2013
02.28

2013年2月24日(日)、島根同友会の経営指針成文化セミナー成果発表会が開催されました。

このセミナーは、島根同友会会員企業を対象に、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を体系的に策定するために実施するもので、参加者は、およそ5カ月間をかけて自社の経営指針をつくり上げます。成果発表会は、その集大成として各社の経営指針を発表するとともに、その経営指針に基づいた経営を実践していくためのキックオフの場でもあります。各社の経営者、又はそれに準ずる方々が自社の将来をかけて策定する経営指針。その策定の経緯から成果までを聴くことができるこの成果発表会は、同友会活動の中でも最も学びの深い時間の一つと考えています。今回の発表会を通じて感じたことを整理しておきます。

経営指針成文化セミナー発表会

1.「自社の存在意義の明確化」が経営指針のスタート

今回の成果発表会では、計6名の受講者から発表がありました。自動車販売・整備、建設業、水産加工品販売、システム開発、菓子製造、衣料品製造、と業種は多種多様。起業された方もいるし、後継者の方もいる。さまざまな経緯、立場、環境の中でそれぞれの経営指針を発表されました。

この中で多くの方が重要視されていたこと。それは「自社の存在意義の明確化」という項目です。なぜ、他社では無く自社でなければならないのか、ということ。経営指針の策定には様々なポイントがありますが、特に重要度の高い事項の一つだと私自身も感じています。ほぼ全ての中小企業には同業者が存在します。自らの回りにライバルとして存在しているケースも多々あるでしょう。そんな中でお客さまに自社を選んで頂くためには、他社で無なく自社でなければならない“何か”が必要となります。いわゆる「強み」と呼ばれる部分がそれにあたるでしょうし、その企業らしさ、企業風土、といったものもそうかもしれません。いずれにしても、経営者がそのことを明確化して認識し、経営理念、経営方針、そして具体的な経営計画に反映され、着実に実践されてこそ、中小企業の発展があると考えて間違いありません。

今回、受講生のみなさんがそれぞれに自社の存在意義の明確化に時間を割かれ、取り組まれました。このことは、経営指針成文化セミナーの趣旨・ねらいがより徹底されてきたということでもあるし、島根において“同友会らしい経営指針づくり”が進み、レベルアップが図られている、ということを示していると考えています。聴講する側からすれば、それぞれの経営者が自社の存在意義をどのように捉えていらっしゃるかを学ぶことが勉強になります。大変貴重な機会を頂いたし、次年度以降のセミナーにも大いに期待したいというというのが実感です。

2.中小企業経営の課題は「社員との関係性」にある

今回の成果発表会の発表を通じて感じたことの一つに、「社員との関係性」というキーワードがあります。

受講生の一人である㈱プラチナの内田社長は、「自社の課題を抽出したらほとんど社員のことだった」と述べられました。後述するソーイングクトの福田さんも同様、「いかに従業員と一緒にやっていくのか」という課題はほとんどの受講生から出ています。それほどに、中小企業経営者と従業員との関係性というのは重要性が高く、だからこそ、これが上手く行っている会社は事業も上手く行っている。そして、事業がうまく行けば従業員と経営者との関係も更によくなる、といういい循環が出来上がるのでしょう。当然ながら、これは、従業員の顔色を伺うとか、従業員の言うとおりにするとか、そういったレベルの話ではありません。“経営者と従業員”という関係には違いないが、一緒に会社・事業を盛りたてていくパートナーとしての関係にいかに到達するのか。そういう認識をまず経営者が持つことから始まるのだろうと感じます。

同じようなこととして、「経営指針の浸透」という課題もよく指摘されます。経営指針によって会社の方向性を定めても、それが社員に浸透しなければ会社がうまく回って行かない、という問題です。これについての私なりの答えは、社員に「会社が少しずつ変わっている姿を見せ続ける」ということだと理解しています。当社の場合で言えば、社内の清掃を徹底して職場をきれいにする、痛んでいた社屋を改修して使いやすくする、新しいシステムや設備を導入する、新しい職員を採用する、社外の見学者を受け入れる、新しい研修や勉強会に取り組む、等々、少しずつ会社が前向きな方向へ変わりつつあるということを示し続けてきました。そして、それはいずれも経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)に位置づけた取組み・施策として実施しています。そのことで、社長が本気で取り組もうとしている、文書や口頭では伝わらないことが、自らの職場の目に見える変化によって伝わって行く。それが経営指針を浸透させる、ということの一つの方法ではないかと考えています。

