2013
12.26

温泉めぐりのブログも、この年末で通算61箇所に達しました。

2012年末では50箇所、この1年では11箇所しか増えていません。振り返ると、2012年も年間11箇所、2011年も11箇所、なんと3年連続で一年あたり11箇所となりました。もう少し頑張って色々出かけたいですが、出来ていません。“総括”するのがはばかられる少なさですが、このところ、毎年最後のブログのネタにしていますので、今年も少ないなりにまとめてみたいと思います。例年に習い、総括はこの1年に廻った温泉の中から、「泉質」、「たたずまい」、「美肌」、の3つの観点で1つずつ選んでいます。今回、いずれも宿泊施設を選んでいますが、すべて日帰り入浴が可能です。ぜひ一度、お試し頂ければ幸いです。

1.健康食とかけ流し温泉で体の内外から温泉を極める ~鷺の湯温泉(竹葉)~

今年の“泉質”温泉として取り上げるのは、「鷺の湯温泉(竹葉)」(島根県安来市)です。

鷺の湯温泉は、開湯が戦国時代にさかのぼる歴史ある温泉です。現在は、世界一の庭園として名を馳せる「足立美術館」に隣接した温泉地としても有名になりました。泉温54.5℃、湧出量毎分600㍑という恵まれた温泉水は、現在、3軒の温泉旅館と2つの公共施設に供給されており、いずれの施設も24時間かけ流しでお湯を利用(入浴可能時間は各施設によります)されています。竹葉は、その鷺の湯温泉旅館の中の1つです。女将とご主人のご夫婦が中心に切り盛りされる、親しみあるおもてなしが魅力の宿です。

鷺の湯温泉の泉質は、含放射能‐ナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩泉。成分総計は1.22g/kgと、あまり濃くない泉質なので、湯あたりもしにくく、かつ適度な成分量を有する、入りやすいバランスのとれた温泉と言えます。泉質の特徴としては、塩化物泉の持つ「温まりの湯」の効果と、硫酸塩泉の「傷の湯」の効果を合わせ持ちます。体が温まりやすく、傷の治癒にも効果が期待できます。そして、この温泉は、かけ流しで常に新鮮なお湯を利用することができるという恵まれた環境にあり、お湯の「鮮度」がすばらしい。泉質の持つ特性が最大限に享受できます。

そして、竹葉で提供される元無農薬・減農薬野菜中心の「マクロビオティックランチ」、女将自ら企画調理する季節感豊かな「薬膳料理」など、地元食材で美容と健康に配慮した食の魅力も特徴です。マクロビオティック食等の健康食と温泉との組み合わせは、体の中外から改善を図ることが期待され、健康と美容を追求する方に好適な温泉宿と言えるでしょう。どのくらい健康と美容に効果があるのか、全国に誇る島根県NO1美人女将を実際にご覧になってお確かめ下さい。

女将のブログはこちら ~神話の国☆島根県出雲路~ 温泉旅館『竹葉』女将の二の腕繁盛記 

冬景色の露天風呂は格別

2.秘境の景勝を堪能する立地としつらえが魅力~立久恵峡温泉(御所覧場)~

温泉の雰囲気・たたずまい、という観点で取り上げるのは、「立久恵峡温泉(御所覧場)」(島根県出雲市)です。

立久恵峡温泉は、出雲市を代表する景勝地である“立久恵峡”にある温泉で、渓流沿いにある2軒の旅館で入浴することができます。いずれも日帰り入浴が可能です。そのうち松江藩主 松平不味公の別荘跡地に立地するという「御所覧場」です。

この御所覧場のお風呂の特徴は、「露天風呂しかない」という点(※昨年のリニューアルでお風呂が新設されたお部屋もあるようです。)です。しかも、旅館敷地と道路を挟んだ向かい側、渓谷の川辺に面して風呂があります。渓谷脇の道路から川沿いに少し降りる形で露天風呂に向います。露天風呂の中は、岩風呂風のつくりで、露天風呂といいながらもかなりの部分が屋根で覆われています。むしろ、内湯の一部が開口しているといってもいいかもしれません。しかし、前面に広がる立久恵峡の渓谷に向った大きく開けており、山陰随一の景勝を眺めながらゆっくりと浸かれる広めの露天風呂は、非日常的な秘湯の雰囲気を十二分に堪能させてくれます。

