温泉めぐりのブログも、この年末で通算50箇所に達しました。2011年末では39箇所、この1年では11箇所しか増えていません。2011年度も総括しているのですが、なんと昨年も11箇所訪問したのみでした。2年連続で一年あたり11箇所、一カ月に一か所も行っていません。昨年同様、あまりの少なさに“総括”するのがはばかられますが、この3年、毎年最後のブログのネタにしていますので、何とかまとめてみたいと思います。
さて、温泉めぐりのブログの冒頭に決まり文句として書いている「私はさほど風呂好き・温泉好きではありませんが、・・・・」というくだり。最初は本当にそうだったのですが、こうやって温泉を巡っているとさすがに温泉好きになってきますし、温泉施設を見る目も段々と養われてきたような気がします。一方、本来なら気にしなくてもいいような些細な事も気になるようになってきました。ただ、いずれにしても、本来温泉は楽しいものであり、健康増進、美容、レクリエーションなど多様な側面から地域に役に立つ施設であって欲しいとの願いは変わりません。そういった想いを馳せながら、今回は2012年の総括として、この1年に廻った温泉の中から、泉質、たたずまい、美肌、の3つの観点で1つずつ選んでみました。
1.“泉質”は分析表だけでなく誠実な仕事ぶりから ~美都温泉(湯元館)~
今年の“泉質”温泉は、「美都温泉(湯元館)」(島根県益田市美都町)です。
美都温泉の泉質は「アルカリ性単純泉」です。phが8.8と高めなのが特徴ですが、成分分析表で表現される成分の含有量では、特別高い値を示すものもありません。また、源泉温度も33.5℃とやや低いので加温されており、一部循環式が併用されています。
それでも、私が今年の“泉質”で選ぶ温泉とするのは、より新鮮で、より源泉に近いお湯を利用者の方に届けようという姿勢がすばらしいと思うからです。具体的には、まず、営業時間中の循環において「光触媒殺菌装置」を採用し、塩素を一切使わない循環式の温泉として運営されている点です。これは島根県内では湯元館のみだそうです。また、循環量とかけ流し量のバランスも適度に保たれており、アルカリ性温泉の特性である皮膚のヌメヌメ感が直ぐに現れます。その他、衛生面に関する説明が施設内のいたるところで丁寧に行われており、その誠実さに好感が持てます。
単純泉ではありますが、加水されずにできるだけ手を加えない新鮮なお湯が供給されています。含有成分的には、ナトリウム‐炭酸水素塩泉の特性がみられると考えられ、適応症としては、切り傷、火傷、慢性皮膚病などの改善が期待されますし、皮膚の脂肪や分泌物を乳化して洗い流す石鹸のような効果も期待できます。美肌温泉としてのポテンシャルも高い温泉です。
現在、温泉の世界では“源泉かけ流し”がもてはやされますが、循環式であっても徹底したお湯の品質へのこだわり。そして、お客さまに対する誠実な姿勢。非常に好感のもてる温泉施設です。
2.地域の新しい拠点としてたたずむ存在感 ~佐白温泉(長者の湯)~
温泉の雰囲気・たたずまい、そして施設面で取り上げるのは、「佐白温泉(長者の湯)」(島根県奥出雲町)です。
平成24年4月29日に新規オープンしたこの施設を取り上げない訳にはいきません。協和地建コンサルタントが平成22年度に新たな泉源をとして掘削したもので、そのお湯を用いて奥出雲町3番目の温泉施設として整備されました。現在、島根県で一番新しい温泉施設です。建物は古民家風の和風建築で、立派な門をくぐると白砂を敷き詰めた広い中庭が大胆に配置されており、目を引くアプローチが印象的です。
