2014
02.27

2014年2月22日(土)、島根同友会の第1回経営指針成文化セミナーフォローアップ検証会が開催されました。この企画は、島根同友会会員企業で経営指針の成文化を実施した企業を対象に、経営指針策定後の実践状況を振り返り、実践に際しての問題点、今後に向けた課題などを報告して頂くものです。経営指針策定の必要性、意義を明確にしていくこと等を期待して実施したもので、島根同友会としては初の試みです。今回、島根同友会において先駆けて経営指針を策定され、実践されてきた5名(5社)の経営者に報告を頂きました。勇気を持って自らの実践経過を報告して頂いた報告者のみなさまに経緯を表するとともに、今回の学びを次につなげていけるよう、報告の一部とその中での私なりの気づきを整理しておきます。

検証会の様子(参加者は報告に聴き入る)

1.自分の会社は経営指針のある会社、だから潰れない~会社の履歴を俯瞰する~

(有)ピー・エム・エーの瀬崎さん(松江支部長)は、赤字が続いて経営環境が厳しくなる時期を経て現在に至っているという報告をされました。本当に厳しい状況の中、「自分の会社は経営指針のある会社だ。だから潰れない。」と言い聞かせて取り組んだと話されます。厳しい中だからこそ、経営指針に立ち返り、経営を立て直した経験を話して頂きました。

当たり前のことですが、「経営指針があれば経営は順風満帆」という訳ではありません。外部環境の変化をはじめ、様々な困難が襲ってくるのは経営指針が有っても無くても同じことでしょう。しかし、その局面にどう立ち向かうのか、という点については、“ベースとなるものが有るか無いか”で大きな違いがあることは間違いありません。瀬崎さんも、最後は「代案があれば言ってくれ、無ければ自分の思い通りにさせてくれ」と社員を説得し、危機を乗り切るための施策を講じられたそうです。「ベースになるものが無ければ経営者もブレてくる」と振り返られます。

現在、経営状態は好転し、次のステップを目指していらっしゃいますが、厳しい時期の経験も踏まえた経営指針の効用として「会社の履歴が分かることがいい」と話されます。長く経営していればいい時期も悪い時期もある。一歩引いて会社の履歴を俯瞰的にみると、それが見えてくる。そうすれば、些細なことでは一喜一憂しなくなる、という訳です。

私は会社を引き継いで5年目ですが、確かに最初の頃はちょっとしたことで一喜一憂していました。今もゼロではありませんが、経営者としての経験がふえるに従って、落ち着きを持ちつつあるように感じます。それは、経験を積んで色々な事が見えてきたこともあると思います。会社の履歴を明らかにするのは、その様々な経験を“見える化”し、ぶれない方向性を信じて進むことの重要性が改めて見えてくる、ということだと理解しています。

2.経営指針がなかったら社員は不幸せになっていたと思う~経営指針で飯が食えるか~

(有)出雲樹脂の今岡さん(出雲支部長)は、「経営指針で飯が食えるか」という命題、すなわち、実際のところ経営指針が有っても無くても業績にはあまり関係がないのではないか、という疑問に対して、明快な回答をされました。それは、「経営指針がなくても、同じぐらいの業績にはなっていたかもしれない。でも、経営指針がないままで同じ業績だったら、社員は不幸せだったと思う。」という言葉です。経営指針の本質を突く説明として、今回の検証会で最も記憶に残っている言葉です。

中小企業の業績は、外部環境によって大きく左右されるという実態があります。これは否定しようがありません。例えば、大手企業の下請けを主体にする企業であれば、発注元の会社の業績や景気の動向に左右されます。だから、会社によっては、売上自体は、経営指針が有っても無くても大きく変わらない、というのも一面の真実でしょう。しかし、同じ売上を確保したとしても、そこで働く社員が幸せに働いているのか。これは大きな論点だし、幸せに働けない会社が将来に向けて発展できるのか、大いに疑問です。

なぜ、今岡さんがそのように話されたのか、それは同社がリーマンショックにおいては大きな影響を受けたことによります。大幅な受注減にもかかわらず、社員を大切にするという経営指針の方針に基づき、人員削減することなく乗り切りられたそうです。さらに仕事が少なくて時間があったので、その間に社員教育などに積極的に取り組まれた。その結果、景気回復後の仕事増にも、既存の要員で上手く対応できたということです。そして、その本当に厳しい局面を全員で共有することを通じ、“危機感の実践的共有”が図られたと振り返られます。そして、会社が自分達を大切にしてくれた、という社員の想いは、会社の次のステップにつながっていることは間違いありません。