“露天風呂のみ”というこの温泉。心を落ち着けたい時、日常の雑踏を離れたい時など、立久恵峡の四季折々の景観を楽しみにしながら訪れるのもよさそうです。なお、貸し切り露天風呂もあるようです。ホームページによると、宿泊の方は無料で利用できるようです。また、御所覧場は、昨年、宿の中をリニューアルされたようで、お部屋からの立久恵峡の景観も絶景のようです。

露天風呂から立久恵峡の絶景を堪能できる

3.山陰随一のアルカリ性単純泉が掲げる日本三大“美肌の湯”~斐乃上温泉(かたくりの里 民宿たなべ)~

今年の“美肌”温泉は、「斐乃上温泉(かたくりの里 民宿たなべ)」(島根県奥出雲町)です。

この斐乃上温泉は、「日本三大美肌の湯」の一つとして著名です。中央温泉研究所(東京)と温泉旅行認定藤田聡博士によって認定されたということですが、その“美肌効果”の源泉は、ph値9.9と山陰エリアでも随一の高いアルカリ性の泉質にあります。入浴すると、アルカリ度が高い温泉特有のぬめり感を強く感じます。古い角質層の新陳代謝が強く促進され、くすみが取れたり肌がツルツルになる効果が大いに期待できます。

斐乃上温泉の湧出量は毎分800㍑を誇り、この豊富な湯量を活かすこともあってか、シャワー・カランにも温泉水が使われています。このため、シャワーで体を洗い流す時の感触もまた特徴的なものがあります。実は、斐乃上温泉は、協和地建コンサルタントが初めて温泉開発を手掛けた案件で、現泉源は昭和62年から63年にかけて掘削されました。当社の温泉開発の歴史の発端となった記念すべき温泉と言え、ますますの活用と発展を願うところです。

さて、今年の11月、大手化粧品メーカーが全国の女性の肌を調査した「ニッポン美肌県グランプリ」で島根県が2年連続美肌日本一に輝きました。すばらしいことです。日照時間の短さや空気中の水分の多さ、喫煙率の低さ、などが要因と説明されるようですが、温泉開発に携わる者としては、県内各地に点在する“美肌温泉”も一役買っているに違いないと確信しています。美肌県V3に向け、ぜひ温泉を活用しましょう!

露天風呂で奥出雲の自然を満喫(朝なのでお湯が抜いてあります)

温泉は、その地域の地下から湧き出る貴重な資源です。地域によって多様に活用され、様々な形で地域の役に立っています。良い温泉も悪い温泉もありません。また、近年ではエネルギーの側面からも注目されています。当社も、昨年度から有福温泉のみなさんと協力し、「地熱発電」の可能性を追求し、検討を進めています。温泉開発にたずさわる者として、温泉の魅力や効果をもっと知ってもらい、様々な温泉がその特性を活かし、地域の役に立つことを願っています。

総括では、限られた温泉の中からあえて3つ選んでいます。すべて私の主観ですので、ご承知置き下さい。少しでも、ご覧頂いている方の参考になれば幸いです。来年は、もっとたくさんの温泉を巡れるよう頑張ります。これからも温泉めぐりのブログ、そして協和地建コンサルタントをよろしくお願いします。

