人財塾

平成23年度「人財塾」(第3回) 求める人物像を描き、採用に情熱をかけ、素晴らしいメンバーを集める

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島根県が主催する平成23年度「人財塾」に参加しています。このたび第3回目が2011年7月21日~22日にかけて開催され、静岡県中小企業経営革新フォーラムへの参加と関東地区における企業視察を行いました。(第1回第2回の様子はこちら)

なお、わざわざ静岡のセミナーに参加するのは、この人財塾がお世話になっている「日本で一番大切にしたい会社」の著者、坂本光司教授が在席されている法政大学大学院キャンパスが静岡にあり、その関連セミナーが静岡で開催されるからです。坂本教授が静岡出身で、教鞭をとるキャンパスが静岡にあるというのも初めて知りました。

講演するライブレボリューション増永社長

このフォーラムではいくつかの講演がありましたが、その中でも株式会社ライブレボリューション 代表取締役社長 増永寛之氏による講演「なぜ社員数50名の中小企業に44,000人の入社希望者が殺到するのか」では大変興味深いお話を聞くことが出来ました。同社は2000年に創業、現在ではモバイル広告代理店事業を核に急成長しているそうです。2010年度の新卒採用において会社説明会などへのエントリー総数が44,000人に達するという驚きの会社です。今回、なぜ、そこまで学生に支持されるのかの一端を伺うことができました。話が凄過ぎてまとめきれませんが、その一部を整理してみます。

1.「LR HEART」と求める人材像

ライブドアレボシューション(以下、「LR社」と言います。)には、「LR HEART」と呼ばれる、ビジョン・理念・価値観等を記したカードがあります。いわゆる「クレド」と呼ばれるもの(リッツカールトンなどが有名)です。これを作成され、“価値観合わせ”を重視される企業が増えているそうです。後述の採用の話と関連しますが、LR社は、このLR HEARTをホームページで全て公表されている点が特徴的だと思います。学生はこれらの情報を得て認識した上で応募し、会社側はその理念にあった人を採る。さらに言えば、理念にあった人かどうかを見抜くことが大事だというお話でした。

そして、同社が求める人材像は、言うまでも無く、「LR HEARTに共感できる人」ということだそうです。既に、LR HEARTらしく生きている人を採る。増永社長の言葉を借りれば、結果につながる能力のある人、結論ファースト、チームプレー、勉強好き、変化に対応できる、といった特性、さらに「優れた人格」を有していることが前提で、競争より協働、笑顔いっぱい、整理整頓出来る人、怒りっぽくない人、など、確かにそんな人たちだけで構成された職場は素晴らしそうです。理想めいてはいますが、そこまで人を選べる(応募があることが前提)企業に成長している点がまず凄く、また、なによりもそれを徹底してやりきっている経営者としての誠実さ、まじめさに感銘しますし、自分自身襟を正さねばと感じさせて頂けるお話でした。

2.シックス・メンバーズ・バリエーション~自分たちの給料は自分で決める~

LR社には独自の構築された様々な仕組みがあるそうですが、その1つに、評価及び給与決定の仕組みとして、「シックスメンバーズバリエーション」という制度があります。今回、少し時間を割いて話を聞くことができました。これは、WEB上で行う人事評価の仕組みで、役職・年次関係ない6人が1人を評価するというものだそうです。前述のLR HAERTに書いてある72の項目、そしてパフォーマンスを15段階で評価し、自動的にその結果が集計され評価に反映されるとものだそうです。

人の評価というものは中々大変ですし、私も悩みます。それを自動的に実施できるようにすることで、そのコストを下げることに成功し、評価が大変楽になったそうです。「自分たちの給料は自分で決める」というスタンスだそうですが、普通に考えてもそんなうまい話が、という気になりますが、人の評価にかかるコストを削減しようと発想(普通は手間をかけるべき・手間がかかるものと納得する)し、それを合理的・納得性を持った仕組みで実現させ、さらに、上手く運営させているという点が本当に素晴らしいです。一点注意すべきは、人格的に優れ、かつハイパフォーマンスの人を採用していないと出来ない仕組みだとも言え(そうおっしゃってました)、当然ながら他の企業にあてはめて直ぐに出来るものではないでしょう。お互いを認め合った人間性・人格的にも優れた人達だから実現できるもので、そもそも、そういった人達の集まりを構築していることの凄さを改めて感じます。

3.新卒採用にかける時間と情熱

本講演の終盤、増永社長から、「一般の企業は採用にかける時間、情熱が足りないのではないか」というコメントがありました。製造業であれば製品の品質、欠陥などについては大変注意を払っているが、人材の質、人材の欠陥といったことに目を配っているのかという指摘です。企業にとって人材が重要なのは言うまでも無く、採用を軽視している企業は少ないとは思います。しかし、最初から自社にあう優れた人材を採用し、価値観を共有し合った仲間で仕事をすることでお互いに成長し、企業も成長する、といった前提に立って採用を考えているかと言えば、特に中小企業ではそれレベルには達していないところも多いと思います。

LR社では、メンバーの質=会社の質、と捉え、さらに「採用できたメンバーの人数や成長に合わせた経営をする」というお話でした。また、”何をやるかよりも誰とやるか”、ともおっしゃられています。LR社も創業時と現在では事業内容は異なってきており、時代に合わせて事業内容が変化していく場合も、一緒に仕事をしたいと思える仲間と一緒であれば、その仲間と新しい道を切り開いて行くことが出来るということかなと感じました。現在、LR社は中途採用を実施されていません。その徹底ぶりが効果を高めるのでしょう。しかし、一方で、採用時の選定もさることながら、採用してからの教育で良い人材を育てていくという考え方もあります。それで成功されている会社もある訳ですから、どちらが正しいということではないでしょうが、自社の経営において「採用」をどのように捉えるのか、考えさせられる機会を与えてもらったと感じます。

このように独自の企業文化や社内制度を持つLR社ですが、その構築にあたっては様々な失敗を経ているようで、急激な成長期に大量の中途採用者が大量退職したり、成果主義・目標管理制度を導入したが上手くいなかったり、失敗や試行錯誤を重ねていらっしゃるようです。多くを語られはしませんでしたが、失敗を真摯に反省し、LR HEARTに記される経営の軸足に常に立ち戻り、徹底した努力を積み重ねてこられたからこそ、現在の成功、さらには明るい未来も見えているのではないかと感じました。前述のとおりLR HEARTは全てホームページ上に公表されており、私も是非参考にさせて頂きたいと考えています。なお、ライブドアレボリューションの経営について増永社長が書かれた「宇宙一愛される経営」(2007総合法令出版)は、なんと同社ホームページ上から全文PDFが無料でダウンロードできます。なんとも太っ腹で頭が下がりますが、これも合理的な考え方に基づいているようです。私は注文して購入することにしました。

冒頭挨拶・講演する坂本光司教授

このほか、初日のセミナーでは、坂本光司先生の講演「この1年で新たに見出した驚嘆する10社」、株式会社加賀屋 代表取締役会長 小田禎彦氏による講演「なぜこの旅館は31年連続全国の旅人からNO1の高い支持を得ているのか」、主催者であるアタックスグループ 代表パートナー 西浦道明氏による「第1回日本で一番大切にしたい会社大賞 応募企業・受賞企業のEC・CS経営の極意」といった内容で、多岐にわたる示唆を得ることができました。今回得られた示唆から、当社に何が出来るのかを考え、実践に移して行きたいと考えています。2日目の企業見学については、機会があれば記したいと思います。

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