3.個人の努力とチームとしてのまとまりで成果をあげていく~小さな会社だからこそ~

(有)山陰エスピープランニングの内田さん(島根同友会理事)は、「中小企業の社員は能力のある人ばかりではない、だから、チームとして取り組んでいくことが必要。」と話されました。中小企業は、個人の努力とチームとしてのまとまりで仕事にあたる、ということです。事実、中小企業の人財は限られます。飛びぬけて優秀な社員がたくさんいる訳ではない。それをフォローするのは理念であり、仕組みであり、組織力であったりするでしょう。それを上手く引き出すのが経営指針であるという訳です。

また、「小さい会社なりに努力していく」ための方策として、“説得力を高める”ことの大切さについて教えて頂きました。例えば、同社では給料については詳細なテーブルや昇給基準などを設定し、社員に開示されています。“小さな会社だから社長が雰囲気で決めているんじゃないか”といったことを社員に思わせない。様々な事に対して根拠を示すことが大切だと語られます。さらには、意識改革できない社員に対する説明用資料としても、経営指針が力を発揮しているということです。

小さい会社だからこそ、経営指針を明確に定め、進むべき方向を明らかにする。小さい会社だからこそ、10年、20年スパンで社員の人生設計に合わせてどうしていくかを考える。それを経営指針という形で社員に伝える。経営指針の策定は、会社の大小は関係ない、社員と経営者との関係をどう捉えるのか、という経営者の思想、考え方によるものなのだと感じたところです。

島根同友会 小田代表理事も報告

私は、平成23年度に経営指針成文化セミナーに参加して自社の経営指針を策定しました。経営指針に基づいた経営に取り組み始めてから2年が経過、4月からは3年目に入ります。3年を過ぎれば、当初3カ年計画で描いた姿がどれだけ実現出来て来ているかを検証するタイミングを迎えます。もちろん、同友会としての検証会があろうが無かろうが、経営者自らが計画の進捗や実践状況をチェックし、さらに改善していくという、いわゆるPDCAを回さなければなりません。しかし、経営者も一人の人間。一人でやっていれば、怠けたくなる気持ち、現実を直視したくない気持との戦いもあります。そんな時に、一つの報告の場として、定期的にこのような機会があれば、自らを律する機会となるし、また、自らの実践状況を報告することで、一緒に経営を学ぶ多くの経営者から様々な助言を受ける機会も得られます。経営指針策定後の節目、節目で自らと自らの会社をさらに高める機会を提供できるよう、継続的にこの検証会を開催していきたいと考えています。

2014
02.20

2014年2月13日(木)~14日(金)、第44回中小企業問題全国研究集会が広島にて開催されました。この大会は、全国中小企業家同友会全国協議会(中同協)が主催する全国大会の一つです。全国の中小企業経営者1,400名が集い、様々な分科会に分かれて中小企業の経営課題について討議します。今回、私は第12分科会「エネルギーシフトで持続可能な地域づくりを」へ参加しました。2013年10月に実施された、中同協によるドイツ・オーストリア視察の成果を踏まえた分科会です。再生可能エネルギーの活用をはじめとしたエネルギー政策の転換により、エネルギーの地産地消を進め、そのことを地域の中小企業の仕事づくりにつなげて行こうという提言があり、今後の可能性や方向性に関する議論が行われました。当社としての今後の方向性にかかるヒントを得られるのではないかと考え、参加したものですが、同友会会員でエネルギー問題に関心のある企業、既に様々な取り組みをスタートされている企業が参加された分科会であり、大いに気づきを得ることができました。テーマである「エネルギーシフト」の考え方、今後の可能性など、今回の分科会での気づきを整理しておきます。

報告する阪南大学 大槻名誉教授

1.「エネルギーシフト」の3本柱~単なる省エネや発電ではない~

今回のテーマである「エネルギーシフト」。イメージ的には何となく分かりますが、その中身を理解する必要があります。視察先のドイツでは、3本柱から構成されているとの説明がありました。