〔2013年温泉巡り一覧〕

61 小浜温泉(春陽館) 長崎県雲仙市小浜町

60 大山火の神岳温泉(豪円湯院) 鳥取県大山町

59 玉造温泉(玉造国際ホテル) 島根県松江市玉湯町

58 有福温泉(小川屋旅館) 島根県江津市有福温泉町

57 半べえ温泉(半べえ庭園内) 広島市南区

56 立久恵峡温泉(御所覧場) 島根県出雲市

55 斐乃上温泉(かたくりの里 民宿たなべ) 島根県奥出雲町

54 たかの温泉(神之瀬の湯) 広島県庄原市高野町

53 松江しんじ湖温泉(松江ニューアーバンホテル) 島根県松江市

52 鷺の湯温泉(旅館「竹葉」) 島根県安来市

51 出雲須佐温泉(ゆかり館) 島根県出雲市佐田町

2013
12.18

社長の温泉めぐり61 小浜温泉(春陽館) 長崎県雲仙市小浜町

私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、温泉開発を行う会社の社長として、温泉に詳しくなければ説得力がありません。そこで、仕事や私用で出かけた先で温泉を巡り、少しずつ記事にしていくことにしました。温泉ソムリエらしいコメントにも配慮したいと思います。

61箇所目は、長崎県雲仙市小浜町の小浜温泉「春陽館」です。訪問日は、2013年12月11日です。

長崎県雲仙市にある小浜温泉は、雲仙普賢岳のふもとに位置する温泉です。約100℃の温泉が日量15,000t、ほとんど自噴で湧出するという九州の地熱地帯らしい温泉地で、ホームページでは「日本一熱量の多い温泉地」としてPRされています。現在24軒ある宿泊施設は大半が自己所有か共同管理の泉源を所有しているそうです。2013年から未利用温泉を活用した地熱発電(バイナリー発電)を開始したことでも知られており、今回、このバイナリー発電施設の現地調査に訪れた際に、こちらの春陽館に宿泊させて頂きました。築70年の“唐波風”の門構えが目を引く本館が特徴で、昭和の古き良き時代を彷彿とさせます。島根県からの移動はかなりの長旅となりましたが、良質な温泉でゆっくり体を休めることができました。

春陽館(本館)の外観

小浜温泉の泉質は、「ナトリウム-塩化物泉」です。塩素イオンの含有量が高く、「温まりの湯」「傷の湯」ということができます。地元の方も、「冬場はいいが、夏場は汗がとまらなくなる。」とおっしゃいます。春陽館の源泉も同様の泉質で、成分分析書上の温度は、99.6℃、自噴泉、成分総計9.150g/kg、となっています。湧出量が豊富な上に、成分量も高い温泉と言えます。旅館の方に伺うと、泉源の掘削深度はわずか80mほど。山陰地方ではこういった温泉はお目にかかれないので、温泉の地域性、そして地熱地帯の温泉の熱量のすごさを改めて感じます。

なお、100℃近い温泉だけにそのまま湯船に注ぐことはできず、すべての旅館で加水により温度を下げているそうです。春陽館でも温泉水のさし湯口近くで、汲み上げた源泉に井戸水を加水し、湯船に注がれていました。この温度調整はかなりアナログな方法で、風呂の中も上澄みがかなり熱く、底はほどほど。自分でお湯をかき混ぜで温度調整するとちょうどいい感じでした。入浴中には、時たま旅館の方が入ってこられて、湯加減をみながら水の量を調整されていました。私が目視した限りではお湯と同量かそれ以上の地下水が加水されていましたので、成分的には半分程度には薄まっていると思います。それでもかなりの成分量ですし、源泉かけ流しで常にお湯が入れ替わっていますので、お湯の鮮度はとても高く感じられました。

本館大浴場(山頭火の湯)

旅館内の風呂場は、計3箇所。大浴場が2箇所と、新館屋上の露天風呂、という構成です。大浴場は、日替わりで男湯と女湯が入れ替わるため、夜の入浴と朝風呂とで異なった風呂を楽しめるようになっています。本館大浴場は“山頭火の湯”と名づけられ、本館建設当時、70年前の昭和の風情を残したお風呂、というふれこみです。中は、タイル張りの床面に岩風呂風のしつらえに加え、湯船の中にはタイル張りの大きな柱が並ぶという構成。昔ながらの銭湯を少しゴージャスにしたような雰囲気で、今時のセンスと異なるのは確かですが、当時の時代の価値観を伺い知ることができる、貴重なしつらえと思います。

