなりの選考体制も整えなければと考えていました。このSPIは、多くの経営者の方から有効だと伺い、来年度の新卒採用から活用してみることにしたものです。そして、採用に先立ち、一体どのようなものなのか、私自らが受験(大卒新卒用のテスト)し、試してみました。その結果は大変興味深く、また色々と気づかされることがあったので、この機会にまとめてみます。

結果をすぐにWebで確認

1.自分自身を知る~自分を知ればどうしたらいいかも見えてくる~

私の試験結果をみると、率直に“当たってるな”と感心します。

性格特徴をみると、「行動面」ではあっさりしていてあきらめが早い。思い切りはよいが、軽率になりやすい。「意欲面」では、決断が早く行動が早くてせっかち。「情緒面」では、感情に素直で周囲に影響されやすい。浮ついたところがなく感情を気軽に表さない。「周囲との関わり」では、自分の視点を大切にし、自己中心的。人の話を鵜呑みにせず、人に心開かない、といったところでした。最後は、本当にそのとおりだと思います。

人物イメージでは、「基本的な特徴」として、あまり考え込まずに思い切りよく行動しようとするタイプ。ある程度社交意欲もあり、周囲と如才なく接する場合が多い。「仕事面」では、多くの人と接する仕事もあまり苦にしない方で、考えるよりも行動することが求められる場面で力を発揮することが多い。「困難な場面での特徴」では、総じて置かれた環境を受け入れ用とする方だが、人は人と考えるところがあり、物事が思うように進まない原因を自分以外に求め批判的な言動をとることがある、といったものです。後段の困難な場面での特徴は、社長に就任した当時の自分自身を思い起こさせます。また、“自分の考えに固執したり、意見を押し通そうとすることは少ない”という特徴も記されていたのですが、間違いなく以前は、「意見を押し通すタイプ」だと認識していましたが、このところ多少変わって来ているのかもしれません。

そして、本検査の最終的なアウトプットの一つである「職務適応性」。最も適応性が高かったのは、「自分で考えながら自律的に進める仕事」。適応に努力を要する、とされたのは、「周囲と協調し協力しあって進める仕事」。確かに、中々協力できません。自分一人でやるタイプ(笑)。そして、人に気を配りサポートする仕事も、やや努力を要する、と出ました。その他、やや適応しやすい仕事として、集団を統率する仕事、てきぱきとスピーディーに進める仕事、前例のないことに取り組む仕事、新しい企画やアイデアを生み出す仕事、複雑な問題を考え分析する仕事、といった結果がでました。“集団を統率する仕事”が適応しやすい方に出ていて一安心です。気配りが足りない面はマイナスですが、“社長”の特性としてはそこまで悪くないのではないでしょうか。私のことを外から見ているみなさんはどのように感じられるか、ぜひ感想を伺ってみたいと思います。

2.お互いを知る~他人を知ることでお互いの理解が深まる~

受験してみた感想としては、こうやって自分自身について高い精度で客観的に示してくれるツールというのは、非常にありがたいものだということです。自分自身を知ることで、自分自身に何が足りないのかなどを把握するきっかけになるし、今後どうすべきかを考える上でも有効です。これまで長年にわたって蓄積された莫大なデータに基づいた傾向、という説明も納得性を高めます。むろん、素直に受け入れる人ばかりではないと思いますが。

さらに、当社のような少人数の会社では、採用試験だけでなく、既存の社員がこの試験を受けると有用性が高いように感じます。試験結果をみて自分自身の特性を知るとともに、ある程度の範囲に絞る必要はあるものの、それを社内で共有することにより、お互いの理解を深めるツールとして有効に活用できるのではないでしょうか。リクルートの方によれば、実際にそのような使い方をされる会社もあるそうで、今後考えてみたい使い方の一つです。

毎年採用試験の対象者が多数いる企業では、このSPIを使っていわゆる足きりを行い、基本能力の高い受験者や、募集する職務や自らの組織への適用性が高いと判断された受験者に対して面接を行う、というスタイルが一般的なようです。それはそれで本来の使い方の一つですし、採用後の育成支援にも使えるということですが、これだけのノウハウと膨大なデータに基づき高い精度を持ったこのツール、しかも後述のとおり低価格で使えるだけに、さほど新卒採用が多くない中小企業においても、活用方策が色々あるように感じます。