1つ目は、「建物の断熱性向上」です。断熱性を高めることで熱負荷を軽減し、使用するエネルギーを少なくする。いわゆる“省エネ”という分野になります。非常に肉厚の断熱材や三重窓の採用など、住宅の断熱性を高める技術の導入について紹介がありました。ドイツでは法律により室温が17℃以下となる住宅は造ってはいけないという規定があるそうで、そのため高性能の断熱材の採用や三重窓による高断熱化が進み、既存建物のリニューアルも盛んに実施されているようです。

2つ目は、「コージェネレーション等による熱利用効率化」です。コージェネレーションは、主にガス系の内燃機関の排熱を利用して、動力や温・冷熱、さらには再度発電を行うことで総合的なエネルギー効率を高めるシステムのことを言います。バイオマス発電とそれに伴う熱供給で地域冷暖房を実現する事例等の紹介がありました。“エネルギー利用効率向上”という分野であり、発電や熱利用も含めて効率的なエネルギーの活用を目指します。同じ量の燃料を使っても、利用効率を高めることでより多くのエネルギーを得よう、という発想です。

3つ目は、再生可能エネルギーの有効活用です。太陽光発電、風力発電、地熱発電など、再生可能エネルギーを活用して電力を得る、という“再生可能エネルギー発電”の分野となります。

この3つを総合的に推進するのが「エネルギーシフト」。こうしてみていくと、エネルギーシフトは、火力発電や原子力発電から再生可能エネルギーによる発電へ切り替える、という電源構成の転換ではなく、発電はその一部であることが分かります。発電は、エネルギー量の面では大きなウェイトをしめるかもしれませんが、それも含めて、もっと大きな転換を指していることが分かります。

2.エネルギーシフトと中小企業~どうやってビジネスにつなげていくのか~

エネルギーシフトによって、中小企業にどのような影響がもたらされるのか。そこにどのようなビジネスチャンスがあるのか、経営者の視点はそこに向けられます。前述の3本柱それぞれにについて考えてみます。

1つ目の“断熱性向上”は、ドイツの場合、住宅の断熱性能の確保を法律で規定することで、新しい市場を生み出しているといえます。そして、それは中小企業の振興施策に通じることを前提に実施している訳です。国が政策面で中小企業重視の姿勢を打ち出している点が大いに注目されるところです。2つ目のコージェネレーションも、大がかりなプラントになれば大手メーカーの出番となるでしょうが、最適なシステム検討を担うエンジニアリング部門においては、地域社会に精通した中小企業にも出番があります。さらに地域冷暖房など裾野の広いシステム(熱供給施設から個々の住宅までが施工範囲)の施工においても活躍の場が多々あると考えられます。3つ目の再生可能エネルギー活用は、言うまでもなく、各発電設備の設置や施工において中小企業の活躍の場がたくさんあると考えられます。

前述のとおり、エネルギーシフトはドイツの国策です。国として、既存の社会構造を転換させ、新たな市場や雇用を造り、国力を高めていこうとするもので、国としての思想、戦略です。わが国も、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入等、再生可能エネルギーの復旧に向けた施策に力を入れていますが、まだ緒に就いたばかりです。それが今後とも強力に推進されていくのかどうか、この分野において事業を伸ばそうとする経営者は注視しておかなければなりません。

一つ印象に残っているのは、化石燃料のコストは上昇していく可能性が高いのに対し、普及により再生可能エネルギーのコストはどんどん下がってくると予想される、という話です。今後とも原発は残るかもしれないし、当分の間は化石燃料も使い続けなければならないでしょう。それでも、省エネ、エネルギー効率化、再生可能エネルギー、の分野はさらに技術革新やコストダウンが進み、それに伴い市場が拡大する分野であることは間違いありません。いち早くシェアを確保し、ノウハウと実績を積んだ中小企業に大いなるチャンスが巡ってくる可能性があります。当社としても、そのチャンスに大いに挑んで行きたいと考えています。

3.エネルギーシフトのもたらすもの~エネルギーを媒体に地域でお金を回す~

「エネルギーシフト」とは、単なる省エネではなく、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことでもない。社会構造全体の転換、都市計画、建築、教育、地域社会を構成する様々な要素を含んだ大きな、社会構造そのものの転換だとされます。そう言われても中々理解することができません。しかし、理解するためのキーワードが補足報告の中にありました。それは、「エネルギーは国がつくるもの、と思っていたが、これからは地域がつくるものになる。」という説明です。