この「山頭火の湯」、洗い場は6箇所あり、ボディソープ、リンスインシャンプーが備わっています。洗い場は仕切りの無いタイプで、感覚はやや狭目。また、お湯はボイラー加温のようですが、ちょっとシャワーを止めると直ぐに水が冷たくなるので、取り扱いにはコツが要りそうです。この辺あたりの古さは否めません。ロッカーは籠のみで、貴重品ロッカーが別にあるタイプ。これは宿泊施設ですので妥当なところでしょう。洗面台は3箇所でいずれもドライヤーが備えてあります。

なお、もう一つ新館に展望露天風呂があったのですが、残念ながらそこは温泉ではなく沸かし湯だということで、入浴は見合わせました。こちらの温泉は、スケール(いわゆる湯の花)が付きやすい泉質で、屋上階まで温泉水の配管を行うと、そのメンテナンスが困難になるそうで、温泉の送水は行われていないとのことでした。

この「春陽館」、施設自体の古さはあるものの、木造3階建てのボリューム感ある和風建築は小浜温泉内でもひときわ目に付きます。また、地元の旬の素材をふんだんに取り入れた食事のコストパフォーマンスはすばらしく、一瞬プランの値段を間違えたのではないかと焦りました(笑)。中々訪れる機会のある温泉地ではありませんが、満足度の高い、印象に残る宿として記憶に留めておきたいと思います。

日本一なが~い足湯「ほっとふっと105」

この小浜温泉、豊富な温泉を活用した様々な施設があります。特徴的なものの一つとして「日本一なが~い足湯」という「ほっとふっと105」があります。105とは、足湯の延長が105mとのことで、日本一の延長を誇る足湯だそうです。私が訪れたのは12月の平日朝だったということもあり、ほとんど利用者がありませんでしたが、観光シーズンには利用者で賑わうようです。また、同じ場所に、温泉熱を活用した自由に使用できる“蒸がま”が整備されており、隣接する売店で野菜や卵などを購入し、数分から数十分かけて蒸し料理を楽しむことができます。

小浜温泉バイナリー発電所見学風景

今回の訪問目的でもある、バイナリー発電所は、2013年4月から、全国に先駆けて未利用温泉水を活用した地熱発電施設として運用を開始されています。地域の産学官が共同で推進する、小浜温泉エネルギー活用推進プロジェクトにより実現したものです。先進事例だけに様々な苦労があるようでしたが、未利用の熱資源を有効活用して地域の活性化につなげたい、という地元の方々の強い熱意に感銘を受けました。なお、この小浜温泉バイナリー発電所を核とした「小浜温泉ジオツアー」という企画も運営されており、4月以降、1800名以上の参加者があったとのことです。島根県でも、このような温泉熱を活用したバイナリー発電施設をつくりたいと考え、具体化に向けて研究を進めています。とにかく高い熱量(温度×湯量)が必要なので、島根県内の温泉では中々ハードルが高いのですが、今後の技術革新も見据えながら、あきらめずに取り組んで行きたいと考えています。

2013
12.13

2013年12月7日(土)、島根同友会の第13回経営指針成文化セミナー成果発表会が開催されました。このセミナーは、島根同友会会員企業を対象に、経営指針(経営理念、経営方針、経営計画)を体系的に策定するものです。今回、6名(6社)の参加者があり、およそ5カ月の時間をかけて自社の経営指針をまとめました。成果発表会は、その経営指針を発表するだけでなく、経営指針に基づいた経営の実践に向け、発表会出席者からさまざまな意見を聴取する場にもなります。また、自社における発表のための練習の場という側面もあります。経営者が、自社の将来をかけて策定する経営指針。その策定の経緯から成果の内容までを聴くことができるこの成果発表会は、同友会活動の中でも最も多くの学びを得られる機会の一つと考えています。今回の発表会を通じて感じたことを整理しておきます。

