2013
10.31

協和地建コンサルタント本社にて、平成24年8月から運用開始した地中熱ヒートポンプ空調システムも、運転開始から1年以上を経過しました。この間、貴重なデータを収集する事が出来ました。また、この10月には、今年度の主要プロジェクトとして取り組んでいた、「スモールZEB」が完成し、CO2排出量ゼロ事業所を実現するためのハード整備が整いました。このタイミングで、地中熱ヒートポンプ空調の運転実績を紹介するとともに、これまでの取り組みを振り返り、今後に向けたさらなる飛躍のきっかけとできるよう、まとめてみます。

地中熱空調 消費電力量比較

1.地中熱ヒートポンプ空調システムで年間空調電力消費量22.6%減

平成24年8月から運用開始した地中熱ヒートポンプ空調システムが1年を経過しました。夏場、冬場を経た1年間の運転の結果、「どの程度消費電力量を削減できたのか?」が、大きな関心事となります。

その回答としては、「電力消費量22.6%減」となりました。電力会社からの請求書ベースです。正直なところ、もう少し大きな削減効果が出るのではないかと期待していましたが、1年目の実績としてはこの数値が結論です。初年度ということもあり、能力を試す意味でも積極的に運転しており、電力量がかさんだ面もあります。今後、1年間の運転データを踏まえて、さらなる効率的な運転の実現を目指します。

空調コストは、断熱性能が高い鉄筋コンクリート造の建物等では、比較的近い条件で経年的な比較ができますが、当社のような古い木造の建物では、夏が暑かったり、冬が寒かったりすれば空調コストに直ぐに影響が出ます。また、仕事量が多なって稼働時間が多くなれば、これもまた空調コストに跳ね返ります。このため、空調コストの比較というのは、単年度での比較ではなく、複数年の平均をみながら比較することで、はじめて効果の程度を検証できるものです。ですので、今回の結果は一つの目安ぐらいに捉えておいた方がよいと考えています。(※比較グラフでは、温度設定の条件がほぼ同じの、H18~20の平均と比較しています。)

いずれにしても、「エネルギーコストの削減」は再生可能エネルギーの活用に際して常に着目(※技術的には成績係数(COP)等も重要ですが今回は触れていません)されるところです。地中熱は、再生可能エネルギーの中でも“熱利用”という分野です。太陽光、風力、小水力、など再生可能エネルギーの代表選手はいずれも“発電”しますが、地中熱はそうではありません。だからどれだけ従前と比べてエネルギーコストが下がるかがポイントであり、その追求を引き続き続けていきたいと考えています。

2.「地中熱」がもたらす“幸せ”を発見できるか否かが未来を決める

地中熱空調は、従来型の空気熱源の空調に対し、少なからず初期投資が多くかかります。このため、導入に際しては、エネルギーコストの削減で設備投資を回収できるかどうかが、大きな判断ポイントになります。その一方で、地中熱がさらなる普及を図っていくためには、単なるエネルギーコストの削減だけでなく、プラスアルファの魅力が必要ではないかと考えています。

すなわち、「地中熱」を採用することで、利用する方が“幸せになれる何か”があるのではないか。小さなことでもいいと思います。それがあれば、単なるコスト比較の議論から脱却できます。何より、日本全国どこでも利用可能な「地中熱」という再生可能エネルギーの普及が進まないのは、非常にもったいないことです。今、「地中熱」空調がもたらす(小さな)“幸せ”として認識していることが3つあります。

一つは、「潤いあるやさしい風」です。これは、地中熱空調システムが冷温水配管によって配管されていることによるもので、室内には適度に湿度を保った風が供給されます。これは技術特性上“結果的に”そうなっている面が強いのですが、実際に運転している当社の執務室内は湿度40%~50%程度に保たれており、とても快適に過ごすことができました。経済的なメリットが生まれる長時間空調が必要な病院や福祉施設などを利用する方のことを考えると、同じ冷暖房でも、適度に湿度を保った空気を供給することで、より過ごしやすい、体に優しい空間をつくっていくことにつながります。「過ごす人にやさしい」と言えます。