長い間、電気は電力会社から買うものでした。それが、今は太陽光パネルで自ら発電することが珍しくなくなっています。自分で使う電気は自分で発電した電気で賄っている家庭も増えています。そうなると、従前は電力会社に支払われていた電気代は、太陽光パネルやその設置工事費となって地元の工務店等に支払われており、今まで存在していなかった新しい価値が生まれたことになります。これは、地域のお金が、より身近な地域で回ることを意味します。今まで大資本へ流れていたお金が、より身近な地域で回る。お金が回ればそこに雇用が生まれ、生活がはじまり、消費が発生し、また新たな市場を生む。エネルギーをきっかけに地域でお金を回す仕組みを作る、或いは、地域にお金を回す選択肢を増やし、地域全体の経済活力を高めていく。それが地域の持続的発展につながる、ということだと理解しています。

なお、ドイツにおけるエネルギーシフトは、原発の撤廃が前提です。加えて、化石燃料を減らし、再生可能エネルギー中心の社会へ転換していくことを目指しています。そのことについて長い議論の末に国民の合意が出来ています。一方、わが国では、いわゆる“脱原発”に関する議論の結論は出ていません。今後、原発依存度が低くなっていくことは間違いないところかと思いますが、我が国においてどのような方向性が定まるのか、国民的な議論の決定には今しばらく時間がかかりそうです。今回の分科会でも、脱原発、原発廃止について多くの意見が出たようです。しかし、原発に賛成か反対か、という議論に入り込んでしまうと普及が進まない、という印象も強く受けました。

今回の報告のまとめでも、「エネルギー問題の中から地域の中小企業の強みを活かせる新しい仕事が出てくるだろう。それにいかに対応していくかが課題。」という総括がありました。その点については同感ですし、経営者としてはそこに注力して今後のかじ取りを考えたいと思います。

グループ討議の様子

この「エネルギーシフト」に関する分科会、一つ気になることがありました。現在、中同協ではエネルギーシフトの推進に向け「中小企業家エネルギー宣言」なるものを取りまとめ、政策提言していく準備を進めているようです。その原案を読んで気になるのは、「脱原発」を前提とした内容であるということです。この原案のまま方針決定されれば、同友会活動を“原発に賛成か反対か”、という議論に巻き込むことになりはしないかと懸念します。私は原発肯定派です。反対派の方がその立場で意見を主張し、活動されるのは結構なことですが、中小企業家同友会という組織が、組織として、脱原発・原発反対を前面に掲げる政策に舵を切るのはいかがなものかという気がします。会員の中にも賛成派・反対派が分かれるでしょう。省エネ、エネルギー効率化、再生可能エネルギー活用、というエネルギーシフトの3方策は大きな可能性を秘めています。当社も、地中熱をはじめ、再生可能エネルギーへの取り組みに大きく軸足を置いています。同友会がその分野の取り組みを推奨することも大いに歓迎です。だからこそ、それは、原発の是非を問う活動とは切り離し、あくまでも中小企業のビジネスチャンスの拡大という観点で推進されることを期待したいと思います。

2014
02.14

2014年2月7日(金)、島根県中小企業家同友会 出雲支部2月例会が開催されました。この日は、「『できない理由は考えない!どん底から1年で奇跡の会社再建 ~債務超過・社員の笑顔が無い会社を、入社4年目の経営者が変えた~』と題して、協栄金属工業株式会社 代表取締役 小山久紀さんから報告を頂きました。同社は、昭和47年に設立され、島根県雲南市掛合町で金属製品製造業を営む会社です。代表取締役の小山さんは、この会社に中途入社してわずか4年で社長を引き継がれました。同社は、地元の雇用確保を大きな目的として設立されたものの、厳しい経営環境の中で借入金が膨らみ債務超過に陥り、切羽詰まった状況の中で大規模なリストラも実施せざるを得ませんでした。そんな中、社長に就任され、崩壊しそうな会社で奮闘されました。その結果、社長就任後、会社はV字回復を果たし、県内外からも注目を集めています。今回、小山さんの経営者としての覚悟、心がまえ、強い意志を伺い、取り組みの経緯についてお話を頂きました。