奥長先生(東京同友会)による最終講義

1.フォローアップの充実が成果の充実へ~アドバイザーと受講生の真剣勝負~

今回の成文化セミナー、そして成果発表会を通じて大きく感じたのは、「フォローアップの充実」という点です。

島根同友会の経営指針成文化セミナーは、2日間のセミナーで集中して経営指針の素案を策定した後、1カ月に1回のペースで計3回のフォローアップセミナーを開催し、その後、成果発表会を迎えます。受講者には、それぞれ2名のアドバイザー(会内の経営指針策定済の経営者)が付き、フォローアップセミナー前に最低1回のミーティングを行って各社の経営指針の精度を高めていきます。このアドバイザーとのミーティングをきっかけに、内容が大きく進化していきます。今回、その質の高まり方が今までになく明確で、継続して各社の指針を聴く中で大変強く感じた部分でした。

最初の二日間のセミナーで策定した素案は、まだまだ荒削りで、経営者自身も十分に自分のものに出来ていない面があります。それは当然で、各社の将来を左右する経営の方向を、二日間で完全にまとめられるものではありません。しかし、一つのたたき台には違いありません。それをベースに、アドバイザーとの議論を通じて、経営者自身の考え方を明確化し、或いは、心の奥底にある想いを引き出し、進むべき道筋としてまとめあげる。それは、アドバイザーと受講生の真剣勝負であり、また、アドバイザー自身の成長の場でもあります。今回の成果は、受講生のみなさんが真剣に取り組んだ事はもちろん、アドバイザーを担当された同友会会員の方々のレベルが高まってきた結果でもあると考えています。

私も、今回アドバイザーを務めさせて頂きました。経営指針に対するアドバイスは、すなわち自分自身への問いかけです。アドバイスしていることに対し、自分自身はどうなのか。業種や業界は関係なく、自分自身を見つめ直す貴重な機会となります。そして、経営指針を定めて未来を切り開こうと意欲を燃やす経営者の方と話をすること自体、力を与えてもらえます。受講者とアドバイザーが共に学び、成長する。これも同友会の経営指針の大きな魅力ではないかと考えています。

2.経営方針と経営目標の重要性~わくわくする将来像が社員をその気にさせる~

成果発表会には、7月のセミナーで講師を務めて頂いた、(有)コンサルタント朋友(東京同友会)の奥長先生も同席して頂き、経営指針の策定・発表を見据えた最終講義、そして各受講生の経営指針に対して総括をして頂きました。

その中で、特に着目されていたのが「経営方針の重要性」ということです。

経営指針は、経営理念、経営方針、経営計画、から構成され、三位一体で「経営指針」と呼んでいます。どれが欠けても経営指針としては不足ですし、どれが一番大事ということはない、と考えています。しかし、今回の受講生が発表した経営指針に対しては、「経営方針」をどう明確化するか、について的確な助言がありました。それは、「経営方針において、“ワクワクする将来像”を示す」というものです。7月のセミナーの際にも同じような説明がありましたし、私が経営指針を策定した際にも同様の指摘がありました。

経営指針成文化セミナーで策定する各社の経営方針では、3年後の経営目標を掲げます。その際に、3年後、自分の会社はどんな会社になっているのか、どんな姿で社員が働き、世の中の役に立っているのか、社長、そして社員がイメージできるような将来像を描く、ということを奥長先生は指摘されています。

あらためて今回発表された受講生の資料をみてみると、「経営方針」として、会社の進むべき基本方向として示したのは、“どんなことをするのか”、“どこに力をいれるのか”、といった事柄が多く記されていました。それはそれでいいのですが、その結果として「3年後どんな会社になるのか」という将来像をうまく表現できていた受講生は少なかった。奥長先生はまさにそこを指摘されていたと考えています。

おそらく、それぞれの受講生の頭の中には、3年後、自分がどんな風に活躍しているのか、会社がどんな風に事業を展開しているのか、漠然とでもイメージが出来上がっていると思います。だから、それに向けてやるべきことの明文化に注力している、という面があります。しかし、社員の目線からみれば、社長が示した理念、そして具体の計画を通じて、自分達がどんな風に活躍しているのか、それをイメージしたいという願望があります。それにうまく応えることで、経営指針を社員への浸透が進みやすくなると感じます。

