島根県中小企業家同友会

島根同友会 第13回経営指針成文化セミナー成果発表会~受講生とアドバイザーの真剣勝負~

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2013年12月7日(土)、島根同友会の第13回経営指針成文化セミナー成果発表会が開催されました。このセミナーは、島根同友会会員企業を対象に、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を体系的に策定するものです。今回、6名(6社)の参加者があり、およそ5カ月の時間をかけて自社の経営指針をまとめました。成果発表会は、その経営指針を発表するだけでなく、経営指針に基づいた経営の実践に向け、発表会出席者からさまざまな意見を聴取する場にもなります。また、自社における発表のための練習の場という側面もあります。経営者が、自社の将来をかけて策定する経営指針。その策定の経緯から成果の内容までを聴くことができるこの成果発表会は、同友会活動の中でも最も多くの学びを得られる機会の一つと考えています。今回の発表会を通じて感じたことを整理しておきます。

奥長先生(東京同友会)による最終講義

1.フォローアップの充実が成果の充実へ~アドバイザーと受講生の真剣勝負~

今回の成文化セミナー、そして成果発表会を通じて大きく感じたのは、「フォローアップの充実」という点です。

島根同友会の経営指針成文化セミナーは、2日間のセミナーで集中して経営指針の素案を策定した後、1カ月に1回のペースで計3回のフォローアップセミナーを開催し、その後、成果発表会を迎えます。受講者には、それぞれ2名のアドバイザー(会内の経営指針策定済の経営者)が付き、フォローアップセミナー前に最低1回のミーティングを行って各社の経営指針の精度を高めていきます。このアドバイザーとのミーティングをきっかけに、内容が大きく進化していきます。今回、その質の高まり方が今までになく明確で、継続して各社の指針を聴く中で大変強く感じた部分でした。

最初の二日間のセミナーで策定した素案は、まだまだ荒削りで、経営者自身も十分に自分のものに出来ていない面があります。それは当然で、各社の将来を左右する経営の方向を、二日間で完全にまとめられるものではありません。しかし、一つのたたき台には違いありません。それをベースに、アドバイザーとの議論を通じて、経営者自身の考え方を明確化し、或いは、心の奥底にある想いを引き出し、進むべき道筋としてまとめあげる。それは、アドバイザーと受講生の真剣勝負であり、また、アドバイザー自身の成長の場でもあります。今回の成果は、受講生のみなさんが真剣に取り組んだ事はもちろん、アドバイザーを担当された同友会会員の方々のレベルが高まってきた結果でもあると考えています。

私も、今回アドバイザーを務めさせて頂きました。経営指針に対するアドバイスは、すなわち自分自身への問いかけです。アドバイスしていることに対し、自分自身はどうなのか。業種や業界は関係なく、自分自身を見つめ直す貴重な機会となります。そして、経営指針を定めて未来を切り開こうと意欲を燃やす経営者の方と話をすること自体、力を与えてもらえます。受講者とアドバイザーが共に学び、成長する。これも同友会の経営指針の大きな魅力ではないかと考えています。

2.経営方針と経営目標の重要性~わくわくする将来像が社員をその気にさせる~

成果発表会には、7月のセミナーで講師を務めて頂いた、(有)コンサルタント朋友(東京同友会)の奥長先生も同席して頂き、経営指針の策定・発表を見据えた最終講義、そして各受講生の経営指針に対して総括をして頂きました。

その中で、特に着目されていたのが「経営方針の重要性」ということです。

経営指針は、経営理念、経営方針、経営計画、から構成され、三位一体で「経営指針」と呼んでいます。どれが欠けても経営指針としては不足ですし、どれが一番大事ということはない、と考えています。しかし、今回の受講生が発表した経営指針に対しては、「経営方針」をどう明確化するか、について的確な助言がありました。それは、「経営方針において、“ワクワクする将来像”を示す」というものです。7月のセミナーの際にも同じような説明がありましたし、私が経営指針を策定した際にも同様の指摘がありました。

経営指針成文化セミナーで策定する各社の経営方針では、3年後の経営目標を掲げます。その際に、3年後、自分の会社はどんな会社になっているのか、どんな姿で社員が働き、世の中の役に立っているのか、社長、そして社員がイメージできるような将来像を描く、ということを奥長先生は指摘されています。

