島根県技術士会

島根県技術士会 島根県立大学交流企画~「The 仕事人s‘day」で、働く意味を話し合う~

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2013年1月30日、島根県技術士会青年部会と島根県立大学との交流企画、「The 仕事人s‘day 島根県技術士会青年部ワールド・カフェ」が開催されました。島根県技術士会青年部では、これまで、島根大学及び松江高専との産学交流会イベント(平成24年度はこちら)を開催してきましたが、島根県立大学との交流は初めての企画となります。

今回の企画は、「働くってどういうこと?」というテーマで、これから就職活動が本格化する3年生を主対象に、技術士会青年部メンバーを交えたワールド・カフェを開催するというものです。技術士会メンバーが9名、学生が24名という構成で、8テーブルに分かれて話し合いを行いました。初めての企画としては、まずますの参加者で予想外の盛り上がりを見せ、成功裏に終了しました。関係者のみなさまに感謝申し上げます。その様子と、学生のみなさんとの交流を経て感じた気づきについて整理しておきます。

ワールド・カフェによる話し合いの様子

1.なぜ技術士が文系大学に~今後の島根をどうして行くのか?~

島根県立大学は、島根県浜田市に本部がある大学です。2007年に島根県立島根女子短期大学、島根県立看護短期大学と統合し、浜田、松江にキャンパスを持つ大学となりました。今回の企画は、本部のある浜田キャンパスで開催しています。浜田キャンパスは、総合政策学部のみを有する単科大学となっていますが、その学習範囲は多様で、キャリア教育や島根の地域課題の解決などをフィールドワークするなど、特色ある教育が展開されています。

一方、島根県技術士会は、科学技術に関する高度専門家である「技術士」の集団であり、いわゆる“理系”の集団と言う事になります。このため、これまでは島根大学の総合理工学部・松江高専との交流を進めてきました。そのねらいは、理系学生に技術士という資格とその役割を理解してもらい、今後、技術者として社会に出ていくにあたっての支援の一助にしてもらいたいというものです。ところが、今回の島根県立大学の総合政策学部は“文系”の学科です。なぜ、文系の大学と交流を図っていくのか。これまでのスタンスとは異なる位置づけでの取組みとなってきます。

技術士会青年部内でも明確にオーソライズされている訳ではないのですが、一つは、「島根を今後どうしていくのか?」という大きなテーマが根底にあると考えています。“学生か社会人か”ということではない。ましてや、“文系か理系か”ではない。誰がやるのか、誰とやるのか、何をするのか。それが大事だと考えています。その意味では、一般的な感覚としてあまり縁のなさそうな、県立大学(文系学部)と技術士会ですが、その交流が何か新しいものを生み出すきっかけになるかもしれません。やってみなくちゃ分からないからやってみる。その姿勢で臨んだ今回の企画。参加した技術士会メンバーを大いに刺激を受け、またとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。次年度以降の展開に期待したいと考えています。

2.お金だけでは無い価値観~時代を映す鏡か、意欲ある学生のスタンダードか~

今回のワールド・カフェのテーマは「働くってどういうこと?」でした。就職活動を開始する前に「働く」ということの意味を考えて頂く機会にしてもらいたいと考え、設定したテーマです。働く意味。私も、会社を経営するようになった今だからこそ、自分自身に問いかけられても自分なりの回答を述べることはできます。しかし、学校を出て就職したての自分だったら果たして回答できたのか、はなはだ疑問です。そういった、本当は大事なことだけど、中々考えたり話し合ったりする機会のない大きなテーマについて話し合う機会。それも、ワールド・カフェによる話し合いの大きなねらいだと考えています。

そうだとしても、感心するのは、こういった企画に「30名近い学生が集まる」ということです。就職が厳しい時代。様々な形で情報収集し、就職活動につなげたいという思いを持つ学生も多いことは分かります。しかし、単位がつく訳でもない活動に参加するという姿勢は、私が学生だった頃の感覚からすれば大変素晴らしいし、そういう積極性のある学生が居ること自体が頼もしく感じます。

今回、私はファシリテータ役で、直接話し合いには参加していませんでしたが、テーブルを回りながら聴いて見ていて感じたのは、「働く意味はお金だけではない」という趣旨の話が良く聴かれたことです。もちろん学生さんからです。自分の好きな事=仕事でいいのか、どんな時に働きがいを見出せるのか、人の役に立つことがしたい、など、“働く”という学生さんにとってはまだよく分からない領域の問いかけにも関わらず、テーマに真摯に向き合って話し合いをして頂きました。思い起こせば、私が就職を考えていた頃は、求人資料の初任給の金額ばかり気にしていたように思い起こされます。時代が違うということはあるでしょうが、彼らの真剣な姿勢には大変感銘を受けます。今後彼らの歩む人生が素晴らしいものになるよう、微力ながら応援できればと考えています。

3.島根県立大学の取組みがもたらすもの~地元で学び、地元で働く~

今回の交流企画、元々は、島根県商工労働部が主催する平成24年度人財塾において、島根県立大学のキャリア推進室のご担当者とご縁を頂いたことがきっかけでした。人財塾は、島根県内の経営者又はそれに準ずる方々が経営を学ぶ場です。そこに大学の事務方の担当者がいらっしゃったのは、一つは、学生の就職先の候補として県内企業の経営者の方々とのネットワークを構築する、という目的を持たれていたからだそうです。その点、技術士会との交流はすぐに“就職先”にはつながらないかもしれませんが、広く県内の企業・業種の動向を知って頂く機会にはなったと思います。こういった熱意を持った支援体制があるということも、学生にとっては大変幸せなことだと思います。

この、地元企業との連携を深める、という取り組みは島根の将来を展望する上でも大きな意味を持つと考えます。島根県立大学に限りませんが、多くの学生は就職先を県外に求めます。県立大学の最新データ(平成24年3月卒業生データ)によると、県内就職率は34.4%となっています。この数字は、県内の就職状況をみるとかなり健闘しているデータではないかと思いますが、県外就職が中心にならざるを得ないのは事実です。しかし、仮に県外出身者であっても、せっかく島根で学んだ学生の7割近くが、県外に就職を求めるというのは残念なことだと捉えなければなりません。我々、企業経営者の力不足という面も大いにあるでしょう。

その状況を少しでも改善するために、現在、県内の中小企業とネットワークを構築し、人財の地産地消とでもいうべき流れをつくりだそうというのが、県立大学の試みではないかと理解しています。大学は地域の企業が求める優れた人財を育成し、企業はその人財を採用できるよう経営を伸ばす。その間を各種の交流や実践的な学びの場の提供などでつないでいく。そういう姿が実現できた時、島根の地域の経済的、人財的な活性化が実現していくのではないかと感じています。

ファシリテーションする私

今回、技術士会青年部としては初めての企画でしたが、話し合いは大変盛り上がり、学生さんだけでなく、技術士会メンバーも様々な学びや気づきがあったようです。私自身、今回初めて島根県立大学の浜田キャンパスに出向きました。浜田市街からも近く、広々とした解放的なキャンパスで1000名以上の学生が学んでいます。県外から入学した方も多いと思いますが、縁あって島根の地に来られた学生が島根で働き、生活する社会人と交流する。その中から、この地域の持つ特性や、そこで働く人たちの想いを聴く。そういう機会があるだけでも、何かの広がりが起きるような気がしています。次年度以降も何らかの形での交流を継続したいと考えています。

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