3.経営指針を策定しながら実践する~危機感と将来展望の融合~

今回、受講生のアドバイザーを務めさせて頂く機会を頂きました。私がアドバイスさせて頂いたのは、ソーイングクトの福田圭祐さんです。松江市宍道町で縫製業を営まれていますが、いわゆる下受けから製造メーカーへの脱却を目指し、新たな取り組みを交えながら今回の経営指針を策定されました。

福田さんが、経営指針を策定するにあたり、最も感じたのは「自分と社員との話が全然できていない」ということだったそうです。何とかしなければという想いは持っているが、その気持ちは社員には伝わっていない。そこで彼が取った方策は、「日々の日報を付ける」ということです。フォローアップのミーティングの中で出たアイデアでしたが、すばらしいのは、即座に実践に移されたこと。女性が多い職場であることも考慮し、一人一冊の日報ノートを作り、個別に一日の報告を受け、それに対するコメントや経営者としての考えを書きこんでいく。これを続けることで、最初は不平不満が多く書き連なっていた日報に、徐々に変化が表れ、少しずつ前向きな提案や意欲などができたということです。

これに合わせて、脱下請けに向けた取り組みとしてショップオリジナル衣料の企画製造、さらにはPB商品の企画製造販売、といった領域を手掛けられ、少しずつ実行に移されています。これも、社員が自らの仕事が直接的に喜ばれていることを感じるようにするという効果もあり、より意欲と前向きな気持ちを持てるような取組みとなっています。

今回の福田さんのアドバイザーを務めさせて頂き、改めて感じたのは、「社内をしっかりさせる」ということがまずもって大事だということです。新しい仕事への取り組みも、仕事の見直しも、社内の理解がまず必要です。当社においても改めて見つめ直すべき事項だと感じました。社員とじっくり話をするのは時間とパワーが要ります。しかし、それをおざなりにせず、そこからスタートされた福田さんの取組みには頭が下がります。きっとこの会社はよくなっていくのではないか。アドバイスしながら少しずつ形作られて来た経営指針と、それに伴う実践の様子を聴き、そのように感じます。今後のご検討をお祈りします。

発表するソーイングクト福田さん

私も、昨年度このセミナーに参加して自社の経営指針を策定し、およそ1年間実践を進めてきました。経営指針を策定し、それに基づいて実践を重ねれば、会社は少しずつ変わってくるというのは実感としてあります。実践することが前提です。今回受講の各社が、ぜひ今回の成果を活かし、会社を維持発展させることと期待しています。そして、私自身も負けじと会社を事業を伸ばしていけるよう、さらに努力を重ねたいと考えています。

2013
02.22

私事ながら、2月19日からインフルエンザを発症し、この週は会社を休んでおりました。

発症当初は高熱で当然仕事にはなりませんし、熱が下がった後に自宅でパソコン仕事を再開しましたが、ブログまでは手が回らない状況。危うくブログ更新が出来ないところでした。ところで、このブログは2009年10月14日に最初の投稿をしており、それから約3年4カ月、投稿した記事数は178。週1回の更新を一度も欠かしたことがありません。ここまで続いてくると、インフルエンザとはいえ、更新を途絶えさせるのは癪にさわります。週の後半は熱も下がり体調も良くなってきました。病気の特性上会社に出かける訳にはいかないので、久々に少しゆっくりした時間を過ごしたような気がします。そこで、今回の休みを通じて感じたことを簡単にしたため、ブログ更新とさせて頂きます。

適切な薬の処方のおかげで早く元気になれます

1.「仕事を任せられる社員がいる」ことのありがたさ

以前のブログでも書いたことがありますが、私はプレイングマネージャーではなく、いわば「専業社長」です。つまり、当社が事業として営んでいる“仕事”そのものには直接携わっていません。会社の仕事は社員の方が行っています。このため、私が会社を休んでも、当社のサービスが停止することはありません。そういう会社の体制なのだから当たり前と言えば当たり前なのですが、プレイングマネージャーならそうはいきません。自分の休みは仕事の中断であり、それは売上の減少に直結する可能性があります。実は、この“任せられる社員がいる”ことがとてもありがたいことなのだと、改めて感じます。私は休むにあたって受託している仕事のことを個々に気にする要はありません。これは本当にありがたいことです。だからこそ、社員のみなさんの働く環境をより良いものにしなければいけない。もっと力を発揮できるようにしなければならない。そんな気づきを得られたと感じています。