二つ目は、空気熱源空調と異なり「室外機」が存在しないことによるメリットです。室外機から冷風(暖房時)、熱風(冷房時)を屋外に排出しないので、特に密集市街地などでは隣接地との関わりを気にする必要がなくなります。「お隣りさんに優しい」と言えるでしょう。このことは、施設設計時にも係わりがあり、設計者の設計の自由度が高まる、ということがあります。室外機の設置場所の確保と目隠しの工夫等の考慮は手間であり、制約になります。その必要がなくなり(その代わりヒートポンプやストレージタンク等の機械室が必要なりますが)、設計、特に意匠における自由度が高まると考えられます。「設計者にやさしい」と言えるでしょう。

最後は、既に言われていることですが、ヒートアイランド現象の抑制、そしてCO2排出量の削減です。「地球環境にやさしい」と言えるでしょう。これらのちょっとした「幸せ」をもっとPRしていく必要があるし、さらに発見していくことが出来るか否かが、さらに地中熱活用が進むためのポイントになると考えています。

3.「スモールZEB」完成をきっかけに新たな飛躍へ

協和地建コンサルタントのでは、平成25年度の主要プロジェクトの一つとして、本社屋における「スモールZEB」(ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の構築に取り組んできました。そして、10月20日、本社社屋の全事務室の二重窓化(高断熱窓導入)、本社及び倉庫の全照明のLED化を実施しました。平成25年8月から導入している太陽光発電設備(36kw)、前述の平成24年8月から運転開始している地中熱ヒートポンプ空調とあわせて、実質的なCO2排出量ゼロ事業所が完成しました。電力量で言えば、年間で33,000kwhを発電し、従前は41,000kwh程度消費していた電力量を27,000kwhまで縮減します。

当社では、地中熱ヒートポンプ空調+太陽光発電システムを中核としたCO2排出量ゼロ事業所を、「スモールZEB」と定義し、小規模事業所におけるエネルギーの地産地消モデルとして事業展開していくことを目指しています。スモールZEBに取り組む当社にとっての意義は、地中熱ヒートポンプ空調システムをエネルギー有効活用のパッケージの一部とすることによる地中熱の導入促進です。そして、もう一つの意義は、関連する様々な設備や商品の地域における市場の活性化です。このパッケージには、地中熱以外にも様々な設備や商品が必要です。このコンセプトの普及によって、その設備や商品の需要が促進に少しでも影響を与え、取り扱う企業の成長につながれば、地域の経済活動の活性化に貢献することになります。ひいては、当社の活性化にもつながってくる、と考えています。

当社のスモールZEBでは、空調コストの効率化に向けた高断熱窓(二重窓)の導入も行っています。この設備により、地中熱空調の運転効率は更に高まることが予想(そうなると以前との比較がしにくくなるというデメリットもありますが)されます。事務所の電力消費の中心は、空調と照明です。これをいかにコントロールするかが、エネルギーコストの削減のポイントです。地中熱空調はその鍵となる技術であることは間違いありません。今後の1年間は、このスモールZEB全体の運用状況を把握し、発電量と消費量とのバランスを中心に、その達成度合いをモニタリングしていきたいと考えています。

協和地建コンサルタントのスモールZEB

今回、全社屋をLED化したことで社内がものすごく明るくなりました。作業環境が向上したのはもちろん、職場の清掃や整理整頓が出来ているか否かが、より目につくようになったと感じています。また、二重窓化によって遮熱断熱性能が高まっただけでなく、静粛性も各段に高まり、執務室内ではより作業に集中できる環境ができました。スモールZEBは、エネルギーコストのバランスを取ることを趣旨としていますが、さまざまな環境設備を導入することで、付随した様々なメリットも見えてきます。当社自らがこのパッケージを運用し、エネルギーの地産地消の実現、そしてより快適で効率性の高い職場環境の実現を実証してきたいと考えています。

2013
10.24

2013年10月18日、島根経営品質研究会 2013経営品質特別講演会が開催されました。

テーマは、「幸せが連鎖する日本流経営」と題し、ネッツトヨタ南国 ビスタワークス研究所 代表取締役社長 大原光秦さんを講師に招いて開催しました。同社は、日本経営品質賞受賞企業でもある、ネッツトヨタ南国の人財開発を担当する企業です。大原さんは、島根経営品質研究会の特別講演会講師として、6年連続お向えしており、島根における経営品質向上活動に対して絶大なご支援を頂いています。