報告する小山さん

1.投資の決断と資金調達が経営の生命線

今回の報告では、小山さんが入社4年目で経営者になるときの覚悟、入社早々にリストラを担わされた後悔や、さらには前職のゴルフ場が倒産に至ったことの反省、やはり中小企業は経営者の覚悟で一気に会社を変えるという実例を紹介頂いたと思います。

その一方、多くは語られませんでした、業績を改善させるための手法として大きな役割果たしたのは、現場の生産体制の改善だと感じました。その肝は、「少量多品種の受注形態になっていたのにも関わらず、大量生産型の体制を取っていた」工場の体制転換にあると理解しています。協栄金属工業は、広大な敷地に様々な生産設備を有すると強みの一方、「造るより運搬している時間の方が長い工場だった」と表現されるように、生産効率に大きな問題を抱えていた工場だったようです。おそらく、そのことに小山さんは早くから気づいていたものの、経営の意思決定体制が整わない中で後送りになり、その間に業績がさらに悪化し、益々改善できなくなる、という悪循環にはまっていたものと考えられます。

だから、小山さんは社長就任早々、大がかりな生産体制の改善を指示し、あわせて「お金のことは心配するな」というメッセージを打ち出します。これは、中小企業が投資を決断するタイミングについて大きな示唆を与えて頂きました。企業存続の生命線の一つになりうる投資の意思決定。やればいいと分かっているが、「もし上手く行かなかったら」と思うと決断できない。小山さんの場合は、「そうするしかなかった」と話されますが、改善のための投資を行うしか前向きな選択肢がなかったのも確かでしょう。しかし、それでも意思決定出来ない経営者もいるだろうし、そもそも投資のための資金調達が出来ない企業もあると思います。協栄金属工業の場合は、小山さんが本気で策定された経営再建計画に加え、金融機関やオーナー企業など様々な支援が合った中で、そのような選択肢を選べたのだろうと推測しています。

生産形態の転換が図られれば改善の余地がある、という経営者としての目論見、やるしかないという経営・財務環境、厳しい中でも資金調達ができた支援体制、これらの要素が整った事が、協栄金属工業のV字復活につながったのではないかという印象を持ちました。そこから感じられるのは、未来に向けた投資を意思決定ができる環境にあるのであれば、勇気を持って決断することの重要性です。

私も、社長就任当時は恐ろしくて投資が出来ませんでした。経営状態が良くなかったこともあり、経費を減らすことばかり考えていましたし、“投資などもってのほか”と考えていました。今振り返れば、その時期に徹底した経費節減を行ったから次のステップで回復基調に乗れたのだと思いますが、ずっと経費節減だけにこだわっていたら業績の回復は無かったと思います。では、何が転機になったのか。それは、やはり「経営指針」です。小山さんも、縁あって大坂同友会での学びを通じて経営指針を策定され、転機につながっています。経営指針が、経営者の未来に向けた投資の意思決定を後押しする。大きな役目を担っていることを再認識させられました。

2.決算書に乗らない資産~“社員”という財産の価値を高める~

「社員は費用ではなく資産です。」という言葉が印象に残っています。

業績が急激に回復した要因の一つに、「社員を信じて思うようにやらせたから」という理由を上げられました。一方で、「出来ない理由は考えない」という報告のテーマにもあるように、改善を進めようとすれば社内から様々な“できない理由”が出てきます。社員を信じて思うようにやらせる前に、社員が思うようにやろうという気持にさせなければなりません。そこで大きな力を発揮したのが、出来ない理由を封じ込めるキーワード。「お金のことは心配するな」です。特に製造業の場合、業績の拡大と生産設備の投資は表裏一体です。製造業を続ける限り、設備投資が必要な場面が出てくる。そこにお金という問題が絡むと、それが出来ない理由になる。しかし、それを封じれば、もう思い切ってやるしかなくなります。製造現場の経験の無い小山さんにとっては「任せるしかない」ことになりますし、それが、「社員を信じる」ということにつながると考えられます。

この点については、「社員を信じて任せることによっていい成果を出してくれる可能性」にかけたと言う事でしょう。いちいち口出しするのか、信じて全て任せるのか、時と場合によって選択は分かれるでしょう。「本当は社員にできる力があった。引き出せていなかっただけだ。」とも語られます。同友会には「人間の可能性を信じる」という考え方があります。人間の無限の可能性。環境が変われば、意識が変われば、何かのきっかけで思いもよらない力を発揮するのが人間。そのスイッチの一つに「信じて任せる」という選択肢があることを、経営者が知らなければならない。私自身も改めて認識させて頂きました。