調査結果の総括表というのがアウトプットなのですが、これは本来は採用側のみが確認し、採否の判断に用いるものです。しかし、この結果そのものを受験した本人がみることで、色々な気づきを得られると思います。これについては、結果出力のオプション機能として、本人へのフィードバック用、育成支援用、面接支援用、にそれぞれカスタマイズして提示するサービスもあり、そういう要望に応えているようです。長年にわたってお客さまのニーズを反映させながら進歩してきたシステムならではと感心するところです。

3.最後は理念と将来像への共感~性格も多様だから活性化する~

このSPI検査、私が改めて言うことでもありませんが、採用試験に関して言えば、あくまで面接の補助的な要素であることは認識しておく必要があるように感じます。確かに、言語・非言語と呼ばれる能力面での評価(話や文章の意味の理解力・数量の処理力や論理的思考力)については、著しく低くないことを求めたいのは当然です。もちろん、大企業であれば、そんなことも言ってはいられない物理的な事情もあるでしょう。

しかし、最終的なアウトプットの一つである「職務適応性」や「組織適応性」、といったところは、あくまでも性格特徴を示した人に“現れやすい特徴”であるという認識が大事だと考えられます。人間だれしも完璧では無いし、色々な面がある。いいところの反面は悪いところにもつながる。なにより、一人一人、それぞれの可能性がある。大事なのは、結果を受け止め、自分自身の生き方にどう反映させていけるか、ということでしょう。

なによりも、その企業がどのような理念を持ち、どのような将来像を目指すのか。性格はどうあれ、そのことについて共感し、一緒にそれを実現したいという熱意を持った人を採用する。少なくとも我々のような中小企業では、その前提を忘れないようにしたいと改めて感じます。そしてもう一つは、性格も多様だから組織が活性化する、ということです。同質な人ばかりの組織が活性化するのか。趣味や仲良しグループなら構わない訳ですが、目指すべき目標を持ち、厳しい外部環境の中であっても、何としても維持・存続していくことが求められる企業経営においては、やはり多種多様な人材を求めたいというのが、私の現在の気持ちです。むしろ、前述の理念と将来像に共感するというコミットメントを前提に、少し変わった人、今までの社内に居ないタイプの人、そういう人材を求めたいと考えています。そういうニーズにも対応できるのが、このSPI検査ではないかと感じます。

まだ本格的に活用したこともない私が偉そうに言うのも筋違いではありますが、道具は使い方次第。とてもいいものだという印象はありますし、だからこそ有効に活用し、今後の企業の発展、その前提となる様々な社員が活躍できるステージづくりに引き続き取り組んでいきたいと考えています。

3種類のオプション報告書

ところで、私がSPI3の採用を決断した要因は、値段が安かったことです。有名な会社が提供するサービスだから、結構な値段がするのかと思いきや、予想よりずいぶん安い印象です。当社が契約した条件だと、基本料金無しで1人あたり4,000円。当面、年間何人も採用試験をする訳ではないので、とてもリーズナブルに感じました。ずいぶんと安いもんだなと思いつつパンフレットを見ると、年間受験者数は163万人!。すごい売上(笑)。それはさておき、リクルートがこの適性検査というサービスを提供し続けて約50年になるそうです。その50年の積み上げが今の成果を生んでいる。その間に蓄積されたデータはものすごい量で、検査結果の精度も高いものがあると自負するのも分かります。やはり継続は力なり、ということでしょう。当社も創業以来50年以上の歴史があります。50年という歴史が積み上げた強みを活かしつつ、精度を高めてよりよいサービスが提供できる会社にしていきたいと考えています。

2013
09.19

2013年10月12日(木)~13(金)にかけて、第41回青年経営者全国交流会in東京が開催されました。昨年は島根で開催されましたが、今年は東京です。1600名を超える全国各地から集まった青年経営者が、初日は16の分科会に分かれ、経営に関する議論を戦わせました。そして、二日目、記念講演として、(株)マザーハウス 代表取締役兼チーフデザイナー 山口絵理子さんの講演がありました。国際援助機関の援助が途上国の貧困解消に本当に役立つのだろうか、という疑問をきっかけに、8年前、24歳の時に単身バングラディッシュに乗り込み、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という志のもと事業を立ち上げた方です。現在では、バングラディッシュを中心にバッグ等の服飾雑貨のデザイン・生産を行い、日本国内及び台湾で15店舗を展開するまでに成長しています。