一昨年の講演、そして昨年の講演でも大変示唆の多いお話をたくさん頂きましたが、今回は“経営品質”を説明する際によく用いられる「三方よしの精神」、そして、これからの「人財育成」を主テーマに、さらに内容を充実させた講演となりました。内容全体を網羅することはできませんが、その一部を整理しておきます。

講演する大原さん

1.諸文明の没落要因からみる会社の没落~人財育成の重要性~

今回、興味深かったのは「諸文明の没落」という話です。経営の講演会で“文明の没落”にまで言及するのは飛躍している感もありますが、今回の大きなテーマである人財育成に関しては、実は大きな係わりがあることが理解できました。過去の様々な研究等において指摘されているのは、「諸文明の没落は、外敵や天災によってではなく内部からの崩壊によって滅びる」という点です。そして、それは「道徳的逸脱」に起因する。要するに、道を踏み外した国が滅んでいる訳です。

そして大事なのは、これは“会社の没落(倒産)も同じ”だという指摘です。だから、道を外した企業は倒産する。具体的には、1975年に文芸春秋に掲載された「日本の自殺」という論文を引用して話をされました。そこに示された、歴史の教訓。没落する文明とは、1)幸福をモノや金だけではかる、2)エゴを自制できない、3)自分自身で解決するという精神と気概がない、4)若者におもねる年長者、5)大衆迎合主義、という5つの要素があるそうです。注目すべきは、全て“人”に関わることだという点です。

これを会社にあてはめるとどうなるか。没落する会社の傾向が見えてくるという訳です。
ア)金でしか動機づけされない人事施策や営業方針
イ)利己心を抑制できない社員
ウ)組織に付和雷同するぶら下がり社員
エ)若手社員に厳しくできない中堅社員
オ)権限移譲の名を借りた放任経営

会社にあてはめても、やはり“人”ということになります。自分の会社はどうなのか、前述されたような方向に向かいそうな気配はないのか。経営者が常に意識することが必要であり、だからこそ、人財育成を、知育(知識の習得によって知能を高めることを目的とする教育)だけでなく、徳育(道徳心のある、情操豊かな人間性を養うための教育)も合わせたものとして、実施してくことが大事になります。そのためには、まずもって経営者自らの徳を高める必要があるということを、痛感したところです。

2.人財育成の要諦は、何も教えないこと

講演会後半、ネッツトヨタ南国における人財育成の要諦について端的な説明がありました。それは、「何も教えないこと」。言葉どおりに受け止めて拙速に実践すると大変なことになりそうです。まず、なぜ何も教えないのか、という理由を理解する必要があります。一つは、「教えないから考えるようになる。」ということです。指導する側からすれば、“管理する”から“任せる”への転換、と言えます。だから、任せる以上は、任せる前に組織としてどうしたいのか・どうありたいのか、が示されていることが前提であり、任せられた社員も自分自身のありたい姿を想像できていることが必要となります。

講演会の冒頭でも、組織における人間教育の重要性について指摘がありました。人財育成、それはすなわち人間教育。要するに、「生きているだけでは人間にならない」ということ。昨今話題となって取り上げられる、モンスターカスタマー、モンスター社員、モンスターペアレント、といった人たちはなぜそうなってしまうのか、という問いかけです。一方で、多くの会社で新入社員に対して「将来どんな風になりたいか?」と(真剣に)聴くと、親孝行したい、人の役に立ちたい、後輩から一目おかれる尊敬される人間になりたい、などという、しっかりとした答えが返ってくるそうです。いずれも人間関係にかかわる部分です。みんな人間関係を上手く出来る人間になりたいと思っている。そのことは分かっている。しかし実際には中々出来ない訳です。

そこで重要なのは、「克己」ということ。人間だれしも、自分勝手な己と、それを反省して諌めようとする己を持っている。克己とは、後者が前者を超えること。成功者の共通点とは、「成功していない人が嫌がることを実行に移す習慣を身に付けていること」だそうです。どうして辛抱、我慢ができない人間になるのか。そこで、前述の「考えるようになる」という指摘にもう一度もどります。国全体でみれば、そもそも我々は何を目指していたのか、どのような国・国民になりたいと考えていたのか、企業であれば何を目的にしていたのか、どういう姿を目指そうとしていたのか。その目指す姿が不明確になればなるほど、自分勝手な己が強くなり、反省し諌める理由が見当たらなくなる、ということでしょう。

