地中熱活用

新規事業に向けて 地中熱ヒートポンプ空調システム稼働1年の成果とスモールZEB完成でさらなる飛躍へ

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協和地建コンサルタント本社にて、平成24年8月から運用開始した地中熱ヒートポンプ空調システムも、運転開始から1年以上を経過しました。この間、貴重なデータを収集する事が出来ました。また、この10月には、今年度の主要プロジェクトとして取り組んでいた、「スモールZEB」が完成し、CO2排出量ゼロ事業所を実現するためのハード整備が整いました。このタイミングで、地中熱ヒートポンプ空調の運転実績を紹介するとともに、これまでの取り組みを振り返り、今後に向けたさらなる飛躍のきっかけとできるよう、まとめてみます。

地中熱空調 消費電力量比較

1.地中熱ヒートポンプ空調システムで年間空調電力消費量22.6%減

平成24年8月から運用開始した地中熱ヒートポンプ空調システムが1年を経過しました。夏場、冬場を経た1年間の運転の結果、「どの程度消費電力量を削減できたのか?」が、大きな関心事となります。

その回答としては、「電力消費量22.6%減」となりました。電力会社からの請求書ベースです。正直なところ、もう少し大きな削減効果が出るのではないかと期待していましたが、1年目の実績としてはこの数値が結論です。初年度ということもあり、能力を試す意味でも積極的に運転しており、電力量がかさんだ面もあります。今後、1年間の運転データを踏まえて、さらなる効率的な運転の実現を目指します。

空調コストは、断熱性能が高い鉄筋コンクリート造の建物等では、比較的近い条件で経年的な比較ができますが、当社のような古い木造の建物では、夏が暑かったり、冬が寒かったりすれば空調コストに直ぐに影響が出ます。また、仕事量が多なって稼働時間が多くなれば、これもまた空調コストに跳ね返ります。このため、空調コストの比較というのは、単年度での比較ではなく、複数年の平均をみながら比較することで、はじめて効果の程度を検証できるものです。ですので、今回の結果は一つの目安ぐらいに捉えておいた方がよいと考えています。(※比較グラフでは、温度設定の条件がほぼ同じの、H18~20の平均と比較しています。)

いずれにしても、「エネルギーコストの削減」は再生可能エネルギーの活用に際して常に着目(※技術的には成績係数(COP)等も重要ですが今回は触れていません)されるところです。地中熱は、再生可能エネルギーの中でも“熱利用”という分野です。太陽光、風力、小水力、など再生可能エネルギーの代表選手はいずれも“発電”しますが、地中熱はそうではありません。だからどれだけ従前と比べてエネルギーコストが下がるかがポイントであり、その追求を引き続き続けていきたいと考えています。

2.「地中熱」がもたらす“幸せ”を発見できるか否かが未来を決める

地中熱空調は、従来型の空気熱源の空調に対し、少なからず初期投資が多くかかります。このため、導入に際しては、エネルギーコストの削減で設備投資を回収できるかどうかが、大きな判断ポイントになります。その一方で、地中熱がさらなる普及を図っていくためには、単なるエネルギーコストの削減だけでなく、プラスアルファの魅力が必要ではないかと考えています。

すなわち、「地中熱」を採用することで、利用する方が“幸せになれる何か”があるのではないか。小さなことでもいいと思います。それがあれば、単なるコスト比較の議論から脱却できます。何より、日本全国どこでも利用可能な「地中熱」という再生可能エネルギーの普及が進まないのは、非常にもったいないことです。今、「地中熱」空調がもたらす(小さな)“幸せ”として認識していることが3つあります。

一つは、「潤いあるやさしい風」です。これは、地中熱空調システムが冷温水配管によって配管されていることによるもので、室内には適度に湿度を保った風が供給されます。これは技術特性上“結果的に”そうなっている面が強いのですが、実際に運転している当社の執務室内は湿度40%~50%程度に保たれており、とても快適に過ごすことができました。経済的なメリットが生まれる長時間空調が必要な病院や福祉施設などを利用する方のことを考えると、同じ冷暖房でも、適度に湿度を保った空気を供給することで、より過ごしやすい、体に優しい空間をつくっていくことにつながります。「過ごす人にやさしい」と言えます。