講演する㈱マザーハウス 山口絵理子さん

既に様々なメディアでも注目されている有名な方のようですが、私は初めて話を伺いました。その内容はあまりに衝撃的で、初日の分科会での議論の記憶を私の頭から吹き消し、自分は何のために経営しているのか、改めて自らに問いかけざるを得ませんでした。その講演の一部、私にとって特に大きく響いた部分をまとめておきます。なお、かいつまんだ内容なので、マザーハウス及び山口絵里子さんについてある程度の知識がないと理解しにくい部分があるかもしれません。予めお断りしておきます。

1.“できるんじゃないか”という可能性にかけている

バングラディッシュの特産品である「ジュート」。主に麻袋などの粗い布製品に利用されている天然繊維素材ですが、原材料としての活用が中心で、その素材の特性にはあまり注目されていなかったそうです。それを見事に付加価値の高い商品としてブランド化しているのがマザーハウス。講演を聴く前の予備知識では、その素材への着目が事業のポイントのように思っていましたが、本質はそんな小さな(いや、大事なのですが)ことではありませんでした。

バングラディッシュには、この特産品であるジュート工場が多数あるそうなのですが、その工場で働くバングラディッシュの労働者は一日1ドル以下の賃金でひたすらその麻袋をつくり続けるそうです。日本など先進国とは全く異なる世界。その光景を目の当たりにした山口さんが感じた疑問。それは、「彼ら・彼女らは、本当に1ドル以下の製品しかつくれないのか?」というものです。もしかしたら、その製品を買っているバイヤー、そしていわゆる先進国側にいる我々がそう決めつけているのではないか。マザーハウスは、その疑問を見事に証明している訳です。

国際機関が途上国へ援助をおこなう根底には、途上国は「かわいそう」だからという発想が根底にあります。工場で大量生産の安い原材料をつくることしかできない人たち、と見下している訳です。山口さんは、「かわいそう」だからではない、「かっこいい、かわいい商品を!」と話されます。この、「決めつけ」「思いこみ」、私たちを取り巻く生活の中でもいくらでもある話です。会社を経営する中でもそうです。あの人はああいう人だ、という決めつけ、思いこみ。「人間には無限の可能性がある!」といった類の話を聴いて分かったような気になるが、またすぐその思い込みと決めつけの世界に戻っていく。それが私・自分自身なのではないかという気になります。“どうせ地方の会社だからこのぐらい”、ではなく、全国で、世界で通用する会社にする!、そう想えないのか、という話です。

といっても、この「可能性にかける」という選択。言葉で言うのは簡単ですが、やり遂げるためには凄まじい想いと熱意、我慢強さ、行動力、希望、人が極限状態を生きる上でのありとあらゆるものが求められるように感じます。私自身も、このブログなどで言葉には書いても実際にはどうなのか。その一部でも、山口さんに匹敵する強い想いを持ったことがあるのか。理屈の前に想いありき。そのことを、自分自身で感じられるようになった時、私自身も経営者としてもう一つ上のステージに進めるのではないか、そんな気持ちにさせて頂くお話でした。

2.「他人と比べてどうか」ということではない

山口さんは、現在の事業に取り組まれたきっかけを、「ただ、やってみたいと思ったから」と話されます。そして、他人と比べてどうかということではない。主観だと。

主観とは、その人一人の考え。だから、一般的感覚からみて普通じゃない(普通、24歳の日本人女性が一人でバングラディッシュにいってバッグを作ろうとは思いません。)と感じる山口さんの行動を理由づけしようとしても意味は無い、ということです。そして、人並みであったり、人と同じであることを求める感覚、特に、「人からどう思われるか」を気にして生きることに対する痛切なメッセージと受け取れます。

もちろん、主観だからといって、何をしてもいい訳ではない。その行動のベースには、善きことであり、正しいことが求められるのはいうまでもありません。山口さんは、それらをベースとした率直な疑問を持ち、行動に移した。途上国への援助が貧困解消に役立っていないのではないかという疑問。途上国の労働者が本当に単純労働しかできないのかという疑問。その疑問を解消するための行動は、行動した後に世間からみれば善きことであり、正しいことだった。だから今、世の中から称賛され、注目されている。ただ、それをやる前には、誰一人賛成しなかった。それでも決断できたのは、主観だから。