であるならば、組織が目指すところに共感し、自分自身が覚悟を決められるか、なりたい姿を目指して努力し続けることができるか、ということが人財育成において極めて重要になると理解しています。一朝一夕の話ではありませんが、そのような組織の姿を目指し、一歩一歩進みたいと考えています。

3.経営品質とは幸せの連鎖~三方よしの経営 売り手よし×買い手よし=やりがい~

今回の講演のテーマである「幸せの連鎖」。このことに対し、経営品質の考え方がどのように関わってくるのか、最後に分かりやすいまとめがありました。経営品質は、「三方よしの経営」だとよく言われます。これは、経営品質の4つの基本理念(社員重視、顧客本位、社会との調査、独自能力)にそれぞれ、次のように該当すると理解されています。社員重視は「売り手よし」、顧客本位は「買い手よし」、社会との調和は「世間よし」、となります。

これらを全て成立させる世界とはどのようなものなのか。少なくとも、その会社とその社員がどんな生き方、どんな未来を目指すのかが明確になっている。そしてその内容は当然我々が持つべき規範を踏まえている。だから、繰り返しになりますが「我々は何を目的にしているのか」。この問いかけを忘れてはならないし、その目的は善きことでなければならない。三方よしの観点に立ち、それを常に明確にし続けることが経営品質を学ぶ上での本質だと理解しています。

今回、CS(顧客満足)にとらわれすぎる現在の風潮についても指摘がありました。トヨタグループNO1のCSを誇るネッツトヨタ南国は、当初、お客さまに満足してもらうところ(CS)からスタートし、評価されています。しかし、CSだけを続けていく段々苦しくなってくる。顧客満足が行きすぎると、言われたことだけ、自分の為だけ、金の為だけ、となり、“CSは高いが社員はどうなのか”という疑問が沸いてくるそうです。そこに、経営の目的がなければ、自分達の存在意義さえも見失ってしまう。

そこでもう一度「幸せの連鎖する経営」について考えれば、その言葉自体にヒントがあります。満足ではなく幸せ(幸福)。幸福とは、売り手・買い手の両方が良くなるということ。そのためには、お客さまと従業員との心の交換、魂のつながりしかない。そういう関わりにおいてのみ感動の共鳴が生まれ、感謝の気持ちが芽生え、やる気につながる。もっと端的に言えば、「売り手よし×買い手よし=やりがい」です。そして、それを実現する人財とは、人の立場を考え、最善を尽くす人。人間力を持ち、自問自答(考えること)できる人。そのような人財が溢れる組織となるためには、一人一人が自分自身を磨いていくことが必要だという共通認識を持つことの必要性を感じます。どういう生き方をしたいのか、常に想いを馳せ、今のままでは駄目だという危機感を持ち、自分の中で志を上げていく。そういう自分自身にまずなりたい、ならねばならないと強く感じさせてもらうことが出来ました。

約140名のみなさんにご参加頂きました

島根経営品質研究会の特別講演会は、大原さんにお越し頂く事が恒例となっていますが、今年も140名もの参加がありました。私が講演を伺うのは5回目。近年、強く意識して話されるのが「日本人」としてどう生きるか、どうしてくべきなのか、と言う点です。当初、経営の話から飛躍しているように感じていました。しかし、日本人がその歴史の中で培ってきた規範をベースに経営をしていくことが、これからの中小企業、特に島根や高知といった地方部の中小企業にこそ求められ、その実践が社員を幸福にし、地域を質的に豊かなものにしていくことにつながるのではないか、と漠然とながらも認識できるようになってきました。研究会メンバーで実施した懇親会の席ではさらに突っ込んだ話をさせて頂くことも出来ました。大原さんに、そして参加頂いたみなさんに改めて感謝申し上げます。このブログが、講演会の理解の一助になれば幸いです。

2013
10.18

2013年10月11日(金)、島根県中小企業家同友会 松江支部・雲南地区会合同10月例会が開催されました。この日は、「『私の経営道』~人づくりは環境作りから、形から入って心に至る~」と題して、株式会社さんびる 代表取締役 田中正彦さんから報告を頂きました。さんびるさんとは、島根経営品質研究会の活動を通してお付き合いがあり、経営方針発表会に参加(第35期第36期)させて頂くなど、たくさんの学びを頂いております。さんびるは、2013年3月に「日本で一番大切にしたい会社大賞・審査委員会特別賞」を受賞されたことでも、一躍話題になりました。今回、同友会の報告者として田中正彦さんから改めてお話を伺う機会得て、さまざまな気づきを頂くことができました。本当にごく一部ですが、整理しておきます。