現在、小山さんは社内に向って「リストラは絶対しない」と宣言されています。だから成果を上げ続けなければならない。言うのは簡単ですが、外部環境に大きな影響を受けやすい業種では大変なことです。しかし、退路を断って決断すればできることもあります。その意志が社員のみなさんに伝わるから、後述のとおり多くの社員のみなさんの協力を得られ、改革が進んでいるのだと実感します。

3.一つ一つの実践を通じた成功のスパイラル

小山さんが語るV字回復の秘訣は、「一つ一つ出来ることから実践していった」というものです。

その前提として、経営者がやるべきことを大きく2つ示されました。一つは、「正しい経営方針を定めること」、もう一つは「好ましい企業風土をつくること」です。前者は、言うまでもなく経営指針の確立です。いくら環境が厳しくとも会社を維持発展させるため、内部・外部の経営環境を把握し、進むべき方向を定めなければなりません。一つ一つの実践の第一歩はやはり経営指針により経営の方向性を定めることだと改めて認識させられます。では、その方向性はどうやって定めるのか。そこに、同友会の仲間の存在があると思います。特に小山さんが学んだ大阪同友会は中小製造業の集積地でもあります。そこで切磋琢磨する経営者の方々にはたくさんの学びの蓄積と実践事例があります。そこに自社の経営環境を当てはめ、真剣に考えていくことで、一人で考えていては決して生まれることのない、目指すべき方向性が生まれるのだと思います。

もう一つは、成功のスパイラルが循環するように根付かせること、と話されます。前述の、社員を信じ、任せて行う一つ一つの改善活動。一つ成功すれば自信になる。良いと思ったことはまずやってみる。上手く行かなかったら直ぐに見直す。これを繰り返していくうちに、社員の中に成功体験が積み重なり、その成功体験が次の新たな提案を誘発する。そういう循環が出来るまで、一つ一つ地道に続ける、ということでしょう。現在、協栄金属工業は、会社回復の成功事例として地方誌や全国誌に取り上げられたり、また、経営改善の秘訣を知ろうと多くの視察者が訪れたりするようになったそうです。その対応をしていくことで社員のモチベーションがまた上がっていく。これも成功のスパイラルの一つでしょう。

「ほとんどの社員は協力してくれた」と話されます。誰しも、自分の会社が良くなった方がいいと考えているはずです。当初は、小山さんの方針や考え方を信用できない社員もいたかもしれません。しかし、小山さんがおっしゃるように一つ一つ実践し、成果を出していくことで、少しずつ理解が深まり、社内の気持ちがまとまってくるのではないかと感じます。だからこそ、成果を出し続けなければならない。そのプレッシャーも大きいでしょう。しかし、講演される小山さんからは、今後とも必ず良くなると信じている、その確信を感じます。社員を信じ、自分地指針を信じる。経営者自身が信じることの大切さ、あたらためて感じたところです。

120名を超える大例会

小山さんは、同友会での学びを通じて、自分自身を変え、会社を立ち直らせました。同じ同友会で学ぶ経営者として大変うれしく思います。しかし、小山さんが学ばれたのは、島根同友会ではなく、大阪同友会です。先に大阪の同友会を知り、そこに飛び込まれ、経営指針の成文化をはじめとした学びを実践された訳です。なんとなく残念な気もしますが、会社を良くするために同友会で学ぶ訳ですから、どこの同友会でも成果が出ればいい訳で、そのこと自体はあまり気になりません。しかし、それだけ島根同友会の存在感というものは島根県内においてまだまだ薄いものだということは認識しなければならない(小山さんが社長に就任された4年前とはだいぶ違ってきていると思いますが)と考えています。すなわち、経営に悩まれ、何とかしたいと考えている経営者が居ても、その手助けになるかもしれない同友会の存在を知り得ない。同友会の学びがその方やその会社に合う、合わないがあるにしても、存在を知る機会がないというのは、その会社、引いては島根の地域経済にとって損失です。そんなことを、改めて感じる機会にもなりました。私も昨年から島根同友会の理事を仰せつかっており、その一員として、少なくとも、島根にも中小企業家同友会という学びの場がある、という事だけは、広く県内の経営者に知って頂けるよう、引き続き取り組んで行きたいと考えています。