2.パソコンとネット環境、携帯電話でかなりの仕事ができる

最初に高熱を発症した日はさすがに唸っていましたが、熱が下がると仕事のことが気になり出します。このご時世ですので、自宅でも会社のメールとインターネットは接続できるようにしています。これに携帯電話が加われば、かなりの仕事ができます。ただ、これは従前でもそのようにしてきたことで、今回あらためて感じることではありません。今回の気づきとしては昨今のタブレット端末なども併用し、資料等をよりアクティブに確認しながら指示、判断ができるような環境も、そろそろ必要な時期なのではないかという印象です。今回のようにまとまった期間「会社に行けない」というような状況下での対応も想定し、少し遅れ気味の我社の情報インフラ整備を考えていきたいと決心させてもらう機会ともなりました。

3.家族のサポートへの感謝

最後に述べておかないといけないのは、言うまでもなく家族への感謝です。家族が支えてくれているから、体調を崩した時、ゆっくり家で寝ていられます。全くの一人暮らしではそうはいきません。食事の準備、掃除洗濯、子供の世話、さまざまな家の事、寝ている訳にはいかないことも多々あるでしょう。私は共稼ぎですが、妻は、私の朝食だけでなく昼食の準備もしてくれた上で毎日仕事に出かけてくれました。子供の迎えは、いつも父にお願いしていますが、連れて帰ってからの子供の相手もしてもらっており、こんな時は大変助かります。そうやって助けあっているからこそ家族。そのベースがあって仕事に全力で取り組める。そのことを改めて感じさせてもらえる素晴らしい機会になりました。

便利な道具のおかげで家でも仕事が出来ます

これまで、体調を崩して会社を休む時、何か損した気がしていました。「この時間があれば、あれも出来た、あそこにも行けた」等々、思いが巡ります。確かにそう言う面もあります。しかし、“物事には両面がある”と言われるように、久々にこうやって静かに過ごす時間を得て、様々な人に支えられているという実感、イレギュラーな対応を要する時の会社・組織の動き、など、普段見えていないものが見えてきます。折しも、来月には平成25年度の経営指針発表会を開催し、次年度の方向性を内外に向けて発表します。そのまとめをこれから行うタイミングです。そうした時期に、もっともベースにあるべきもの。本当に大事にしなければならないもの。それに気づくための機会だったのだと。そう理解したいと考えています。

2013
02.14

2013年2月5日(火)、島根県中小企業家同友会の会計セミナー「会計を経営に生かす」が開催されました。講師は、山陰経済経営研究所の常務取締役地域振興部長 遠藤励司さんです。遠藤さんには、毎年、新春経済セミナーで山陰地域、さらには日本、世界の経済動向について講演を頂いています。今回、「会計を経営に活かす」と銘打って会計の基礎知識を中心に、さらには企業経営の在り方についての指摘も踏まえながら講演を頂きました。そして、中小企業の実態に即してつくられた新たな会計ルールである「中小会計要領」の説明も含め、限られた時間ではありましたが、広範なお話を頂きました。

今回、初めて耳にした「中小会計要領」。中小企業は、この要領に基づいて会計処理を行うことが推奨されているとのこと。細かい実務的内容の確認は資料等に譲るとして、今回、その要領を使うことの意義として、“中小会計要領のお役立ち”という3つの視点から説明がありました。その内容を実際の経営にどう役立てていくのか、私なりの整理をしてみます。

講演する遠藤さん

1.財務の把握~利益を出し、正しく会計する~

“中小会計要領のお役立ち”、一つ目は、「財務の把握」という観点です。

中小会計要領のリーフレットによると『「中小会計要領」に準拠した会計処理で日々の取引を記録(記帳)し、その記録を取りまとめた決算書を通じて、自社の経営成績や財政状態を知ることができます。』とあります。さらに、『決算書は事業年度(1年)単位に作成されるのが一般的ですが、月次や四半期毎など定期的に管理することで、常に最近の経営状況を把握することができます。』と続きます。