報告する㈱さんびる 代表取締役 田中正彦さん

1.市場にはライバルとお客様しかいない~“親密な顧客関係”で差別化~

冒頭、「市場にはライバルとお客様しかいない」という話がありました。

企業は、その企業が取り扱う商品やサービスを提供する“市場”を相手に事業を運営しています。市場という外部環境には様々な制約や条件があるように感じますが、突き詰めれば、ライバルとお客さましかいない。その2つしかないことを認識すれば、お客様は自社のファンにし、ライバルとは戦っていく、という明確な方向性が見えてくる。後は、戦う時にどこで戦うのか、何を持ってライバルに勝つのか、ということになります。

田中社長が示された3つの選択肢は、1)製品の優位性、2)業務の卓越性、3)親密な顧客関係、の3つです。そして、さんびるでは、3)の親密な顧客関係、を強みにライバルと戦っている。平成13年に田中社長が代表取締役専務に昇格された際、経営品質の考え方に触れ、この「親密な顧客関係」を差別化に経営を進めることを決断されたそうです。“貴方から買う、貴方だから買う”という戦略。“人”で差別化している訳です。

この“人”で差別化するという考え方、企業経営ではよく指摘されることです。しかし、中々できません。さんびるでは「社員同士お客様」という基本精神があり、社員同士で感謝し合う、尊重し合う、そういった社風をつくり上げられています。さらにそれを定着させるための社員教育の仕組みが構築されている。そして、なによりも、一人一人の社員がこの会社に入って良かったと思えるような会社づくりに向けて、社長である田中正彦さんが社員一人一人と向き合い、ひざ詰めで対話を継続されています。“人”による差別化、それが出来る・出来ないは、経営者の想い、考え方、を一人一人の社員に徹底して伝える努力が出来るか出来ないかに大きく関わっているのではないかと改めて感じたところです。

2.プラスアルファの魔法が成功を導く

報告の中で、「プラスアルファの魔法」という話がありました。

ほんの小さなプラスアルファを加えることで、相手が受ける心像に大きなインパクトを与えることがある、という成功法則の一つだそうですが、田中正彦さんは、挨拶を例にとって説明されました。挨拶は大事だが、ただ「おはようございます」と挨拶するのではない。「○○さん、おはようございます!」と名前を呼んで挨拶する。さらに、「○○さん、おはようございます!今日もすてきな笑顔ですね!」と声をかける。小さなことだが、それを続けることで後々どれだけ大きな変化につながるか、と語られます。

仕事でもそうでしょう。指示されたことだけする人と、指示されたこと以上の仕事をする人。どちらがその先成長するのか。企業全体で言えば、頂く対価どおりの仕事しかしない会社とそれ以上の仕事をする会社、どちらがお客さまに可愛がってもらえるのか。そして、大事なのは、過剰なサービスやタダ働きが必要だと言っている訳ではない、という事です。わずかなことであっても、いや、わずかなことこそ、将来につながる可能性があるという事です。ちょっとしたお礼をする、他社より丁寧に掃除する、色々な形がありうるでしょう。だからこそ、さんびるでは「凡事一流」という考え方を大事にされています。そのことを、(A)あたり前のことを、(B)バカにしないで、(C)ちゃんとやる、というABC活動として実践されてきています。

このABCのうち、“バカにしない”という部分、違う見方をすれば「やっても意味がない、無駄だ」などという決めつけや思いこみと言ってもいいかもしれません。というのは、“プラスアルファの魔法”のポイントは「見返りを期待しない奉仕の心」だそうです。「意味が無い、無駄だ」という考え方自体が、見返りがあるかないかと前提としています。得か損か、といった価値観ではないところに成功に秘訣がある。それは、さんびるという会社がその成長をもって証明していると改めて感じるところです。

3.形から入って心に至る~心は見えない、だから形をつくる~

今回の報告のタイトルにもある「形から入って心に至る」という言葉。形だけでもできるようになれば、心の方は自然とついていくる。また、形ができるようになれば、その理由や本質も自然と理解できるようになる、という意味です。経営に際してこの言葉がどう当てはまるのかについて、田中正彦さんは「人の心の中は見えない。だから、形をつくる。」という端的な説明をされました。心に問いかけても駄目、形にしてさせてみて、何かに気づかせることが大切だ、という訳です。