“わくわくする将来像”、それを上手く表現するのが難しいのも確かです。しかし、社長が目指す会社の姿が、文言として成文化されれば、経営指針の浸透が進むことも間違いありません。受講生のみなさん、そして受講済の我々も、そのことを改めて自分自身のこととして捉え、将来像を共有化していけるよう、今後の取り組みを進めたいと考えています。

3.経営指針を検証する~よきライバルとして高め合う~

成果発表会終了後は、参加者、アドバイザー、そして講師の奥長先生を交えて懇親会を開催し、経営指針に関してさらに議論を深めました。その中で出てきた意見として、「今回の参加メンバーで経営指針の実践状況を検証しよう。」というものがありました。

今回、経営指針を策定した経営者のみなさんは、一緒に経営指針を策定した同期でもあります。私が策定した時も同様に6名の同期がいました。業種は違えど、同じタイミングで策定したご縁もあり、その後の各社の取り組み、実践状況には関心を持っています。そういった仲間で、お互いの実践状況を検証し合おう、という訳です。大変素晴らしい取り組みであり、各期の策定メンバーが自主的にそのような取り組みを実施することが定着すれば、島根同友会の活動もさらに質の高いものとなるでしょう。

言うまでもなく、経営指針を策定しても実践しなければ意味がありません。経営指針に定めた理念、方針、計画を社内で共有、浸透させ、定めた取り組みを実施していく。そこで初めて成果が表れる。中には方向性を見直すケースも出てくるでしょうが、それとて実践してみるから分かる事です。そして、その実践状況を検証し、今後に活かすこと。今後の島根同友会に求められる大きなステップと考えています。

島根同友会の今後の取り組みとして、今年度中に、会内の経営指針策定済の経営者に経営指針策定後の実践状況について検証してもらうという取り組みを計画しています。島根同友会としては初めての試みですが、3カ年計画で定めた数値目標の達成状況も含めて、経営指針の実践状況について複数の経営者の方から報告して頂きます。経営指針を策定したからといって、全てが上手く行く訳ではありません。その後の試行錯誤も多々あると思います。そうした実践の経緯を先輩経営者が次に続く者へ伝えていく。そして、それを定常的な取り組みとして継続していく。それが実現できた時、この「経営指針の成文化」という取り組み自体が、大きく次のステップに飛躍するのではないかと、期待しています。

発表後のコメント、意見交換

私も、一昨年度このセミナーに参加して自社の経営指針を策定しました。現在、実践をはじめて2年目になります。そして、今年からは、島根同友会の「経営労働委員長」という役目を頂き、この経営指針成文化セミナーを中心に、島根同友会会員の経営指針の成文化に向けた取り組みを推進しています。今回の6名の経営指針発表を聴き、また、策定の経緯をみつめながら、この経営指針を策定することの重要性を改めて認識するところです次年度以降、経営指針成文化セミナーの実施体制を強化し、より多くの会員が経営指針を策定できるようにしていく予定です。経営指針を策定し、実践する経営者が増えることで、社員が生き生きと働く会社、社員が幸せになる会社が増え、そして島根が活性化する。そういう未来を築く一翼を担わせて頂いていることに感謝し、今後とも取り組みを継続したいと考えています。

2013
12.04

2013年11月28日、「まちエネ大学」山陰スクールの第1回講座が開催され、参加してきました。この「まちエネ大学」は、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)の普及促進施策の一環として経済産業省資源エネルギー庁が実施するもので、持続可能なまちづくりの推進に向けて、再エネの活用による地域での新しいビジネス創出のための人材育成事業です。全国5箇所でそれぞれ計4回の講座が開催され、この山陰エリア(松江)も会場の一つに選ばれています。先月、プレイベントにも参加してきました。プレイベントを踏まえ、最初の講座がいよいよはじまりましたので、その概要をまとめておきます。

