2014年10月25日(土)~26(日)にかけて、島根同友会の第15期経営指針成文化セミナーが開催されました。同友会では、“経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)の成文化”に力を入れていますが、このセミナーでは、2日間でその素案を取りまとめ、さらに3カ月をかけて精査していきます。今回、島根同友会では初めて、セミナー講師を全て会内で担当する、“直営方式”でのセミナーを開催しました。
私も、3年前にこのセミナーに参加して経営指針を策定し、現在実践中です。今回、島根同友会の経営労働委員会の委員長として、講師役を兼ねて運営に参加させて頂きました。講師といっても、司会進行役のようなものですが、その役目を含めて直営方式で実施したことによる学びや気づきをたくさん頂きました。その一部をまとめておきます。
1.主体性を持って運営に取り組むことで見えてくるもの~講師が一番勉強になる~
これまで島根同友会の経営指針成文化セミナーは、第1期より東京同友会・コンサルタント朋友の奥長先生に講師をお願いしてきました。奥長先生のおかげで数多くの経営者が経営指針を成文化し、経営指針に基づいた経営を実践しています。しかし、いつまでもそのやり方でいいのか、という問題意識もありました。それは、他地域の多くの同友会では、会外に講師を求めず、同友会のメンバーで経営指針成文化セミナーを運営しているという話を伺ってきたからです。
島根同友会も発足後10年を経過し、会としての立ち位置も次のステップに移っていかなければならない時期に来ています。そういった動きは、2012年10月の第40回青年経営者全国交流会in島根を開催から加速化し、2014年5月の第13回定時総会では、「ヒューマンシフト」を島根同友会理念と位置づけ、目標年次を2022年とする島根同友会ビジョンを策定・公表しました。こういった動きに対し、経営指針成文化への取り組みも変化していくことが必要と考え、今回の“直営方式”、すなわち、同友会内のメンバーで全ての講師を務めるセミナーを企画、開催するに至りました。
開講講義として松江支部の瀬崎支部長、決算書の講義に雲南地区会の周藤公認会計士、その他の策定講義を経営労働委員長として私が担当し、運営は従来どおり経営労働委員会メンバーが担当しました。2日間のセミナーを終え、改めて感じたことは、今までいかに講師の奥長先生に頼っていたのかということです。私自身、2日間の消耗度がこれまで運営してきたセミナーとはレベルが違いました。しかし、その一方で、自分達ですべてやらなければならない、という意識は、セミナーの様々な部分を担当した各講師陣にも好影響を与えたと考えています。後述する事前ガイダンスに講師も出席し、受講生の受講動機や業種特性等も踏まえ、自らの経験や伝えるべき勘所をつかみ、伝えて頂けたと思います。それは、各講師における自主的な取り組みであり、経営指針のセミナー講師を担わなければ経験する機会が無かったことだと思います。同友会の例会報告では、「報告者が一番勉強になる」とよく言いますが、経営指針成文化セミナーでは、「講師が一番勉強になる」と言い換えてもよいのではないかと実感するところです。
2.より近い立ち位置でセミナー参加者と係わる
会内講師としてセミナーに係わらせてもらって実感したのは、より近い位置でセミナー参加者と係わることができた、ということです。
これまでの外部講師によるセミナーは、コンサルタントとしての多くの経験や最近の経済状況などを踏まえた講義を交えて進められ、島根という地方部で事業を営む者にとって大きな魅力となっていました。その一方で、当然ではあるのですが、島根という地域での感覚とは一致しないという印象も時にありました。このため、今回は、せっかく地元で経営する者たちが講師を務めるのだから、地元の感覚、島根での感覚を踏まえてどうのように経営指針をつくっていくべきなのか、という視点を盛り込んで進めるようにしてみました。その試みはある程度成功したのではないかと感じてます。