そして、さんびるで実施されている「環境整備」という徹底した整理、整頓、清掃も“形”の一つであり、社員はそれを強制されます。そのことについて、「企業とは共通の目的、目標を持って集まった集団であり、同志である。しかし、一人一人の背景は全く異なる。それが同じ目標に向かうためには、「形」をつくらないと進まない。会社が持っている価値観に揃えるためには、何らかの形で強制するしかない。それが必要だということを教えるのは経営者の仕事だ。」と話されました。

“強制”などと言うと、社員から反発がありそうな気もします。しかし、その根底には、社員の幸せを本気で考える経営者の姿があり、その背中を見せ続けるからこそ、つくった「形」に社員を従わせることもできる。「さんびるの商品は社員だ」と明言される田中正彦さん。だからこそ、形にこだわる。その本質と実践を教えて頂いたと思います。

たくさんの参加者で大盛況の例会

大きく飛躍している株式会社さんびる。その会社を率いる田中正彦さんが今回の報告を総括しておっしゃられたのは、「一つ目は、経営者の哲学と覚悟と信念。二つ目は、仕組みをつくること。」という2点です。そして、最も大事だと言われるのは、「社長が本気にならなければ駄目だ」ということです。経営に際して大きいのはリーダーの存在。リーダーは、「決めたらやる、やったら続ける」。言葉にするのは簡単ですが、決めたことはやりとおす、リーダーの覚悟と強い意志が必要だということです。しかし、一方で、決める前に社員としっかり語ることが必要だとも話されます。そして、その言葉どおり、さんびるには会社の仕組みとして、経営者と社員とが語り、話し合う様々な場が設定されている。そういった仕組みを「形」にし、リーダーの強い意志で運用し続けていることが、さんびるの強みであり、飛躍の原動力になっていると感じます。自分自身に足りない部分、いつの間にか意識が薄れていた部分、たくさんの気づきを頂いた田中正彦さんに、改めてお礼申し上げます。

2013
10.09

社長の温泉めぐり59 玉造温泉(玉造国際ホテル) 島根県松江市玉湯町

私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

59箇所目は、松江市玉湯町の玉造温泉の「玉造国際ホテル」です。訪問日は、2013年10月5日です。

玉造国際ホテルは、島根県を代表する温泉地「玉造温泉」に属する宿泊施設ですが、玉造温泉街からは2kmほど離れた宍道湖湖畔に立地しています。建物はやや古めの印象ですが、大きな特徴があります。それは、玉造温泉で唯一の“宍道湖一望施設”ということです。お風呂は宍道湖湖畔の眺望が楽しめる位置につくられています。この展望浴場は平成22年3月に新築されたとのこと。日帰り入浴も可能ということで、今回入浴してきました。

施設外観(駐車場も広々)

泉質は、玉造温泉に共通する、ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩・塩化物泉で、無色透明で入りやすい温泉です。浴室に入ると硫黄臭がありますが、お湯そのものは、ほぼ無臭でした。適応症としては、塩化物泉の特性により、湯冷めしにくく殺菌効果が期待されるとともに、硫酸塩泉の特性により、傷や火傷等の治癒効果や肌の弾力回復や引き締め効果が期待できます。玉造温泉では、美肌効果についても温泉地一体となってPRされており、弱アルカリ性の程よいphが、肌の古い角質をおとしてすべすべの美肌を生みだしていきます。成分総計1.75g/kgという成分量は、湯あたりの心配も少ないため、一回の入浴で繰り返し入浴することもでき、そのことで、さらに適応症の効果を高めることが期待できます。

風呂場内は、岩風呂風の浴槽のみのシンプルな構成です。温度設定も程よく、比較的長い時間ゆっくりと過ごすことが出来ます。当日は、曇りで小雨が舞うあいにくの天候でしたが、晴天時に宍道湖の眺望を眺めながらゆっくりと浸かることができるとなれば、とても魅力的な立地環境です。なお、ホームページによると「まだ露天風呂はありませんが、…」との記述があり、将来的に露天風呂の増設を検討されている様子も伺えます。出来たあかつきには大変魅力的なスポットになると考えられ、地元の一温泉ファンとして、早期の完成を願うところです。

