協和地建コンサルタントは、「地中熱」を活用する事業分野に参入します。
東日本大震災と原発事故以降、今後、この国はどうなるのか、当社は何をすべきか、考えずにはいられませんでした。復興に向けて東北に出向いて地質調査等の仕事を手伝う、そういったこともあるかもしれません。が、世の中の構造そのものが変わってくることが間違いない中で、どうあるべきなのか。その自問自答への答えの一つが、「再生可能エネルギー」への注目の高まりです。そんな中、2011年10月に地中熱活用のフォーラムに参加する機会があり、取り組みの必要性を痛感しました。その後、2011年11月末には「地中熱」活用の推進団体である地中熱利用促進協会に入会するとともに、同協会へのヒアリングと、関東地方で地中熱活用に先行的に取り組まれている企業3社を回り、取組みの経緯や現状、今後の展望などについて調べてきました。
各社では大変親切に対応頂き、貴重な示唆を頂くことができました。地中熱利用促進協会(東京都)様、株式会社萩原ボーリング(山梨県)様、光洋土質調査株式会社(埼玉県)様、株式会社アグリクラスター(埼玉県)様、に大変お世話になりました。改めて感謝申し上げます。伺ったお話や情報に基づき、当社の地中熱への方向性として、次のような取り組みを計画しています。ここでその概要を報告し、自分自身へのコミットメントにするとともに、取組みを加速化させたいと考えています。
1.自社社屋への導入と特徴あるシステムの採用~まず自らやってみる~
2012年度に自社社屋に地中熱ヒートポンプによる冷暖房システムを導入します。
新しいことに取り組むにあたっては、自らが使ってみてその良さや仕組みを理解するのが近道です。「地中熱」という再生可能エネルギーが有望なエネルギーであることは間違いないと考えていますが、実際に使ってみてこそ分かることも多々あるでしょうし、お客様に勧めるにあたって自らが使っていなければ説得力がありません。島根県内の事業所で地中熱システムを導入した事例は少ないと考えられ、先駆けて導入しようとするものです。費用は経済産業省や環境省などの補助金事業を活用し、出来るだけ効率的な投資とする予定です。
なお、当社が想定するシステムは、地中熱を採取する地中熱交換井戸(深さ100m程度まで)、地中熱用のヒートポンプ、ファンコイルユニットと呼ばれる冷暖房を行う装置、で構成されるものを指しています。その中でも、地中熱交換井戸については、Uチューブと呼ばれるパイプに不凍液を循環させて熱交換するのですが、当社では、長年この地域で井戸掘削に携わってきた経験を活かし、井戸水を直接活用するようなシステムの採用も検討し、独自性を打ち出すことを考えています。
2.施工能力を高めるための投資と連携~自分達でできる体制を整える~
地中熱交換井(ちちゅうねつこうかんせい)の掘削工事を迅速に行える体制を整えます。
地中熱はその名のとおり、その土地の地中から熱を取ります。その地中を掘削するのは、その地域の地質に精通した地域のボーリング会社であることがもっとも合理的です。当社はボーリングを行う会社ですから、地中熱を採取するための熱交換井の掘削に従来の技術や技能を活かせると目論んでいますし、だからこそやる意義があると考えています。
現在、当社が所有する機械でも掘削することは可能ですが、地中熱の事業に取り組むにあたっては、より短期間で効率よく掘削できる(短期間で沢山掘れる)設備(機械)が必要となります。我々が出来る仕事だし、我々がやるべき仕事です。今はその体制が十分ではないというだけです。これについては、遠くない将来、設備投資を行わなければなりません。
一方で、地方の中小企業ですので資金的には限界があります。最初から1社で全てをカバーするには困難なことも多々あります。そのためには、現在でも仕事をお願いする協力会社のみなさんと一緒になり、必要な設備を整えていくことも必要だと考えています。何社かが一緒になって仕事を造り、一緒になって仕事をこなして行く。そういう体制や協力関係を整えることも必要と考えています。
3.地域における推進体制の構築~地域内で協力して推進していく~
地域の意欲ある企業が集まって推進していくことが必要と考えています。
「地中熱」は震災・原発事故以降、注目されている再生可能エネルギーの一つとして知名度が高まりつつありますが、太陽光・風力・バイオマスといったエネルギーに比べると知名度の低さは否めません。比較にならないぐらい低いといってもいいでしょう。
島根では、行政の施策においても未だ位置づけがありません。平成20年6月に島根県が策定した「島根県地域新エネルギー導入促進計画」においても、“地中熱”という単語は一回も出てきません。問い合わせたところ、今後の国のエネルギー政策の見直し動向を踏まえて、県としての方針を出すことになるため、現時点では位置づけが無いままであるとのこと。であるならば、民間が、地元の企業が中心となり、普及啓発に向けたうねりをつくっていくしかありません。
結局のところ、新規事業として地中熱に取り組むとしても、認知度が高まらなければ、市場が拡大しなければ、早晩、壁に突き当たることでしょう。だから、1社でやるのではなく、意欲のある複数の企業、団体などで構成する推進団体のような枠組を構築し、一体となって普及啓発から技術習得、実績づくりまでの取組みを進める必要があると考えています。推進体制の構築についてはまだ私の頭の中で考えるのみですが、前述の取組みとあわせて実行に移し、大きな流れを島根の地においても生み出して行きたいと考えています。
ところで、この地中熱への取組みを明確化しなければならないと考えたきっかけは、島根同友会の経営指針成文化セミナーに参加したことです。そのセミナーを通じて、現在、当社の経営指針(経営理念、経営戦略、経営計画)を策定しているのですが、将来に向けてどのような会社を目指すのかを考える時、世の中に求められ、夢のある・ワクワクする仕事を造りだす、という観点で今まで自分が考えてきたことを整理する機会を得ました。その答えの一つが「地中熱」です。経営指針の策定、それは会社のあるべき姿や理想を考えるだけでなく、具体的な行動としてどういった分野に取り組むべきなのかを気づかせ、意思決定させてもらえる機会にもなる。そんな場を与えて頂いた島根同友会に感謝しています。