二つ目は、空気熱源空調と異なり「室外機」が存在しないことによるメリットです。室外機から冷風(暖房時)、熱風(冷房時)を屋外に排出しないので、特に密集市街地などでは隣接地との関わりを気にする必要がなくなります。「お隣りさんに優しい」と言えるでしょう。このことは、施設設計時にも係わりがあり、設計者の設計の自由度が高まる、ということがあります。室外機の設置場所の確保と目隠しの工夫等の考慮は手間であり、制約になります。その必要がなくなり(その代わりヒートポンプやストレージタンク等の機械室が必要なりますが)、設計、特に意匠における自由度が高まると考えられます。「設計者にやさしい」と言えるでしょう。

最後は、既に言われていることですが、ヒートアイランド現象の抑制、そしてCO2排出量の削減です。「地球環境にやさしい」と言えるでしょう。これらのちょっとした「幸せ」をもっとPRしていく必要があるし、さらに発見していくことが出来るか否かが、さらに地中熱活用が進むためのポイントになると考えています。

3.「スモールZEB」完成をきっかけに新たな飛躍へ

協和地建コンサルタントのでは、平成25年度の主要プロジェクトの一つとして、本社屋における「スモールZEB」(ZEB:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の構築に取り組んできました。そして、10月20日、本社社屋の全事務室の二重窓化(高断熱窓導入)、本社及び倉庫の全照明のLED化を実施しました。平成25年8月から導入している太陽光発電設備(36kw)、前述の平成24年8月から運転開始している地中熱ヒートポンプ空調とあわせて、実質的なCO2排出量ゼロ事業所が完成しました。電力量で言えば、年間で33,000kwhを発電し、従前は41,000kwh程度消費していた電力量を27,000kwhまで縮減します。

当社では、地中熱ヒートポンプ空調+太陽光発電システムを中核としたCO2排出量ゼロ事業所を、「スモールZEB」と定義し、小規模事業所におけるエネルギーの地産地消モデルとして事業展開していくことを目指しています。スモールZEBに取り組む当社にとっての意義は、地中熱ヒートポンプ空調システムをエネルギー有効活用のパッケージの一部とすることによる地中熱の導入促進です。そして、もう一つの意義は、関連する様々な設備や商品の地域における市場の活性化です。このパッケージには、地中熱以外にも様々な設備や商品が必要です。このコンセプトの普及によって、その設備や商品の需要が促進に少しでも影響を与え、取り扱う企業の成長につながれば、地域の経済活動の活性化に貢献することになります。ひいては、当社の活性化にもつながってくる、と考えています。

当社のスモールZEBでは、空調コストの効率化に向けた高断熱窓(二重窓)の導入も行っています。この設備により、地中熱空調の運転効率は更に高まることが予想(そうなると以前との比較がしにくくなるというデメリットもありますが)されます。事務所の電力消費の中心は、空調と照明です。これをいかにコントロールするかが、エネルギーコストの削減のポイントです。地中熱空調はその鍵となる技術であることは間違いありません。今後の1年間は、このスモールZEB全体の運用状況を把握し、発電量と消費量とのバランスを中心に、その達成度合いをモニタリングしていきたいと考えています。

協和地建コンサルタントのスモールZEB

今回、全社屋をLED化したことで社内がものすごく明るくなりました。作業環境が向上したのはもちろん、職場の清掃や整理整頓が出来ているか否かが、より目につくようになったと感じています。また、二重窓化によって遮熱断熱性能が高まっただけでなく、静粛性も各段に高まり、執務室内ではより作業に集中できる環境ができました。スモールZEBは、エネルギーコストのバランスを取ることを趣旨としていますが、さまざまな環境設備を導入することで、付随した様々なメリットも見えてきます。当社自らがこのパッケージを運用し、エネルギーの地産地消の実現、そしてより快適で効率性の高い職場環境の実現を実証してきたいと考えています。

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