そして取り組みはじめてからも、とにかくケンカの毎日だったと話されます。取引先、提携工場の工場長、自社工場のスタッフ、関わり合うすべての人たちと意見を戦わせて来られたとのこと。人との摩擦、意見の対立を恐れず、理解し合おうと試みること。私にとても欠けている部分です。分かってはいるけど、改善できない。それが出来ないのは、やはり“他人にどう思われるか”を気にしているから。そして、なぜそうなのかと言えば、後述する「他人になんと思われても歩きたい夢」を持っていないから。その“想い”の欠落。これは創業者には理解しにくい、後継経営者に特有の課題だと思っていますが、私自身がそこをどう変えていくかが求められると、改めて認識する機会となりました。

3.他人からどう思われても歩きたい夢ですか?

講演の後、感銘を受けたたくさんの参加者が質問に立ちました。私は最初、講演の内容に圧倒され過ぎ、また自分自身とのあまりのかい離に、しばらく頭の整理がつきませんでした。最後になって聴いてみたいことの整理がつきましたが、残念ながら時間切れ。しかし、いつか機会があれば伺ってみたいその質問、それは「強い想いを持った創業者である山口さんは、後継経営者に対してどんなことを思われますか?」というものです。

今回の1600名の参加者。おそらく半分は後継経営者です。私もそうですが、後継経営者は何らかの“事情”で経営者になっている。“社長の息子だから”的なことがその代表例です。そして、多くの後継者は、最初は事情で後を継いだとしても、何かのタイミングで自分がその仕事を継承する意味、意義を自ら見出し、自らの使命を掲げ、真摯に経営に取り組んでいらっしゃいます。しかし、それは自分が本当にやりたかったことなのか。山口さんのように、本当に自分のやりたいことを見つけ、それを自らの使命と捉え、信じられないような困難に立ち向かい、邁進する経営者の姿を見せつけられると、その姿はとても眩しく見える一方、自分自身の生き方が一体どうのなのか、自問自答せずにはいられません。

山口さんは、「あなたの夢は、他人からどう思われても歩きたい夢ですか?」と語られます。この質問に対し、私には「そうです」と即答できるものがありません。会社の将来像、目指すべき姿はあります。私が考え、描いたものです。しかし、それは、後継経営者として、これまで当社の先輩方が培ってきた技術、ノウハウ、などの経営資源をベースに、今後、このような姿を目指せば将来が見通せる、社員も共感できる、という観点で描き出した姿に過ぎません。もちろん間違いではないし、それを目指すことが当社と当社の社員のためになると確信しています。しかし、やはり手順に沿ってつくった将来像、といった性質を持つことに変わりはありません。そうではなく、私自身が本当にこれをやりたい!と、なりふり構わず邁進できる夢なのかと問われると、即答できない訳です。

私にとっての「他人からどう思われても歩きたい夢」。山口さんに聴くまでもなく、その答えは自分で見つけるしかありません。そして今の事業・会社の延長線上になければならない。その答えが見つかった時、私自身が本当に大きく変わり、飛躍できるはずです。そのことを意識しながら、これからも試行錯誤し、追い求めていきたいと考えています。

衝動買い(笑)したバック(奥さんへのおみやげです)

今回の東京青全交、会場は新宿の京王プラザホテルだったのですが、そこからほど近い小田急百貨店新宿店の2Fにマザーハウスの店舗があります。講演終了後、多くの参加者がこのお店を訪れ、売上に貢献したようですが、私も多分にもれず立ち寄り、記念講演の学びを実践、いや、衝動買いしてきました(笑)。しかし、私の記憶に残るのは、商品もさることながら、その売場で働くスタッフのみなさんの笑顔、自然な接客、そして自信を持って商品を勧める姿です。自信というよりは、商品の品質を信頼している、といった方が正しいかもしれません。海を隔てたバングラディッシュの工場と日本のお店がつながっている。製造から販売までが一つのチームとなり、お客さまに対して満足を届ける。そんな心地よい印象を受けてお店を後にしました。一つのチーム、それはどんな事業でも同じ。職種・職場は全く違えど、お互いがお互いを信頼する関係の中でお客さまと接していく。私もそのようなチームをつくり上げたいと感じさせて頂ける素晴らしい体験でした。