言うまでもないことのような気がしますし、そもそもそれが出来ていなくて、会社が存続するのかと不思議なくらいです。しかし、実態として中小企業、零細企業の中には、経理処理に割ける要員の制約などの事情もあり、日々の経理処理が後回しになっている場合もあるでしょう。月次での収支管理ともなれば、全ての会社で実施されていないだろうとは思います。これらが出来ていない会社があるとして、きちんと実施することのメリットは、「決算書の信頼性の向上」です。取引先に対して、信頼性の高い決算書を提示できる体制があれば、取引の継続性、確実性を高めてくれるでしょう。

しかし、注意しなければならないのは、正しく正確に記載された決算書でも、収支状況や財務状態が著しく悪ければ、それは取引に値しないと判断される場合もあるということ。毎期利益を積み上げて財務体質を強くしていく。その努力と実践が前提であればこそ、信頼性の高い決算を行う意味も増してくると言えるでしょう。もっと言えば、中小企業においても、いわゆる財務会計に加え、その企業・業種の実情に応じた管理会計により、収益性や利益確保の目安を常に把握できるようしておくことが重要ではないかと感じます。小規模な会社だから容易に把握できるデータもある。それを、次の一手に活かしていくことが必要でしょう。その話はまた次のステップなのかもしれません。

セミナーの中で記憶に残っているのは、『豊かになるため、利益をあげるためには「道具」が要る。それをどう調達(貸借対照表)して、どう活用(損益計算書)したかの結果報告が決算書である』、という説明です。そして、『道具と借金を正しく後継者に伝えることが、事業継承に際しても非常に重要になる』という指摘は、大変腑に落ちるものでした。何が本当か分からないような決算書は、それによって一時的に苦境をしのいだとしても、いずれその会社に災いをもたらすことになるでしょう。ましてや、そんな決算を後継者に引き継いではならない。私自身が肝に銘じて、今後の経営に活かしたいと感じる言葉でした。

2.経営改善等~同業他社との比較分析~

“中小会計要領のお役立ち”、二つ目は、「経営改善」という観点です。

財務的観点からの“経営改善”をどう考えるか。リーフレットには『経営者が自社の財務の数値を用いて、自社の過去と現在の状況や、同業他社の状況と比較・分析することで、会社の課題や問題点などがわかり、将来の事業計画に活用することができます。』とあります。これも当たり前のような気がしますが、同業他社との比較・分析を通じて、自社の課題や問題点を把握することの重要性は、言うまでもありません。

講演では、特に、『“粗利益率”について他社と比較することが大事』との説明がありました。確かに、同業他社の粗利益率との比較が出来れば色々なことが見えてくるでしょう。さらに突っ込んで言えば、売りが弱いか、仕入れが弱いか、といったことが分かれば、自社をどう改善すればよいかが見えてきます。加えて、講師からは「問題なのは、問題が何か分からないこと」との指摘がありましたが、的を得ています。

当社は、建設業として登録しています。大半の建設業者は、「経営審査事項審査」を受けており、専門とする登録業種における実力が数値的に評価されています。この経営審査事項の結果はインターネットでだれでも閲覧することが出来ます。そして、結果の中に財務諸表の概要が開示されています。これを見ることで、建設業の同業他社の財務状態が概ねどのような状況にあるのか把握することが出来ます。そして、同業他社の財務状態を経年的に把握することで、見えてくることがあります。自分の立ち位置を把握するとともに、他社においてどのような改善策が実施されているのかを推察することもできます。業種によって様々かと思いますが、こういった情報収集とその分析、それを踏まえた経営改善は非常に重要な取り組みだと認識しています。

3.金融機関との信頼関係~実績と発展がベース~

“中小会計要領のお役立ち”、三つ目は、「金融機関との信頼関係」という効果です。

リーフレットでは『自社の財務について、金融機関など外部の利害関係者への報告・説明が正確なものとなり、利害関係者との信頼関係の構築に繋がります。』とあります。昔のことは良く分かりませんが、今日では、金融機関からの資金調達が必要な会社において、金融機関に報告する財務をごまかしたところで、メリットはほとんどありません。むしろ、財務が悪いのであれば、勇気を持ってその実情を開示し、その上でどのように対応していくべきか金融機関と話し合っていく、という姿勢が大事だし評価されるでしょう。