お風呂は、内湯と露天風呂という構成で、大きすぎず、日常を離れてゆっくりと過ごせる適度なサイズです。内湯は、窓の開口が大きく、明るく広々とした造りです。天井も高く、太い梁を見せる造りも印象的です。また、地域の川石を使って形作られた岩風呂風の浴槽が施設によく馴染んでいます。露天風呂は、内湯とほぼ同じ大きさで、同様に岩風呂風の造りです。あえて、内湯から露天風呂までのアプローチに距離を取り、外湯へ移る気分転換を演出しています。
営業時間は6:00~21:00と、早朝から夜遅くまで利用できるので、地域の身近かな施設して利便性が高いのも魅力です。地域に根差した温泉施設として、今後益々活用され、奥出雲町の活性化、地域交流の促進が進むことを祈念しています。
3.「美肌日本一・島根県」影の立役者は美肌温泉 ~美又温泉(国民保養センター)~
美肌の温泉と言えば、「泉質日本一、美肌の湯」の美又温泉です。
自ら日本一と名乗るのは中々の自信です。泉質的には、アルカリ性単純泉でphが9.8とかなり高いことが特徴です。このphが“美肌の湯”を標榜する根拠になっていると言えます。入浴すると、アルカリ度の高い温泉らしく、直ぐ肌にヌルヌル感を感じることが出来ます。完全なかけ流しではなく、一部循環式のようですが適度に新しいお湯が加えられているようで、さっぱりした心地よい入浴感です。湯上りの肌感もとても良好です。
そしてもう一つ特徴的なのは、カラン・シャワーともに“温泉水”が使われていることです。湯量が豊富で、かつ含有成分量が少ないので、こういう使い方もできるのでしょう。アルカリ度の高い温泉水をシャワーで使う感覚は独特のものがあり、一度試す価値ありです。体を洗った後もこのシャワーで洗い流すことで、さらに美肌効果を高めることも出来る、という点で中々魅力的な仕掛けと言えるのではないでしょうか。
余談ながら、今年の11月、大手化粧品メーカーが全国の女性の肌を調査した「ニッポン美肌県グランプリ」で島根県が美肌日本一に輝いたと報じられ、話題となりました。日照時間の短さや空気中の水分の多さ、などが要因ではないかと説明されていたようですが、温泉開発に携わる者としては、この美又温泉をはじめ、県内各地に点在する“美肌温泉”も一役買っているに違いないと確信しています。
温泉は、その地域の地下から湧き出る貴重な資源です。地域によって多様に活用され、様々な形で地域の役に立っています。良い温泉も悪い温泉もありません。また、近年では“温泉熱”を熱源として空調や給湯などに活用するというエネルギーの側面からも注目されています。温度が高く湯量ヶ多い場合は発電の可能性も出てきます。温泉開発にたずさわる者として、温泉の魅力や効果、ポテンシャルをもっと知ってもらい、様々な温泉がその特性を活かし、地域の役に立つよう、取組んでいきたいと考えています。
今年の総括は、限られた温泉の中からの選定で、あえて3つ選んでいます。ご覧頂いている方の参考になれば幸いです。来年こそ、頑張って色々な温泉を巡れるよう頑張ります。これからも温泉めぐりのブログ、そして協和地建コンサルタントをよろしくお願いします。
〔2012年温泉巡り一覧〕
50 岩戸屋温泉(神楽門前湯治村) 広島県安芸高田市美土里町
49 美又温泉(国民保養センター) 島根県浜田市金城町
48 海潮温泉(桂荘) 島根県雲南市大東町
47 むいかいち温泉(ゆ・ら・ら) 島根県吉賀町
46 佐白温泉(長者の湯) 島根県奥出雲町
45 津和野温泉(なごみの里) 島根県津和野町
44 匹見峡温泉(やすらぎの湯) 島根県益田市匹見町
43 美都温泉(湯元館) 島根県益田市美都町
42 みなと温泉(ほのかみ) 鳥取県境港市
41 いわみ温泉(霧の湯) 島根県邑南町
40 錦水館温泉(錦水館) 広島県廿日市市宮島町