浴室内の様子(誰もいなかったので撮影)

もう一つ魅力的なのは、日帰り入浴の利用料金が大人300円という格安の設定だということです。玉造温泉街にある公共の日帰り温泉施設「ゆーゆ」では、かつて松江市内在住者は300円で入浴できましたが、現在は400円に値上げされています。ゆーゆと比べればシンプルな設備構成ではありますが、玉造温泉のお湯で宍道湖が眺望可能という特徴を踏まえると、非常にお得感があります。訪問したのは土曜日の午後でしたが、一時は貸し切り状態になる等、利用者もさほど多くありません。フロントの方の話では、夕方になると増えてくるというでしたが、近年新設されたということもあり、まだまだ穴場的な位置づけなのかもしれません。

洗い場は6箇所あり、ボディソープ、リンス、コンディショナーが備わっています。洗い場に仕切りはありません。ロッカーは44箇所あり、すべて扉のないタイプで貴重品は入口脇の貴重品ボックスを使う事になります。この辺りは、基本的に宿泊者向けの施設ということで致し方ないところでしょう。一方、洗面台は3箇所でいずれもドライヤーが備えてあり、アメニティも充実しているのも観光ホテルらしく、日帰り入浴ではお得感があります。また、フェイスタオルは脱衣場に備えつけてあるものが利用可能で、本当に手ぶらで入浴が可能です。これも最近では珍しいサービスだと思います。

広々としたロビーからも宍道湖の眺望が可能

協和地建コンサルタントは、旧玉湯町時代から玉造温泉の泉源開発に深く関与させて頂いています。松江市(旧玉湯町)が開発した1号泉源(平成3年)、温泉水の安定供給を目指して開発された2号泉源(平成16年)、それぞれの調査・掘削を担わせて頂きました。現在も、この2つの泉源のメンテナンスなどを担当させて頂いています。この松江市所有の2つの温泉源は、玉造温泉街の旅館や公共入浴施設に供給されています。こちらの温泉は独自の泉源を利用されているようですが、同じ玉造のお湯を気軽に、また宍道湖の眺望とセットで楽しめる形で提供して頂いているのは、旅行者だけでなく、幅広い利用者にとって素晴らしいことではないかと感じます。

今回天候がやや悪かったのが残念でした。低い目線で宍道湖の眺望が可能な温泉という特殊性とリーズナブルな価格設定が魅力のこの施設。宍道湖の眺望が可能な温泉は、松江しんじ湖温泉にもありますが、湖面に近い、低い目線で見ることができるのはこちらだけでしょう。ぜひ天候のよいときに再訪してみたいと思います。

2013
10.04

社長の温泉めぐり58 有福温泉(小川屋旅館) 島根県江津市有福温泉町

私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

58箇所目は、島根県江津市の有福温泉「小川屋旅館」です。訪問日は、2013年10月1日から3日です。仕事の宿泊でお世話になりました。2013年8月23日から24日にかけて江津市を襲った豪雨災害によって、有福温泉とその周辺が大きな被害を受けました。現在、道路や河川など行政が管理する施設等の災害復旧業務(県、市町村が国の災害査定を受けるための資料作成業務)を地元のコンサルタント各社が対応しており、当社もその一部に携わっています。

今回、協和地建コンサルタントは、日頃ご縁のある有福温泉町内の災害現場を担当させて頂くこととなり、泊まり込みで社員と一緒に現地入りし、現地作業に当たりました。当社は、有福温泉の外湯である、御前湯、さつき湯、やよい湯などの公衆浴場の泉源メンテナンス等で古くからお付き合いがあります。小川屋旅館さんも良く存じ上げているのですが、仕事で伺う際は宿泊でお世話になる機会がほとんどありませんでしたので、この機会に利用させて頂いたものです。

温泉街の中心にある小川屋旅館

小川屋旅館は、有福温泉街の中心部にあり、4階建ての建物が目を引きます。昭和の風情を残すの旅館のたたずまいは、有福温泉の鄙びた雰囲気と相まって、なにか懐かしい気持ちに駆られます。館内も複雑に入り組んだ構造となっており、悪く言えば分かりにくいのですが、館内を色々と探索する楽しみもあります。特にロビーから反対側の裏玄関からは外湯である御前湯まで1分、さつき湯までは30秒もかかりません。外湯と旅館が一体的になっているかのようなコンパクトな街並みも、有福温泉の魅力の一つです。