2014
02.07

2013年12月13日、2014年1月30日、まちエネ大学山陰スクールの第2回、第3回講座が開催されました。この「まちエネ大学」は、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の普及促進施策の一環として経済産業省資源エネルギー庁が実施するもので、持続可能なまちづくりの推進に向けて、再生可能エネルギーの活用による、地域での新しいビジネス創出のための人材育成事業です。全国5箇所で計4回の講座が開催され、この山陰エリア(松江)も会場の一つに選ばれています。2013年11月に第1回講座が開催され、その後第2回、第3回と続いてきましたので、引き続きその概要をまとめておきます。

水上弁護士を囲んでミーティング(第3回)

1.市民がやるにしても一定の規模感があった方がインパクトがある

第2回講座では、全国各地で再エネ事業のプロデュースに多く関わっている、サステナブルコミュニティー・プロデューサーの大和田順子さんを講師にお迎えし、各地の成功事例を参考に、再エネ事業を展開していく上でのポイントを説明して頂きました。

第一に掲げられたのは、「市民リーダーの存在」ということです。やはり、成功している事例には素晴らしいリーダーがいらっしゃる、ということです。これは、事業であっても、まちづくりであっても、外せないポイントの一つでしょう。そして、詳しく紹介頂いた「いわきコミュニティ電力」の事例では、3人のリーダーがいて、それぞれ役割分担をされている、という話もありました。一人ですべて抱え込むのではなく、役割分担し、協力しながら前に進めていく。これもとても大事なことだと感じます。

そして、今回の講演で一番印象に残った言葉は、「市民がやるにしても一定の規模感があった方がインパクトがある。社会への訴求もある。」というものです。確かに、市民が実施する再エネ事業の規模感は、いわゆる“メガソーラー”等のような1万kWクラスの発電規模ではなく、数十kW程度であることが多いと思います。資金的にも事業運営的にも一つ一つの発電規模は小さい。しかし、それをまとめることで1,000kWを確保する。50kWも20箇所あれば1,000kWになる、という考え方です。私自身、これまでは、「地域の事業だから小規模でも致し方ない、やることに意義がある」という考え方をしていましたが、社会への訴求を考えて行く際には、やはり発電規模に着目していくことも重要で、1箇所だけで実現しようと考えなくてもいい、という発想の転換に気づく機会となりました。

もう一点、事業者(企業)の立場で参画している私のような者にとってのキーワードとして、「CSV(クリエイト・シェアード・バリュー)」という考え方を紹介して頂きました。“一緒に新しい価値をつくって共有する”という考え方です。すなわち、企業の本業にとってもいい影響を与える新しい価値をつくる。具体例としては、全国ホテルチェーンのスーパーホテルが取り組むメガソーラーでは、売電収入の一部を使って地元の農産物を購入する、という取り組みを実施されています。年間2,000万円が地元に落ちるそうです。スーパーホテル側も、売電収入を地域に還元していることで企業イメージ、そして業績への向上につながることが期待されます。そういう観点から、当社のたずさわる再エネ事業の価値はなにかを考えなくてはならない。漠然と、再エネが立ちあがることによるインパクトが価値になると考えていましたが、“お金が地域に落ちる”といった目に見える波及効果についても、何か見出していけるよう、引き続き考えて行きたいと思います。

2.長くても3年先までに事業化する~代替プランも準備しながら進める~

まちエネ大学山陰スクール第3回の講師は、各地の再エネ事業について法務面からアドバイスすることを目的とし、NPO法人再エネ事業を支援する法律事務所の会」の代表を務める水上貴央弁護士を講師にお迎えしました。

第3回の受講に先立ち実施された事前学習は大変参考になりました。事業が具体化してくる際に必ずつきまとう法務面のリスク。例えば、事業用地の賃貸借については、長期間にわたって実施する事業だからこそ、その権利関係を最初にしっかりしておく必要があります。また、事業途中に起こりうる様々な訴訟リスクにどう備えるか。太陽光発電については先行しているだけに、事業にまつわるトラブルも事例が多くなっているということです。