しかし、ここでも忘れてはならないのは、自社の財務を、正直に、正確に報告したからといって、事業継続が期待出来ない状況では結局支援は受けられない(場合もある)ということです。正しい財務は金融機関との信頼関係を構築するベースではあるが、金融機関から融資等の支援を受けられることを確約するものではない訳です。正しい財務を報告することが金融機関との信頼関係構築につながるのではなく、将来に向けた事業の発展を展望し、その実現に向けて着実に毎期の実績(利益)を計上していくことが、信頼関係構築の基本に他なりません。そこを勘違いしないことがとても重要だと感じます。

そのために役立つのが同友会の経営指針です。経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を定め、それを着実に実行に移し、結果を出していく。そのことが、金融機関からとても評価を受けることは、当社が実際に取り組んだ経験からも実感します。同友会で無くても構いません。将来を展望し、計画を立て、着実に実行する。そして、その結果は正しい財務処理によっていなければならない。そのことを改めて感じたところです。

配布されたリーフレット類

今回紹介して頂いた「中小会計要領」。会計事務所に確認したところ、実務的な処理については当社の会計でも一部そぐわないところがあるようでした。いずれも今後是正していくべき事項であり、出来るだけ早い時期に、当社の会計処理もこの中小会計要領に沿ったものにしたいと考えています。ただ、この中小会計要領が求めているのは極めて基本的なことであり、誠実に真摯に経営に取り組む姿勢そのもの、とも言えます。会計を正しく行った上で、経営を伸ばしていく。その一言に尽きるような気がします。

リーフレットの表紙に書かれた「新規投資をしたいけど、財務は大丈夫…?」、「もっと資金調達をスムーズに行いたい…」、「頑張っているのに、経営が良くならない…」。といった課題。『これらの問題の解決に中小会計要領が役立つ』とPRされています。繰り返しになりますが、中小会計要領に沿って会計をするだけで、これらの問題が解決する訳ではありません。正しい会計は、課題解決に向けて正しい解決策を導くためのベースであり、適切な会計を前提に経営を伸ばしていくとこそが本質、との理解を再度確認したいところです。

2013
02.08

2013年1月30日、島根県技術士会青年部会と島根県立大学との交流企画、「The 仕事人s‘day 島根県技術士会青年部ワールド・カフェ」が開催されました。島根県技術士会青年部では、これまで、島根大学及び松江高専との産学交流会イベント(平成24年度はこちら)を開催してきましたが、島根県立大学との交流は初めての企画となります。

今回の企画は、「働くってどういうこと?」というテーマで、これから就職活動が本格化する3年生を主対象に、技術士会青年部メンバーを交えたワールド・カフェを開催するというものです。技術士会メンバーが9名、学生が24名という構成で、8テーブルに分かれて話し合いを行いました。初めての企画としては、まずますの参加者で予想外の盛り上がりを見せ、成功裏に終了しました。関係者のみなさまに感謝申し上げます。その様子と、学生のみなさんとの交流を経て感じた気づきについて整理しておきます。

ワールド・カフェによる話し合いの様子

1.なぜ技術士が文系大学に~今後の島根をどうして行くのか?~

島根県立大学は、島根県浜田市に本部がある大学です。2007年に島根県立島根女子短期大学、島根県立看護短期大学と統合し、浜田、松江にキャンパスを持つ大学となりました。今回の企画は、本部のある浜田キャンパスで開催しています。浜田キャンパスは、総合政策学部のみを有する単科大学となっていますが、その学習範囲は多様で、キャリア教育や島根の地域課題の解決などをフィールドワークするなど、特色ある教育が展開されています。

一方、島根県技術士会は、科学技術に関する高度専門家である「技術士」の集団であり、いわゆる“理系”の集団と言う事になります。このため、これまでは島根大学の総合理工学部・松江高専との交流を進めてきました。そのねらいは、理系学生に技術士という資格とその役割を理解してもらい、今後、技術者として社会に出ていくにあたっての支援の一助にしてもらいたいというものです。ところが、今回の島根県立大学の総合政策学部は“文系”の学科です。なぜ、文系の大学と交流を図っていくのか。これまでのスタンスとは異なる位置づけでの取組みとなってきます。