あらためて今回発表された受講生の資料をみてみると、「経営方針」として、会社の進むべき基本方向として示したのは、“どんなことをするのか”、“どこに力をいれるのか”、といった事柄が多く記されていました。それはそれでいいのですが、その結果として「3年後どんな会社になるのか」という将来像をうまく表現できていた受講生は少なかった。奥長先生はまさにそこを指摘されていたと考えています。

おそらく、それぞれの受講生の頭の中には、3年後、自分がどんな風に活躍しているのか、会社がどんな風に事業を展開しているのか、漠然とでもイメージが出来上がっていると思います。だから、それに向けてやるべきことの明文化に注力している、という面があります。しかし、社員の目線からみれば、社長が示した理念、そして具体の計画を通じて、自分達がどんな風に活躍しているのか、それをイメージしたいという願望があります。それにうまく応えることで、経営指針を社員への浸透が進みやすくなると感じます。

“わくわくする将来像”、それを上手く表現するのが難しいのも確かです。しかし、社長が目指す会社の姿が、文言として成文化されれば、経営指針の浸透が進むことも間違いありません。受講生のみなさん、そして受講済の我々も、そのことを改めて自分自身のこととして捉え、将来像を共有化していけるよう、今後の取り組みを進めたいと考えています。

3.経営指針を検証する~よきライバルとして高め合う~

成果発表会終了後は、参加者、アドバイザー、そして講師の奥長先生を交えて懇親会を開催し、経営指針に関してさらに議論を深めました。その中で出てきた意見として、「今回の参加メンバーで経営指針の実践状況を検証しよう。」というものがありました。

今回、経営指針を策定した経営者のみなさんは、一緒に経営指針を策定した同期でもあります。私が策定した時も同様に6名の同期がいました。業種は違えど、同じタイミングで策定したご縁もあり、その後の各社の取り組み、実践状況には関心を持っています。そういった仲間で、お互いの実践状況を検証し合おう、という訳です。大変素晴らしい取り組みであり、各期の策定メンバーが自主的にそのような取り組みを実施することが定着すれば、島根同友会の活動もさらに質の高いものとなるでしょう。

言うまでもなく、経営指針を策定しても実践しなければ意味がありません。経営指針に定めた理念、方針、計画を社内で共有、浸透させ、定めた取り組みを実施していく。そこで初めて成果が表れる。中には方向性を見直すケースも出てくるでしょうが、それとて実践してみるから分かる事です。そして、その実践状況を検証し、今後に活かすこと。今後の島根同友会に求められる大きなステップと考えています。

島根同友会の今後の取り組みとして、今年度中に、会内の経営指針策定済の経営者に経営指針策定後の実践状況について検証してもらうという取り組みを計画しています。島根同友会としては初めての試みですが、3カ年計画で定めた数値目標の達成状況も含めて、経営指針の実践状況について複数の経営者の方から報告して頂きます。経営指針を策定したからといって、全てが上手く行く訳ではありません。その後の試行錯誤も多々あると思います。そうした実践の経緯を先輩経営者が次に続く者へ伝えていく。そして、それを定常的な取り組みとして継続していく。それが実現できた時、この「経営指針の成文化」という取り組み自体が、大きく次のステップに飛躍するのではないかと、期待しています。

発表後のコメント、意見交換

私も、一昨年度このセミナーに参加して自社の経営指針を策定しました。現在、実践をはじめて2年目になります。そして、今年からは、島根同友会の「経営労働委員長」という役目を頂き、この経営指針成文化セミナーを中心に、島根同友会会員の経営指針の成文化に向けた取り組みを推進しています。今回の6名の経営指針発表を聴き、また、策定の経緯をみつめながら、この経営指針を策定することの重要性を改めて認識するところです次年度以降、経営指針成文化セミナーの実施体制を強化し、より多くの会員が経営指針を策定できるようにしていく予定です。経営指針を策定し、実践する経営者が増えることで、社員が生き生きと働く会社、社員が幸せになる会社が増え、そして島根が活性化する。そういう未来を築く一翼を担わせて頂いていることに感謝し、今後とも取り組みを継続したいと考えています。

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