2013
09.11

2013年9月6日(金)、島根同友会会員の株式会社プラチナ第8期経営指針発表会にお招き頂き、参加してきました。株式会社プラチナは、松江市で自動車販売、整備、自動車部品の販売・施工・製造などを手掛ける会社です。今回、初めて経営指針発表会を開催されました。代表取締役の内田雄之さん以下、社員5名の会社ですが、創業以来、お客さまに密着したサービスとこだわりの仕事で事業を伸ばしています。平成22年度に島根同友会に入会され、経営指針成文化セミナーを2度受講されるなど、経営指針の成文化にも積極的に取り組まれています。今回の経営指針発表会、社員はわずか5名ながら、同友会の仲間や金融機関など総勢31名の参加を得て開催されました。その取り組み姿勢に大いに刺激を受けるとともに、同じ同友会の仲間として、大きな転機となるこの会に出席できたことに感謝しています。そこでの気づきの一部をこのブログにまとめさせて頂き、今後のさらなる飛躍と発展に向けたエールとします。

挨拶する内田雄之代表取締役

1.クルマがその人の価値を高める~モノが売れない時代のクルマ屋とは~

経営指針発表会のことをまとめる前に、私が内田さんと出会って間もないころ、内田さんから聞いた話で印象に残っていることについて記しておきます。それは、「クルマはその人の価値を高める。」というものです。

現在、私は会社所有の社有車を業務用に使っていますが、実は外車(BMW)です。もちろん、業務上外車に乗る必要はありません。4年前、私が社長に就任する時に、会社の状況をよく考えず導入したものです。中古でしたが、それなりの値段はしました。財務的にみれば負の遺産の一つでした。就任してしばらくして、当時の会社の苦しい状況を認識した私は、クルマを処分しようとしましたが、処分しても損が残るとのことで、結局ずっと乗り続けました。その経緯を話した上で、「今後はもっと安くて燃費のいい車に買い替えようと思うがどうだろうか?」と内田さんに問いかけました。

内田さんは、「安い車に買い替える必要はないと思います。クルマは人の価値を高めるんです。軽自動車に乗っている石倉さんと、BMWに乗っている石倉さんでは、BMWに乗っている石倉さんの方が価値が高い。私も、周りもそう見る。だから、今のままでいいと思います。」と話されました。「プリウスでもどうですか?」的な回答を予想していた私にとっては意外で、印象に残っています。実は、そこに、プラチナ、そして内田さんの仕事の原点があるように感じています。クルマの持つ価値。個人のクルマであれば個人の価値、事業用であればその事業の価値に即したクルマ。ユーザーの価値感に徹底して合わせることで、その人、或いはその事業の価値を高める、又は明確化する。それがユーザーの満足につながる。そんなクルマ、そしてクルマを通じたライフスタイルをコーディネートする仕事。それがプラチナという会社の原点だと感じていました。

クルマは、道具であり嗜好品でもあるという性格を持っています。自己表現の手段でもある。プラチナという会社の歴史を伺うと、同社が扱うクルマは嗜好品としての側面が強かったと思います。その流れで、今、高品質カーオーディオなどにも取り組んでいる。若者のクルマ離れ、等と言われてから久しいモノが売れない時代です。だからこそ、どこにでもあるクルマ屋ではなく、こだわりを持った嗜好品としてのクルマ、自己表現の手段としての際立ったクルマ、を扱うという特徴を出した会社として発展して欲しいというのが私の気持ちです。

2.プラチナの精神 One to Oneへ立ち戻る

今回の指針発表の中で記憶に残ったキーワードの一つに、プラチナの創業からの精神「One to One」があります。お客さまとプラチナが1対1で向き合う、というこの基本姿勢。現在、プラチナには累計1000名のお客さまがいらっしゃるそうですが、1対1000ではなく、1対1であることを貫く。それは、お客さま一人一人に特化するということ。そこに今一度立ち返りたい、という内田さんのメッセージを受け止めました。