また、私自身としても、受講生のみなさんとの係わりの度合いはそれぞれでしたが、みなさんそれなりに知った経営者の方が多く、各社の経営実態、例えば、どこにどんな店を持っているのか、という実感を持って助言をしながら進めることができました。県外への展開を目指す経営者もいる一方、この地域でどのように経営をしていくべきかを探っている経営者もいます。そうした中で、ある程度受講生の会社の状況をイメージしながら進めることができるのは、有限であるセミナー時間を最大限に活用する上でも、重要なことであると感じます。
今後は、このより近い視点で受講生と接していくという観点をさらに重視する一方、やはり日々の業務に忙殺する中では得ることが出来ないものを得られる場といていく視点も必要です。世の中の大きな動きや全国的あるいは全世界的な動向、他地域における様々な先進的な事例など、経営者として視野に入れておかなければならない要素をいかにバランスよく組み合わせていくのか、今回の振り返りと反省をしっかりと行い、次に活かしていきたいと考えています。
3.事前ガイダンスによる係わりのきっかけづくり
今回、初めての試みとして、受講前の「事前ガイダンス」を実施しました。
これまでも、受講希望者の方に対して個別に説明をすることはしていたのですが、申込みをして頂いた方を一堂に集め、また、講師担当も一緒に事前の打ち合わせをしたのは初めてでした。他県同友会では当然に行われている取り組みのようで、あらためて考えれば、そもそも、こういった事前説明の場がないこと自体がおかしかった、という反省もあるのですが、まだまだ発展途上の島根同友会であり、経営指針成文化セミナーですので、足りない部分は一つ一つ加えていければ良いと考えています。
事前ガイダンスでは、セミナーの進め方、セミナー終了から成果発表までのフォローアップの進め方等、セミナーの全体像を理解して頂くだけでなく、セミナーに申し込まれた方の動機、想い、事業の状況などを伝えて頂きました。そういった情報をあらかじめ共有することができたのは、大変有意義でした。そのことで、講義を担当者がそれぞれに話をする視点、勘所を得ることが出来たと考えています。業種、業歴、事業規模も様々、またその経緯(起業家、後継者)も異なる会社の経営者が集まり、その中で経営指針について学ぶ訳ですから、基本的な部分で共通するものはあるとしても、異なる部分をできるだけフォローしながら策定を進めたいと考えた時、非常に参考になる情報を事前に得られたと思います。
前述のとおり、事前ガイダンス自体はさほど特別なことではないかもしれませんが、今回から講師を会内で担当する方式に変更したため、講師が受講生のことを知り、その上でどのように講義をしていくのかを考えるための貴重な機会となりました。同友会に所属するメンバーはお互いが学び合う関係と言われます。そのためには、できるだけ係わりあう機会を増やす、ということも重要になってきます。経営指針成文化セミナーで半年間を共に過ごす受講生と講師が最初に一同に会し、その係わりあう関係の第一歩を築けたことも、大いに価値あるものではなかったかと考えています。
今回の経営指針成文化セミナー、最大のトピックスは、女性経営者の参加比率が過去最大(6社中5名)だったことです。柔らかく和気あいあいとした面がある一方で、時に遠慮なく厳しい指摘をぶつけ合う、今までにない雰囲気のセミナーとなりました。島根同友会では、昨年度女性部会が新たに立ち上がり、第14期のセミナーでも7名中3名という比率でしたが、今回はさらにその比率が上がりました。地域社会でも経済活動でも、女性の活躍について非常に注目が集まっており、そのうねりを現実のものとして感じました。その一方、あまりの女性比率の高さに、もっと男も頑張らないといけない、と叱咤激励頂いているようにも感じます。経営者の世界ですので、男だから、女だから、ということはありませんが、それでも世の中に比率で言えば圧倒的に数が少ない女性経営者がこれだけ経営指針成文化に取り組むという熱意を圧倒的多数の男性経営者もしっかり受け止め、取り組んで行かなければならないと痛感します。今後、受講生のみなさんが経営指針成文化をしっかりと成し遂げ、実践を通じて会社を伸ばして行かれることを願い、我々もしっかりとしたサポートを続けて行きたいと考えています。