技術士会青年部内でも明確にオーソライズされている訳ではないのですが、一つは、「島根を今後どうしていくのか?」という大きなテーマが根底にあると考えています。“学生か社会人か”ということではない。ましてや、“文系か理系か”ではない。誰がやるのか、誰とやるのか、何をするのか。それが大事だと考えています。その意味では、一般的な感覚としてあまり縁のなさそうな、県立大学(文系学部)と技術士会ですが、その交流が何か新しいものを生み出すきっかけになるかもしれません。やってみなくちゃ分からないからやってみる。その姿勢で臨んだ今回の企画。参加した技術士会メンバーを大いに刺激を受け、またとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。次年度以降の展開に期待したいと考えています。

2.お金だけでは無い価値観~時代を映す鏡か、意欲ある学生のスタンダードか~

今回のワールド・カフェのテーマは「働くってどういうこと?」でした。就職活動を開始する前に「働く」ということの意味を考えて頂く機会にしてもらいたいと考え、設定したテーマです。働く意味。私も、会社を経営するようになった今だからこそ、自分自身に問いかけられても自分なりの回答を述べることはできます。しかし、学校を出て就職したての自分だったら果たして回答できたのか、はなはだ疑問です。そういった、本当は大事なことだけど、中々考えたり話し合ったりする機会のない大きなテーマについて話し合う機会。それも、ワールド・カフェによる話し合いの大きなねらいだと考えています。

そうだとしても、感心するのは、こういった企画に「30名近い学生が集まる」ということです。就職が厳しい時代。様々な形で情報収集し、就職活動につなげたいという思いを持つ学生も多いことは分かります。しかし、単位がつく訳でもない活動に参加するという姿勢は、私が学生だった頃の感覚からすれば大変素晴らしいし、そういう積極性のある学生が居ること自体が頼もしく感じます。

今回、私はファシリテータ役で、直接話し合いには参加していませんでしたが、テーブルを回りながら聴いて見ていて感じたのは、「働く意味はお金だけではない」という趣旨の話が良く聴かれたことです。もちろん学生さんからです。自分の好きな事=仕事でいいのか、どんな時に働きがいを見出せるのか、人の役に立つことがしたい、など、“働く”という学生さんにとってはまだよく分からない領域の問いかけにも関わらず、テーマに真摯に向き合って話し合いをして頂きました。思い起こせば、私が就職を考えていた頃は、求人資料の初任給の金額ばかり気にしていたように思い起こされます。時代が違うということはあるでしょうが、彼らの真剣な姿勢には大変感銘を受けます。今後彼らの歩む人生が素晴らしいものになるよう、微力ながら応援できればと考えています。

3.島根県立大学の取組みがもたらすもの~地元で学び、地元で働く~

今回の交流企画、元々は、島根県商工労働部が主催する平成24年度人財塾において、島根県立大学のキャリア推進室のご担当者とご縁を頂いたことがきっかけでした。人財塾は、島根県内の経営者又はそれに準ずる方々が経営を学ぶ場です。そこに大学の事務方の担当者がいらっしゃったのは、一つは、学生の就職先の候補として県内企業の経営者の方々とのネットワークを構築する、という目的を持たれていたからだそうです。その点、技術士会との交流はすぐに“就職先”にはつながらないかもしれませんが、広く県内の企業・業種の動向を知って頂く機会にはなったと思います。こういった熱意を持った支援体制があるということも、学生にとっては大変幸せなことだと思います。

この、地元企業との連携を深める、という取り組みは島根の将来を展望する上でも大きな意味を持つと考えます。島根県立大学に限りませんが、多くの学生は就職先を県外に求めます。県立大学の最新データ(平成24年3月卒業生データ)によると、県内就職率は34.4%となっています。この数字は、県内の就職状況をみるとかなり健闘しているデータではないかと思いますが、県外就職が中心にならざるを得ないのは事実です。しかし、仮に県外出身者であっても、せっかく島根で学んだ学生の7割近くが、県外に就職を求めるというのは残念なことだと捉えなければなりません。我々、企業経営者の力不足という面も大いにあるでしょう。

その状況を少しでも改善するために、現在、県内の中小企業とネットワークを構築し、人財の地産地消とでもいうべき流れをつくりだそうというのが、県立大学の試みではないかと理解しています。大学は地域の企業が求める優れた人財を育成し、企業はその人財を採用できるよう経営を伸ばす。その間を各種の交流や実践的な学びの場の提供などでつないでいく。そういう姿が実現できた時、島根の地域の経済的、人財的な活性化が実現していくのではないかと感じています。