プラチナは、「お客さまの“欲しい”に何でも答える」というスタンスで事業を伸ばしてきたそうです。その“欲しい”とは、“こだわり”という言葉でも置き換えられるものではないかと感じます。それは、プラチナが創業以来手がけてきた得意分野に、カスタマイズという領域があることからも分かります。機能面での改造(いわゆるチューニング)、外見面の改造(エアロパーツ取り付け等)という、クルマ業界でもマニアックな領域、こだわったユーザーが多く存在する領域で仕事を伸ばしてきたのがプラチナだと理解しています。だから、そういったユーザーの“欲しい”とは、かなりこだわったもの。マニアックな、一般カーディーラーでクルマを買う人の感覚では無い、その人だけの価値を提供してきたのでしょう。そういったユーザーと付き合うためには、社員自身も相当のクルマ好きでなければならないし、労多い仕事をお客さまと一緒に共に楽しめることが求められます。そこがこの会社の強みだと内田さんも認識されています。

現在、プラチナは少しずつ事業を拡大する中で、そういったマニアックな客層だけでなく、より一般的感覚に近いお客さま、そして法人との取引等、お客さまの領域が広がりつつある段階にあるようです。その時に、「One to One」をどのような形で実現していくのか。前述の嗜好品としてクルマを扱うお客さまから、道具として見るお客さまが増えていく中で、どこにプラチナという会社の価値を見出していくのか、期待しています。

3.中期経営ビジョン~2000人のファンを持つ企業~

今回の経営指針発表会において、「2000人のファンを持つ企業」という中期経営ビジョン(第8期~第10期)が示されました。プラチナには現在1000名の累計顧客がある。それを2000名まで増やし、さらに“ファン”になって頂く、というものです。ファンとは、年間1回以上利用して頂く“愛好者”、年間1人以上のお客さまを紹介して下さる“紹介者”に分かれ、その総計が2000名に達する企業を目指そうというものです。

ファンとは、まさに前述の「One to One」に共感、そして満足してプラチナと長く付き合って下さるコアなお客さま。それを実現するための方策は、中期経営方針として個別に示されました。その中身は、印象向上、信頼性向上、利便性向上、楽しい場づくり、社員のレベルアップ、といった項目が網羅的に示されていますが、その施策の中核とるのは、年末にも完成予定の新社屋・新工場です。

ただ、その新社屋・新工場の概要については、今回の経営指針発表会ではあまり表現がありませんでした。その点については私として不満足なところでしたが、経営方針に示された取り組み項目、それは、裏返せば現在のプラチナの課題です。事実、プラチナの会社としての設備は脆弱です。今後、毎年2000名のお客様を迎え入れ、満足して頂くには明らかに不足でしょう。だから、このタイミングで新社屋・新工場に着手する。そのことにより、印象、信頼、利便、楽しさ、といった課題を解決する。2000名、一人一人の満足に応えることができる環境を整える。だからこそ、この新社屋・新工場の完成、そしてそのタイミングに合わせて進められる各種取り組み、その相乗効果でスタートする新しいプラチナの姿がどのようなものになるのか、とても期待し、待ち遠しく感じています。

当社もそうですが、事業を営めば何らかの形でのクルマの利用は欠かせません。プラチナとしては、今後、法人ニーズへの対応も大きな方向性の一つになってくるようです。しかし、法人向けのサービスはプラチナが得意としてきたコアな個人客とは異なる領域です。普通にやれば他の自動車整備工場と同じになってしまいます。そこにどう切り込んでいくのか。大いに期待しながら、その施策展開を見守り、応援したいと考えています。

社員及び顧問のみなさんの紹介

代表取締役の内田さんとは、島根同友会で出会いました。そして、平成23年度に、経営指針成文化セミナーを一緒に受講して経営指針を同期策定した仲間です。だから、業種は違っても、共に未来に向かって切磋琢磨しながら経営を伸ばしていく仲間として是非とも頑張ってもらいたいと考えています。内田さんが事業を伸ばせば、私も負けてはいられないという気持になりますし、迷う時、壁に当たった時には共に助け合うことが出来る仲間として共に成長したいと考えています。そして、中期経営ビジョンに示された「2000人のファンを持つ企業」。そのファンの一人として、これからも応援し続けたいと思います。内田さん、これからが本当の勝負。頑張って下さい!