小川屋さんのお風呂は、旅館建物の最上階にあり、お湯に浸かりながら有福温泉の温泉街を見渡すことができます。最上階にあることを利用し、天井までガラス張りとなっており、昼と夜とで異なる表情を楽しむことができます。そして、24時間いつでも入れるのが魅力です。日中や夕方早い時間は有福温泉の外湯を楽しみ、早朝や深夜など、一風呂浴びたい時間に館内のお風呂を使う、といった入浴方法も可能です。今回は、私は食事前の入浴では日替わりで外湯をめぐり、朝風呂に展望浴場を使う、という楽しみ方をさせて頂きました。

さて、展望風呂の湯船は、四角形のシンプルなつくり、昔ながらタイル張りのお風呂は、ややぬるめの温度設定と相まって、肩ひじ張らずゆっくり過ごすのに適しています。洗い場は3箇所、リンスインシャンプーとボディソープ、そして石鹸が1セットありました。脱衣場には籠つきロッカーが8つ、小川屋旅館では、日帰り入浴がありませんので鍵はついていませんでした。

展望風呂の様子

そして特徴的なのは、小川屋旅館の展望風呂で使われているお湯は、近傍の温泉地、美又温泉から運んできたお湯だということです。美又温泉の弱アルカリ性単純泉が楽しめます。わざわざ異なる温泉のお湯を使わなくても、と思われるかもしれませんが、これも考えようで、外湯の充実している有福温泉では、街中に点在する外湯めぐりも楽しみの一つ。だからこそ、宿に帰ってからのお風呂は、外湯とはちょっと違った楽しみ方をしたい、と考えることもできます。有福温泉、美又温泉ともに美人の湯として有名な温泉地です。1箇所で二度美味しい楽しみ方も、この小川屋旅館を宿泊先として選ぶポイントの一つではないでしょうか。

今回、災害対応のための現地作業のために宿泊させて頂いたため、食事も通常のものよりもシンプルにビジネス用途で準備(経費的なことがありますので)して頂きましたが、それでも高い品質と十分なボリュームはさすがでした。温泉旅館ながら、素泊まりやビジネスプランなど多様な用途に対応できるもの、この旅館の魅力の一つです。ホームページによると、ペット同伴宿泊用のお部屋も準備されているようで、家庭的な雰囲気でお客さま目線のサービス提供が仕事で疲れた体を心地よく和らげてくれます。

この小川屋旅館さんは、この近年さまざまな苦難に直面されています。2010年8月には有福温泉の旅館街で4棟が全焼する火事がありました。その際は小川屋旅館さんの隣の建物まで延焼し、小川屋旅館がなんとか難を逃れる、ということがありました。そして、今年の豪雨災害。温泉街奥から流れ出た雨水により1階が水に浸かり、半月ほどの間、営業を中止せざるを得ませんでした。観光業・旅館業自体が厳しい昨今の状況で、本当に苦難の連続です。そんな中でも、常に前を向いて歩まれている姿は、経営者としても尊敬しています。

リニューアルしたロビー・フロント

現在、有福温泉の若手経営者が中心となり、カフェや貸し切り露天風呂、新神楽殿などの新たな事業展開が進み、この数年で有福温泉はずいぶんと変わりつつあります。そして火事によって焼失した跡地の再利用計画も策定が進むなど、地域の再生、活性化に向けて取り組まれています。小川屋旅館さんもその中心メンバーとして活躍されています。そして、先月、豪雨災害時の災害ボランティアにお伺いした際も、自らの旅館の被災も顧みず、街中の復旧作業に先頭に立って従事されていたのは、小川屋旅館のご主人でした。そういう姿を間近で見せて頂くにつけ、当社としても何らかの力になりたいと常々考えています。

有福温泉の旅館は、現在すべて通常どおり営業中です。一たび、災害の報道が大きくなされると、風評で入客が減ってしまうそうです。被害は大きく報道されても、復旧したことはあまり報道されません。有福温泉に興味をお持ちのみなさん、復旧を支援する意味でも、ぜひ一度訪問して下さい。当社も、地域に根差した温泉・水源開発に携わる会社として、今後とも、有福温泉のまちづくりに可能な限りお手伝いできればと考えています。