また、山陰スクール内にできたグループに対して、3つの宿題というものが出されました。「どのような事業をやりたいのか?何を目指すのか?」「事業の中で自分が果たす役割は?」「計画している事業を自分たちが担う必然性は?」という3つの質問に明確に答えられるようにしておく、というものです。漠然と再生可能エネルギーを使って何かできないか、というところからスタートしている各グループが、一つ先のステップに進むため必要な設問と言えます。まちエネ大学は、再エネを活用した事業を具体化していくことが目的ですが、この質問は、再エネに限らず、広く事業一般に当てはまります。再エネを活用した事業であっても事業は事業。多くの場合は、会社をつくって再エネを通じた収入で会社を運営していくことになります。その時、事業の目的やその事業の存在価値を考えた上で具体的な検討に移るのはごく自然な流れと言えます。

もう一点は、「長くても3年先までに事業化する」というアドバイスです。いつかやろう、そのうちできたらいい、では駄目ということです。「いつか、いつかと思うなら今」という訳です。長期的に考えざるを得ない案件でも、それと並行して今できることが何かないのか、それを考え、実行に移しておくことが大事だと言う指摘を頂きました。確かに、長期的なスパンで考えていた事業を結果的に断念せざるを得ない場合、それ一本に絞っていれば、それを断念した時点で全てが消失してしまいます。事業プランの代替性を確保しておくという視点、事業の継続性という観点では重要な視点です。

今回、再エネ事業を念頭に置いて助言を頂きましたが、事業一般に共通する気づきを頂きました。自社で進めている新たな取り組みにおいても、これらの観点を踏まえながら、進めて行きたいと考えています。

3.役割分担による具体的事業計画の深掘り~各地の同志とつながりあう~

まちエネ大学山陰スクールでは、第2回講義で7つのグループが誕生し、第3回も引き続きグループで具体化に向けた協議を深めました。

私は、「有福温泉地熱発電+カスケード利用支援プロジェクト」というグループを立ち上げ、そのリーダーを務めることとなりました。このプロジェクトは、島根県江津市の有福温泉で地熱発電を行い、発電後の温水を地域内で有効活用することで地域の活性化を図ろうというものです。発電は、現在の泉源に影響を与えない場所で新しく温泉井を掘削した上で実施するという計画です。とても大胆な計画ですが、有福温泉の地下深部にかなりの熱源が存在することはこれまでの調査で明らかになりつつあり、後はそれをどう具体化していくか、検討を進めているところです。このプロジェクトは、まちエネ大学が有る無しに関わらず、有福温泉のみなさんと一緒に進めている案件です。

まちエネ大学でプロジェクトとして提案したのは、まちエネ大学に参加して頂いているみなさんにこういったプロジェクトがあることを知って頂き、再エネ事業にかかわる専門家のみなさんからこの事業に関する助言やアドバイスを頂きたいと考えたからです。グループに参加して頂いたメンバーのみなさんからは、地域での合意形成や理解促進の場に、他地域で再エネ事業を実施しているメンバーが加わることで、より客観的で分かりやすいメリットの説明ができるのではないか、などのご意見を頂いています。有福温泉で実施しようとしている事業ですが、地域単独で進めるのではなく、再エネをつかって地域を良くしていこうとしている各地のメンバー、いわば同志と一緒に事業を進める。そういったアイデアは、私たちだけでは思いつきません。そういった広がりを得られるのも、こういった場に出て、自分達のやりたいことをアピールできたからこそだと思います。

まちエネ大学は、全国5箇所で開催されていますが、山陰地域が開催地の一つに選ばれたのも、一つのご縁だし、非常に貴重な機会を頂いたと思います。事実、山陰スクールには、広島や兵庫など、山陰エリア以外からの参加者もいらっしゃいます。その機会をしっかりと活かし、有福温泉におけるプロジェクトを少しでも前進させることが出来るよう、引き続き取り組んで行きたいと考えています。

各グループが熱心に議論(第3回)

まちエネ大学山陰スクール、次回はもう最終回です。各チームによる事業計画のプレゼンテーションが実施されます。単に発表するだけでなく、審査員の方がいらっしゃって、その内容が評価されるとのこと。また、まちエネ大学は、各地域の金融機関が協賛されているので、評価の高い案件については実際の事業化に向けた助言やアドバイスなども頂けるようです。私のグループもいい成果を発表できるよう、頑張っていきたいと思います。