ファシリテーションする私

今回、技術士会青年部としては初めての企画でしたが、話し合いは大変盛り上がり、学生さんだけでなく、技術士会メンバーも様々な学びや気づきがあったようです。私自身、今回初めて島根県立大学の浜田キャンパスに出向きました。浜田市街からも近く、広々とした解放的なキャンパスで1000名以上の学生が学んでいます。県外から入学した方も多いと思いますが、縁あって島根の地に来られた学生が島根で働き、生活する社会人と交流する。その中から、この地域の持つ特性や、そこで働く人たちの想いを聴く。そういう機会があるだけでも、何かの広がりが起きるような気がしています。次年度以降も何らかの形での交流を継続したいと考えています。

2013
02.01

島根県商工労働部が主催する平成24年度「人財塾」に参加しています。昨年度に引き続き2年連続で参加させて頂きましたが、今回で最終回です。今年度は、計6回開催された企画のうち、第1回第5回、そして今回の第6回に参加しました。残りの3回は残念ながら都合が付かず、参加を見送りました。貴重な機会も数多くあったので残念でした。いずれにしても、県内外の優良企業の経営を学ぶ貴重な機会となりましたし、人財塾に参加された県内の様々な企業の経営者又はそれに準ずるみなさんと交流の機会を持てたのは、大変有意義でした。今回、最終回の内容とその関連企画について整理しておきます。

1.塾生全員による経営ビジョンの発表~自社の立ち位置の明確化~

平成24年度人財塾最終回の内容は、計26名の塾生が、今回の塾を通じて作成した「経営ビジョン」を全員で発表するというものです。ここでの“経営ビジョン”は、共通の様式に各社の既存の理念や方向性、さらに今後変えていく内容を比較して整理する形式です。発表時間は5分。限られた時間ですが、限られているからこそ、何を伝えるのかが重要です。そして、3人ずつ発表した後、質疑応答の時間を15分ずつとるというスタイル。いかんせん人数が多いので、一人あたりの時間が足りないという印象はありましたが、それでも、26名の経営者又はそれに準ずる方々の経営に対する考え方(理念、ビジョン、経営方針等)を一度に聴くという機会は中々ありません。各社各様のアプローチ、各社のおかれているステージ、方向性、戦略などとても興味深く聴かせて頂きました。

この発表会で何が得られたのか。私の捉え方は「自社(又は自分)立ち位置を明確にする」ということだと感じます。つい先日鳥取同友会の例会で聴いた話の受け売りになりますが、26名(社)それぞれの実情を、「経営ビジョン」という様式でまとめた資料で拝見し、さらに実情を率直に伺うことは、自らの経営の方向付けを考える、また検証するという作業に際して大変参考になります。先行して取組み、すでに明確なものを確立している方もあれば、緒に付いたばかりの方、試行錯誤・模索中の方、様々です。自社が今回のメンバー全体の中で、どのような立ち位置にあるのかということも良く分かります。それが分かるからこそ、今後どうしていくべきか、なにから手を付けていくべきか、考えるきっかけになりました。

これまで2カ年にわたって参加させて頂いた人財塾。塾の最終アウトプットは、この「経営ビジョン」なのですが、その割にはこの造り込みにかける時間があまり確保されていません。塾生の自主性にゆだねられています。経営者なのだから経営を考えるのは当たりではありますが、聴き比べれば、よく検討されたと感じるものがある一方、試行錯誤して上手くまとめられなかった、時間切れとなった、と見受けられるものもありました。次年度以降の塾の構成では、最終的なアウトプットとしての経営ビジョンにつながるような毎回の学びの設定、又は、経営ビジョンそのものをつくる時間(合宿的なものも面白いかもしれません)の確保、そういった配慮があれば、より素晴らしいものになるのではないかと感じたところです。