資源エネルギー庁村上課長による補足講義

1.まちエネ大学は「たのしい、もうかる、まじわる」で再エネを学ぶ

「まちエネ大学」のカリキュラムによると、この講座の最終成果は「再エネ事業にかかる事業計画の策定」です。しかし、主催者側としては、講座の全受講者に、それぞれの事業計画を策定してもらおうとは考えていないようです。

今回、講座の冒頭、資源エネルギー庁新エネルギー対策課長村上敬亮さんから、「さまざまなポジションで再エネの普及を担う人になって下さい」という趣旨のメッセージがありました。参加者全員が、再エネの事業を立ち上げなくても、中から数人、本気で取り組む人が出てくればいい。それ以外の人は、中心となって取り組む人を支援する人になる。そういう様々な立場で再エネを理解する人、携わる人を増やすことで、再エネのすそ野を広げ、本当の意味での普及を図る。「まちエネ大学」とは、そういう取り組みなのだと理解しています。

もう一つ、冒頭に話があったのは、再エネにかかわる上での3つのキーワードです。それは、「たのしい」、「もうかる」、「まじわる」。つまり、楽しくない取り組みは続かない、収益性がなければ続かない、そして、“まじわる”ことで深まる。このまじわるとは、“多様性を受け入れる”という趣旨だと説明がありました。この「まじわる」が、まちエネ大学の本当の趣旨に大きく関わっているようです。「たのしい」については、太陽光発電をはじめ、自分達で身の丈にあった身近な発電事業に関われるという“楽しみ”が再エネにはあります。「もうかる」については、固定価格買取制度により、普通にやれば利益を得られる買取単価を国が保証してくれています。ここまでは分かりやすい。後は「まじわる」ということ。ここが肝になる部分なのだろうと思います。

再エネ自体、昨今大変注目されていますが、まだまだ言葉だけが先行し、理解が進んでいない面も多々あるでしょう。また、再エネをビジネスとして見ている人、一市民の立場で見ている人とでは捉え方は異なるでしょう。そういった様々な立場や考え方を超え、“再エネ”という共通の言語で地域に浸透させていく。そのための、各地域の特性も踏まえたその訓練の場、それが「まちエネ大学」なのではないかと考えています。計4回の講座では「グループワーク」に多くの時間を割くカリキュラムが採用されています。それは、再エネに関して、ポジションの違う様々な方と上手くやりとりする訓練の場、と捉えられているようです。私の勝手な理解ですが、その仮説が正しいのかどうか、あと3回の講座でしっかり学びながら確かめてみたいと考えています。

2.事前の映像教材視聴が効果を高める「反転学習」

「まちエネ大学」では、毎回の講座前に、専用サイトで映像教材を視聴します。その上で、本講座ではゲスト講師やファシリテーターが討論型で進める対話中心のカリキュラム、「反転学習」の手法を取り入れています。反転学習とは今回初めて知りましたが、教育現場でも注目されている手法のようです。

一般に、学校や学習講座などでは「授業や講義を受けること」が中心ですが、反転学習では「授業や講義を受けること」は“宿題(予習)”となります。学校や学習講座の時間は、事前に閲覧した動画の内容をベースに、その知識を応用して問題を解いたり議論を行ったりする場となります。授業・講義以外のところで従来の座学で学ぶインプット型の学習を行い、授業・講義の場は、今まであれば宿題や予習の領域であった応用問題への対応や討議の時間として活用される。そこが逆になっているから「反転学習」という訳です。

限られた時間の中で集、講義(説明)にかける時間を減らすことで、講義中は受講者一人一人に対するきめ細かい対応に時間を割くことも可能です。また、受講側にとっても、自分のペースで事前学習に取り組めるという面もあります。また、動画は何度でも再生可能なので、興味のある人、理解が進まなかった人は繰り返し学んでおくことも可能です。こういった事ができるもの、ITC環境の普及が進み、だれでも、どこでも簡単に動画を閲覧できる環境が整ってきたからこそです。新しい時代の学習方法として興味深く体験しました。