2013
09.05

2013年9月1日、特定非営利活動法人 山陰MOREが運営する、「2013年度ベンチャーキッズスクール」の講師を務めさせて頂きました。山陰MOREは、ボランティア活動を通じて山陰各地で地域貢献の輪を広げたいとの想いで活動されているNPO法人です。この「ベンチャーキッズスクール」は、平成19年度から島根県と島根県信用保証協会が実施している助成事業で、“地域の将来を担う子供たちは地域で育てる”という視点に立ち、次代を担う児童生徒を対象に起業家精神を養うことを目的としています。山陰MOREは、平成24年度から松江地域における受託団体となり、小学校4~6年生を対象とし、スクールの運営に携わられています。計8回シリーズで開催されるスクールの中で1時間弱の時間を頂き、当社の仕事の紹介と、私が頂いたテーマ「何のために会社を経営するのか」、「社長の心得」について話をさせて頂きました。小学生の子供に伝えるには非常に難しいテーマでしたが、この準備と講義を通じて私自身が学ぶことが多数ありました。そのことを少しまとめておきます。

ベンチャーキッズスクールで説明する

1.伝わるか伝わらないかは、伝えてみないと分からない

今回私が頂いたテーマは、「何のために会社を経営するのか」、「社長の心得」という内容。社長になってわずか5年目の私が担当するにはおこがましいテーマですが、せっかくの機会ですので、取り組ませて頂きました。今回の受講者は、小学校4年生から6年生。おそらく、この年齢の子ども達にまじめに話をしたのは、私にとって初めての経験でした。その意味でも、大変貴重な機会を頂いたと感謝しています。

このスクールには、“起業家精神を養う”ことを目的とし、自分達が作った商品を販売するという実習が組みこまれています。まさに、自分達が模擬社長となって“商売”を経験してみる、というのがスクールの趣旨の一つです。であれば、その前提として、なぜ商売をするのか?、社長はどういう気持で臨まなければならないのか?、といった基本的な部分を学んでおくことは意味があります。ただ、「小学生にそれがどこまで理解できるのか」ということです。言ってもどうせ解らないんじゃないのか?、そういう思いが頭をよぎります。

講義を終えてみて、この疑問に対する私の答えは、「どうせ小学生だから分からないだろう、と決めつけるのではなく、“勇気を持って伝えてみる”ことが大切」ということです。講義の前に、山陰MOREの柳楽理事長は、「子どもたちは、一見分かってない風に見えても、結構本質をつかんでいたりするんですよ。振り返りシートを見てびっくりすることがあります。」と話されました。このスクールでは、各回の受講後に“振り返りシート”を作成し、参加者から感想や気づきを書いてもらっているそうです。私の話がどのように伝わったか、とても楽しみにしています。

その振り返りシートの話から分かるのは、「伝わるか伝わらないかは、伝えてみないと分からない。」ということ。これは経営でも一緒です。社長の方針や想いを社員に伝える。分かってくれなさそうな社員が居たとして、どうせ伝わらないと最初からあきらめるのではなく、勇気を持って伝えてみる。そこで伝わらなければ、また伝え方を考える。そのことを改めて気づかせて頂く、よい機会を頂いたと感謝しています。

2.はじめから目的のために仕事ができるのは起業家の特権

今回、「何のために経営するのか?」というテーマについて話をする際に、冒頭、「なぜ働くのか?なぜ働くと思う?」と、受講生に問いかけてみました。一人、勇気持って回答してくれました。答えは、「生活の為にお金がいるから」。もちろん正解の一つです。しかし、私が伝えるべきと考えたのは、「事情ではなく、目的のために働く」ということです。お金が必要だから、家族を養うため、など、なにか“事情”があって働く、という状態から、人を幸せにするため、世の中を良くするため、といった“目的”のために働く、という考え方を持って欲しいと思ったからです。そのことが、人生、そして仕事を豊かなものにしていく。だから、将来の社長を目指すみなさんも、「事情」があって経営するのではなく、「目的」を持って経営してもらいたい、と説明したかった訳です。

しかし、その資料をつくりながら、その感覚は、サラリーマンから後継社長になった私の感覚でしかないのではないか、という思いがよぎるようになりました。今回は、あくまで“起業家”を育成しようとするスクールです。同友会などで知り合った私の回りの起業家(創業者)の方々の多くは、最初から目的があって起業しています。事情があって起業する方の中には居るかもしれませんが、そもそも、起業というものは「やりたいことがあるから起業する」のであって、そういう人たちは、そもそも“事情”にはあまり捉われていません。そこで気が付くのは、だからこそ本事業の目的にも示されている「起業家精神を養う」ことが、とても大事なのではないかということです。