塾生全員による経営ビジョン発表

2.企業経営とは、会社に関わりのある人を永遠に幸せにするための活動

前述の経営ビジョンの発表の後、本塾の顧問として指導を頂いている、法政大学大学院の坂本光司先生の講評がありました。その中からいくつか整理しておきます。

一つ目は、「企業経営とはなんぞや?」という問いかけに対する回答です。坂本先生は、「会社に関わりのある人を永遠に幸せにするための活動」と明言されます。関わりのある人とは、社員、その家族、取引先、お客さま、株主、など会社に関わりのある方全てのことを指しています。そして“永遠に”というのは、会社に勤めている時だけでなく、退職した後でも幸せだったと感じられるような会社にしていくということ。そこまで出来れば本物だし、本気で社員を幸せにしようと考えれば、究極はそこに行きつくのだろうと感じたところです。

二つ目は、「なぜ会社に(業績の)格差がつくのか?」という問いかけに対する回答です。それは、まず目的の格差があるから。“なんのために”というところでまず差がついている。「会社に関わりのある人のために」という視点が無い会社はいい会社になれていないということでしょう。その次は、“浸透の格差”。いい理念があってもそれが浸透していないという点。この浸透度については、次の3つの指摘がありました。1)理念と戦略、行動指針とが整合をもっていなければならない(多くの場合整合性が不十分)、2)浸透のための様々な仕掛け(上から、下から、横から)、3)最も体現している人が社長と管理職でなければならない。3つめはとても身につまされる指摘です。自ら定めた理念に基づいて行動できているのかどうか。妥協していないか、怠けていないか、常に自分を律して、初心に帰ることを忘れないようにしたいと思います。この人財塾もそういった機会として、大変役に立っていると考えています。

法政大学大学院 坂本光司教授による講評

3.会社見学を通じて見えてくるもの~見学に来て頂けることへの感謝~

前述の人財塾最終回が終了した翌日、恒例の企画として塾生として参画している企業への会社訪問が企画されました。そして今回、協和地建コンサルタントに塾生のみなさんにお越し頂く機会をつくって頂きました。来社頂いたのは塾生11名、事務局3名という構成でした。訪問時間はわずか1時間でしたが、せっかく来社して頂くこの機会をぜひいいものにしたいと考え、出来る限りの対応をさせて頂きました。こういった機会を頂いたことに感謝したいと思います。

振り返れば、ほんの数年前までの当社は、とても社外から会社見学のお客様をお招きできる状況はありませんでした。見て頂くべきところも無かったでしょう。しかし、この半年、様々な方にお越しいただく機会があります。それは、一つは、地中熱ヒートポンプ空調システムの導入が契機となっています。それをさらに遡れば、経営指針を定めたことにたどり着きます。経営指針において、地熱・地中熱エネルギーの活用に取り組むという方向性を定めたことに始まります。経営の方向を定めるということが、それほど大きな変化をもたらすのだと、実感するところです。現在は、基本的に社長である私が対応、説明を引きうけていますが、いずれは、社員のみなさんに色々な説明や対応をして頂けるようにしていきたいと考えています。

また、もう一つきっかけとなったのは、島根経営品質研究会のベンチマーキングでした。会社に、取引先でもない企業の方々が集団で来られるのは初めてだったとおもいます。経験の無かった社内では、最初の訪問時はなにやらよそよそしい、「何が始まるんだ?」といった雰囲気での受け入れだったと思います。しかし、繰り返し訪問があるうちに、またそれも少しずつ日常に取り込まれている感があります。職場が、社外の方の目にさらされているという実感。それは、職場をきれいに保つ、恥ずかしくない状況に保つ、といった効果もあるし、なにより、他人が見学に来る会社、ということはやはり誇らしいものだと思います。そしてそれが、明日をよりよくする動機づけにつながる。ですので、訪問を依頼されれば、今後も出来る限り受けたいと考えています。それがきっと未来につながる、そう信じています。

協和地建コンサルタント会社訪問の様子

この「人財塾」という学びの場、島根県の商工労働部が企画されて3年目になります。来年度も引き続いて開催され、卒業生300社を目指すとのこと。この塾で学び、刺激を受け、坂本光司先生の「人を大切にする経営」を実践する企業がこの島根県にたくさん出現することで、島根が大きく変わってくるのではないかと感じます。また、島根県内で活動する経営を学ぶ様々な組織とも連携を図り、より多様な視点で、より多様な経営者が交わる、機会の創出を期待したいところです。この1年間の学びに感謝し、また次年度以降の新しい展開を期待して、人財塾を一先ず卒業させて頂きます。この一年間、本当にありがとうございました。