実際に受講してみた感想としては、「本気で学ぶ気のある人には有効」というところでしょうか。誰かの指示で参加したような方にとっては苦痛かもしれません。それはさておき、大きな効果としては、やはり、参加者が集まる時間を討議や意見交換に使える、という点でしょう。今回、講座の後半に4名1組でグループワークを行いました。いきなりのグループワークではなく、予め同じ学習教材を視聴しているから、様々な立場の参加者の意見をゆとりを持って捉えることができます。なぜそのように感じるのか、同意出来ることも多々あるし、同じ教材を視聴した上でも自分の考えと異なる着眼点を持つという発見もあります。短時間でこう言った認識を得られるのも、反転学習の効果なのでしょう。

今回、第1回の講座の前に1時間弱のビデオを4本視聴しました。内容自体は興味深いものですが、それはそれで時間も取られます。第1回目の講座の時間が2時間半ですから、事前にそれ以上の事前学習を行っている事になります。実際、講座本番が復習のような形になりますので、理解が深まるのは間違いありません。あと3回講座がありますが、この手法については非常に興味深く感じますので、引き続きその効果を自分自身で感じながら体験していきたいと考えています。

3.市民太陽光発電の先駆者~おひさま進歩エネルギー株式会社~

まちエネ大学第1回目のゲストは、太陽光発電事業の先駆者である、おひさま進歩エネルギー株式会社 代表取締役 原亮弘さんの講演がありました。長野県飯田市において、日本初の「おひさまファンド」として太陽光発電による市民出資事業に取り組まれた会社です。事業開始から10年、ファンドによる資金調達は10億円を超え、発電事業の実績も2,751kWに達しているとのことです。

長野県の飯田市から始まったこの事業、成功の要因としてさまざまなことがあると思いますが、最初の事業で、飯田市内の保育園・公民館等の公的施設に太陽光発電設備を設置した時が大きなポイントです。この時、飯田市とおひさま進歩エネルギー㈱との間の契約締結に際し、飯田市との売電契約及び行政財産の目的外使用について20年の長期契約が締結されました。一般に、行政がこういった形で一民間企業と長期契約を結ぶこと、及び行政財産の目的外使用などを長期契約することは極めて異例です。しかし、飯田市は前例にとらわれず、事業を安定化させるためにはその契約が必須という認識もとで決断された。前例がないことも、一度実施すれば前例になる。新しいことに取り組むに際して重要な点であることを改めて感じたところです。

また、原さんは、「市民出資」という点に関し、「お金の見える化、お金に意志を持たせる行為」と説明されました。預金との対比で考えれば、出資対しては配当が、預金対して利子のリターンがあります。預金も金融機関によって何らかの運用に回される訳ですが、その運用先について関与することはできません。一方、出資は自らの意思でどの事業に自らのお金を預けるかを選択することができます。これは当たり前の事なのですが、再エネ事業のように、発電設備が目に見え、その発電力が把握でき、それが地域で使われていることを実感できるというのは、一般に企業の株式を購入するのに対してより身近で分かりやすい面があります。なおかつ、再エネの固定価格買取制度は、普通に事業をすれば利益が上がり、趣旨に対するリターンを確保できる水準に買取価格が設定されています。

「地域のお金を地域で使おう」といった呼びかけはよく耳にします。よく聴くけども中々分かりにくかったものを、このような分かりやすい仕組みで世に広める。再エネは、こういった面でも世の中の考え方や仕組みを変えていく可能性があると感じたところです。

グループワーク後の発表

まちエネ大学山陰スクール、まだ始まったばかりですが、プレイベントと第1回講義を経ただけで、ここに来なければ逢えなかったたくさんの方々と出会う事ができました。まず、そのご縁に感謝したいと思います。また、私も再エネに取り組んでいる者のはしくれではありますが、基本的な知識や現在の動向について知らないことが山ほどあることが良く分かりました。今後、まだまだたくさん学べることがあると期待が膨らみます。来年の3月までの講座を楽しみながら、しっかり儲かるよう、たくさんの方と交わっていきたいと考えています。