「起業家精神を養う」というのは、実際に起業する人を育てることだけでなく、夢を持つこと、新しいことに挑戦する、そして、目的を持って生きる、という次世代の子どもたちを育てるということ。そういう生き方の先に、選択肢の一つとして起業がある。そして起業の魅力は、「最初から目的のために仕事ができる」という環境を得られること。それは起業家の特権。このスクール全体を通じて、そのことを伝え、理解してもらえることが出来れば、さらに意義のある取り組みとなるのではないかと振り返っています。

3.結論は、『みなさんが「立派に成長する」ということ』

起業した企業がその後どうなっているかを調べたあるデータによると、起業後1年以内に3割が廃業、起業後3年以内に7割が廃業、起業後10年以内に9割が廃業、という結果が得られた、という話を聞いたことがあります。出典が定かではありませんが、中小企業庁など公的な機関の調査だったと思います。

今回スクールに参加した子どもたち全員が将来起業したとしても、10年後生き残るのは10人中1名。彼らが成長した頃は更に厳しい時代となり、10年で20人中1名ぐらいの確率になっているかもしれません。それだけ現実は厳しいということ。このデータについて講義の中で紹介したのですが、それは当然ながら事業経営が厳しいものだと知ってほしかったからですが、もう一つ、だからこそ、準備をして欲しいと伝えたかったからです。今回の対象者は小学生。本当に起業するにしても、その時期が到来するまでにはたくさん時間があります。その間に、必要なことを身に付けて行って欲しい。そうすれば、きっと明るい将来が待っている。起業家として起業しなくても、尊敬される、立派な一人の大人として生きていくことが出来ると考えています。

では、そのために何を伝えるか。私は、「善きことを想い、善きことを実行する」という話をさせて頂きました。困っている人を助ける、親・兄弟を大事にする。一生懸命勉強する、など当たり前のことをきちんとするということ。聴いてみればあたり前だけど、中々できないこと。大人でも出来ていないこと。でも、ひいてはそれが自分のためになる。因果応報を信じ、感謝の気持ちを持つ。間違った考え方に基づいて経営のテクニックを学んでも、結果的に彼らの人生が素晴らしいものになるとは思えないし、仮に彼らが社長なったとして、その周りに集まる社員の幸せにもつながらない。

だから、今回の私の話の結論は、『みなさんが「立派に成長する」ということ』、としました。みなさんが立派な社長になれば、会社も立派になる。立派な社長の元には、立派な社員が集まり、成長する。立派な社員のもとで、立派な後輩が育つ。立派な後輩がまた、社長と会社を育ててくれる。これは、私自身への問いかけでもあります。この講義を通じて、私自身の気づきもたくさん頂きました。子どもたちに説明した内容に恥じないよう、今後とも努力していきたいと考えています。

受講生と記念撮影

山陰MOREは、「山陰初、パラレルキャリアを推進する団体」を標榜して活動されています。この“パラレルキャリア”という言葉。私もそれまで知らなかったのですが、仕事とプライベート、そして第3のコミュニティ(ボランティア活動等)に参加することで、視野や人脈を広げたり様々な経験を積み、それをまた本業に活かしたり、新たな生きがいを見つけたりすることをいうようです。また、本業で身に付けたスキルを社会貢献活動等の場で発揮し、活動の充実を図るという視点もあるようです。この“スキルの活用”という観点、実は以前から自然に行われてきたように感じます。自治会やPTAなどの活動の場で、事務能力に優れた方、現場に強い方、それぞれが得意分野を活かして活動を進める、といった事がよくあります。しかし、パラレルキャリアが提唱するのは、もう少し踏み込んで、第3のコミュニティに“自分の居場所”を見つけ、人生の充実を図るということ。仕事以外にこれと言って熱中することが無い私としては、別世界の感もありますし、そういった生き方が出来る人がどのように考えているのか、興味もあります。せっかく頂いたご縁に感謝し、自分自身の仕事以外の人生をどう生きるか、考えてみるきっかけにさせて頂きたいと考えています。